今日の活動
スケジュールとタイマー
F君が家からタイマーを持ってきているというので、どんな使い方をしているのか聞くと、机の横にセットもせずにおいているだけと言います。では休憩時間はどうやって終わるのか聞くと、そろそろ片づけてほしいタイミングでタイマーセットしてタイマーが鳴ったら声をかけて終わらせていると言います。この使い方では「終わりやで」と声をかけているのと変わらないです。でもこれは支援「現場あるある」事象です。なんのためにツールを使うか良くわからないまま支援の中にツールが入りこむ悪い例です。またF君自身も何のためにタイマーがあるかわからないけど、机の上にこれがないと不安なので家から持ってきているのだと思います。
タイマーは小学生から障害の重い高等部生までよくタイマーを使いますが、どんな目的で使っているのか聞くと、大人の都合で使っているだけだと言うことが少なくないです。タイマーを使うのは子どもが自発的に次の行動に移るために使うのですが、それを理解させるにはスケジュール操作を丁寧に教える必要があります。
タイマーは休憩時間や遊び時間に使うことが多いですが、これをタイマー理解の導入に使うのは間違いです。楽しいことが終わる行動が強化されるはずがないからです。重度の人には楽しいことが来る時間にタイマーを設定します。小学生には、自立的にタイマーで行動ができたらポイントをあげるという形でタイマーを教えます。
こういうことが定着したうえで、休憩時間にタイマーを使ったり、作業を途中でやめるためにタイマーを使い、自立的にスケジュールを操作できるように支援すればうまくいくはずです。
いいえ・違います
E君が遊びたいかなと、「音のなる絵本」をスケジュールに入れておきました。E君がその絵カードを渡してきたので、いつもの音のなる絵本を渡すと、押し返して自分の頭をたたくのです。そうか、新しい音のなる絵本が欲しいのかぁと新しい本を渡すと遊びだしました。
E君は絵カードでかなり要求ができるようにはなっているのですが、カードの弁別が十分にできないのと「違う」が自分の頭をたたく行動になっていることです。確かに頭をたたけば「違う」ことは誰でもわかりますが、もっと穏やかな拒否の方法を探しています。
手で押しのけるのはいいのですが、拒否を強く伝えるために言葉のない人の中では自分の頭をたたく人は少なくありません。これを穏やかな身体サインに変えたいのです。ところが、「いいえ」「違います」のトレーニングは簡単そうで難しいのです。
PECSでは身体プロンプトで首を振らせて拒否のサインを教えるように提案していますが、背後から手を添えて首を左右に振らせるのは難しいのです。顔を触ることで、本人の「何すんねん!」の反応が出ることが多いからです。なので、両腕を出して「NO」の表現の方がいいかもしれません。要は頭をたたく行動から代替させやすい行動がいいのです。さてどんなサインがうまくいくでしょうか?
先輩はつらいよ
「外遊びの科学的根拠12/02」で掲載したように、B君C君は外遊びに行こうかと誘うと、「え~」となるのでビタミンDを強化子にして外遊びに誘い出しています。しかし、そんなことをしなくても「高学年のプライド」とという素晴らしい強化子を発見しました。
低学年のD君が「鬼ごっこがしたい」と言うと二人とも、「ええよー」と頷くので、「あんたら いつもとちゃうやん」とスタッフは思っていました。しっかり走り回って全員つかまって帰りましょうかという雰囲気の中、スタッフが言ってみました「もう一回しようか?」BC君そろって「却下!」と言います。「Dちゃんどうする?」と聞くと、「もう一回やりたい!」BC君揃って「しょうがないなー もう1回やろか」ということになりました。
延長戦も終了し、「さぁ 帰ろ帰ろ」と言うBC君の背中にD君が「もう一回したい」と声を掛けました。 さすがに「え~~もう帰ろうや~」と絶叫します。スタッフがD君に「D君どうする?」と聞くと「もう一回したい!」「このようにD君はリクエストしていますが…」とスタッフが言うと、「ほんな やろかぁ」と3回目も肩で息しながら付き合う高学年二人でした。先輩はつらいよ。
ボール投げ
Z君が公園でAさんとボール投げをしてにこにこしているという報告がありました。Z君はこれまで「前庭覚ニーズ」が高いと外出しては公園でブランコという日課が多く、小さい子が室内でうるさく叫ぶと他害もあり、他の子どもとはあまり交流せずにスタッフと過ごしてきた経過がありました。
しかし、他害の原因は他の子どもの大きな声が耐えがたく攻撃するというものですが、Aさんなど小さい子がうろうろするだけでイライラする様子もあったので、少し一緒に遊ぶなど交流させてはどうかという提案をしました。公園に行ってブランコをするだけではなく、Aさんとボール投げに取り組んでみました。スタッフと3人で取組んでAさんが受け損ねるとZ君が走って取りに行くなどの変化がみられています。
他害などがあると、なかなか他の子どもとの交流を避けがちですが、他害の関係を打ち消すほどのものかどうかは分からないけれど、一緒に楽しく活動する関係をどう作っていくのかも考えていく必要があると思います。
外遊びの科学的根拠
小学生高学年のY君らは「外で遊びたくない、面白くない」とよく言います。じゃぁ室内で何がしたいのと聞くとゲームかパソコンです。放デイ以外の日は外で遊んだことなどないというのです。友達もいないし、だいたい高学年は習い事で時間も合わないという悪循環で、友達と交流するのは学校か放デイだけだというのです。
外で遊ぶと、①太陽の光を浴びることで基礎代謝があがる②体を動かすことで心肺機能が高まる③空腹感を感じることで食欲がわく④睡眠の質があがる⑤生活のリズムが整う⑥運動することでストレス発散となりポジティブ思考につながる。ことを、丁寧に医学心理学的に説明しています。
丈夫な骨を作るためには、運動や日光を浴びてビタミンDを増やすことが重要で、夏は紫外線量が多く、ビタミンDを短時間で効率的に増やせるから夏に背が伸びやすく骨折もしにくいと説明します。背は高くなりたいと皆思うようでしぶしぶ外に出ています。あと、抜け毛は諸説あるので原因は一つではないけど、有酸素運動とストレス防止と抜け毛防止は関係があるという人もいるらしいというと、男の子は靴を履きだします。ただし頭皮に紫外線はほどほどにねと帽子を渡します。みんな、外で遊ぼう。
VOCAの意味
VOCAは、Voice Output Communication Aidsの略で音声出力会話道具が直訳になるでしょうか。大事なのはOutput(アウトプット)=出力というところです。言葉のない人の音声言語の代わりに使う道具という意味合いが重要です。人は、人から促されて喋ることはほとんどありません。自分が必要な時に自分で喋るのです。
XさんのVOCAの使い方は、先生が手にVOCAを持った時に「おかわり」と、Xさんがボタンを押しに行くという報告がありました。「え?それって『大人がおかわりと言いなさい』と言った時だけ喋れという指導と同じですよ」と他のスタッフが言いました。その通りです。自分から音声出力する=自発性言語を育てるはずのVOCAが受け身(応答性言語)の道具になっているのです。
肢体不自由の人は移動・食事・排泄など依存的になることが多いです。しかし、電子機器などを使えば、自分の意志を伝えることは可能なことからVOCAが生まれました。もちろん最初は身体プロンプト(後ろから手を添えて操作させる)をするなどしてVOCAの意味を教える必要があります。ただ、教え方は自発性を担保する教え方でないと、そばに人がいないと伝えられないとか、VOCAを人に持ってもらわないと使えないようになってしまいます。本人が操作しやすい位置にVOCA専用台を作る等いろいろ工夫して、自分だけの力で操作できる環境を整えようと話し合いました。
うるさい
すてっぷには、低学年から高等部生までの子どもが毎日10人前後出入りします。当然、はしゃぐ子もいたり、室内での声の大きさのルールがわからない人もいます。ところが、活動する部屋は一つですし、広さは40畳以上あるのですが、それでも大声は響きます。ASDの人の中には突然の大声がたまらなく嫌な人がいます。イライラしているとそれが他害につながったりするので、職員は部屋の使い方にはナーバスになります。
うるさくてイライラして壁を叩くなどの行動がある子どもには、「うるさい」「しんどい」をスタッフに伝えることで幾分楽になる人もいるので積極的に自分に気持ちを表出する練習をしています。しかし、それも度重なると我慢の限界を超えます。大声を出す子にはルールを教えます。声のレベルメーターでわかる子はいいのですが、それが理解できない子の対応はとても難しいです。うるさくしても注目しないようにはしますが、静かにすれば利得があるわけではないので教えるのが難しいです。何かいいアイデアはないか考え中です。
交渉
W君に作業の打ち合わせで10本の空き缶つぶしをお願いすると、W君は「8本」と交渉してきました。そこで、スタッフ側も「では5本で休憩入れて2回のインターバルでお願いします。」と再交渉すると「わかった」と契約成立しました。「おやつは何がいいですか」と聞くと「グミ8個!」とさっきの「8」を引きずっている様子なので、「グミ2個を2回でどうですか」と聞くと「わかった!」とこれも契約が成立しました。
わずか10本の空き缶つぶしですが、言われたからやるのではなく、報酬も要求しながら自発的に取り組んでほしいという願いが私たちにはあります。もちろん言い値で了解するのではなく、お互いに駆け引きしながら合意していくプロセスを大事にしたいのです。今は、作業の量ではなく取り組むときの質=受け身ではなく自発性が大事だと考えています。
正しいコミュニケーション学習
お話の出来ないU君は、何かをお願いするとき片手で頭を押さえてお辞儀をします。それがとてもかわいい仕草に見えるので、大人はついついリクエストしていました。新しく入ってきたスタッフがその様子を見て悪気はないにしてもリクエストしているのは疑問に思うと言ってくれました。
おそらくこの行動は、最初は大人が頭を下げるように手で押さえて教えていたのが、いつの間にか、自分の手で頭を押さえてお辞儀するようになったのかもしれません。
彼は今PECSのフェイズ3で要求物を選んでお願いができるようになっています。それでも、大人があの仕草を求めて自然に待ってしまうタイムラグがあるので、お辞儀も続けてするのです。それは良くないだろうというのがスタッフの意見です。確かに、可愛いからと言ってこちらの基準でお願いのオプションを求めるのはおかしな話です。今まで怒ることで要求が叶うと思っていたU君が自発要求していているのですから、そのことを第一に喜んであげて、早く要求のものを渡してあげてほしいのです。
同じように、VOCA(音声出力ボタン)の練習中の子に、大人は「ただいま」とか「ありがとう」などから教えたいと思うのが人情ですが、まずはボタンを押せば自分の要求が叶う事がVOCA練習の1丁目1番地です。つまり「おやつほしい」とか「喉乾いた」とか「おかわり」「もっとほしい」です。これが結び付けば、自分の意志で言葉(ボタン)を選ぶ方向に結びつきます。大人の求めていることと子どものコミュニケーション学習の順序は違うのです。
増やしたり減らしたり
「みんなでホットケーキ作りをしたときに、RさんやS君は秤を見ながら増やしたり減らしたりできないです」「T君は微妙な量もきっちり調整しようとするのにどうしてでしょう」という話がありました。通常6歳ころから底の広い入れ物の水を、細長い入れ物に入れて水かさは高く見えてもその量は同じだとわかってきます。この頃から長さや量を測るという意味が分かってくるのです。
その前の段階では「大きい・小さい」「長い・短い」という2元的な判断です。就学前に向かうにつれて「中くらい」「まぁまぁ」が理解でき、7歳の節目では極小から極大までの変化「だんだん」がわかるようになります。重さは見えないので見えないものを把握しようとするのは小学校中学年ころからです。こうした認識を基に量を計るときに慎重に増やしたり減らしたりもできるようになるのです。つまり量の認識には発達段階があるという事です。
子どもたちの遊びや、調理を見ているとその子がどの段階にいるのかよくわかるのです。逆に言うと、そういう量の微調整ができるのに、読み書きが難しかったり文章の意味が取れない場合は知的な遅れより学習障害などを考えて詳しく子どもを見ていきます。
なんで?
「最近Q君がタイマーが鳴っているのに無視してやり過ごすんです」とか「Q君みんなと一緒にけった(缶蹴り)とかしようとしないんです」などとスタッフが子どもの行動が理解できないと質問するとき、「なんで?」って聞いたのかと返すようにしています。特にASDの子どもの場合、その行動が不適切なのかどうかも意識していない場合が多いからです。
また、子どもたちに「どうして?」と聞かないスタッフの気持ちには、その場はまずいとか、悪いことだと気が付いていないなら責められたと思い傷つくかもしれないとか気を使っているのです。
その場がまずいなら、さっきのこと後で聞くから教えてねと予告すればいいのです。また、気が付いていないなら「ああ そういうことか」と素直に気が付くか、「わからん」と理解できないかどちらかです。ASDの子どもたちはとても合理的で、理屈さえわかればはっきり言った方が納得するし、逆に遠回しな言い方にはピンとこずかえって誤解をしたりします。
そして、「なんで?」と聞かれることで、彼らが「なんでやろ」と考えてくれる機会を作るところに意味があるのです。子ども達が自分を振り返ってみる機会は、こんなスタッフの問いかけが契機になったりするのです。スタッフには、「ああ、そういう考え方もあるね」という子ども観が広がる機会ともなります。
就労支援
P君にASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちに使っているジグ(作業を進めやすくする補助具)を使って自立課題に取り組んでもらいました。「できました」と言ってくれたので点検すると、不揃いな「完成物」が出来上がっていました。使った課題はボルトワッシャーナットをビニール袋に入れる20セットほどの組み立て包装です。
あっちの袋にはワッシャーが2枚入ったセットやら、こっちの袋はナットが入ってないセットやらでバラバラでした。完成品モデルは目の前に示していたし、何回かセット方法は教えはしたのですが、やっているうちになんとなくイメージで作ってしまった感じです。これはASDの子どもたちにはほとんどない間違い方ですが、短期記憶が弱く注意集中が持続しにくい人たちにはよくある間違い方です。
P君は人懐っこくて、指示に対しても「はい」と丁寧に答えてくれる高等部生です。簡単なものであっても作業が正確にできることは就労に結びつきつきます。これからP君に合いそうなジグやワークシステムを工夫して就労に結びつくように支援していきます。
他者理解と自己理解(その後)
一昨日、「他者理解と自己理解」投稿日時 : 11/17 について報告しました。毛嫌いしていたO君が自分の伴奏で楽しんでくれたことを知ったNさんは、O君にキーボードを譲ったり、「O君今何してますか」と友達を気にするようになったという話です。この話には続きがあります。
Nさんの作業課題が終わって、帰るまでに半時間ほど時間が余りました。「帰るまでの時間、キーボードを演奏したいです」とNさん。その時O君がNさんから譲ってもらったキーボードで遊んでいました。スタッフがNさんに「O君に一緒にお願いしよう」と提案しました。
なんということでしょう。Nさんが近づいてくるだけでO君は事情を呑み込んだかのようにキーボードをかたずけて渡そうとしていたのです。今までだったら猫の喧嘩みたいにお互いに威嚇していたのに「はいどうぞ」とばかりにO君は譲ってくれたのです。ギブアンドテイクがO君に理解でき、しかも自発的に譲ったところがすごいなぁとみんな感心しました。今日もO君は、視覚障害のNさんに「キーボードください」絵カードを渡し、カードをスタッフに読んでもらったNさんは「はいどうぞ」と優しくO君に譲っています。こうなってくると信頼関係とも言えるように思います。
課題設定
支援計画の事後評価の会議をしていると、時々、書いてある通りだけど書いてある課題を設定していないことがあります。これは、計画は立てるけれども日々のプログラムはそのまま続くのでスタッフのモチベーションが長く続かないと取り組めない内容があります。また、毎回課題としては書いているけれども達成できずに次回送りとされていつも評価は3段階評価の真ん中あたりでお茶を濁している評価もあります。
P君が自発的にスケジュールを見て行動できるようにというのもこの2年間同じでした。評価はいつも3段階評価の真ん中です。P君は来年の3月に卒業です。このままではきっと3月も「ほぼ達成できている」になりそうです。それなら、もう少し具体的に二つの内容なら自分でスケジュールを操作して行動できるにしてはどうかと提案しました。
いつも提示するスケジュールが多すぎるために、毎回スタッフがスケジュールを見るように促すことが定番になってしまっているのです。おやつの前の作業提示とかもっと簡単なスケジュール課題にしてはどうかと話し合いました。目標が高いか低いかは、当事者だけの問題ではなくスタッフのモチベーションの問題もあります。スタッフにもスモールステップでモチベーションが持続しやすい目標設定も大事だと思います。
他者理解と自己理解
Nさんがとても穏やかに友達と接することができるようになったという話をしました。Nさんは視覚障害があり、自分の周りに小さい子どもたちが寄ってくると不安なので「近寄らないで!」といつも厳しい声を出していました。結局それが面白くて、もっと子どもたちが寄ってきてNさんいじりが始まって、Nさんも大声で対抗するという毎日でした。
Nさんは、キーボード演奏がとても上手で以前から何度も、音楽遊びの時の伴奏をお願いしていたのですが、「嫌です」とけんもほろろに断られ続けていました。何の拍子か偶然Nさんが気まぐれに伴奏をしてくれることになり、その時に一番Nさんの邪魔をするO君も音楽遊びに参加していました。終わった後、NさんにO君らがとても楽しんで演奏していたことを少し丁寧に伝えました。
それからはNさんはO君にキーボードを譲ったり、「O君今何してますか」と友達を気にするようになりました。一緒に活動をし、他の人たちの様子を言葉で丁寧に伝えることで、Nさんの放デイの友達観が変わったようです。人が喜んでくれることに自分の値打ちを感じる、行ってみれば当たり前のことですが、この機会をどう演出するかが支援者の醍醐味です。
高学年の課題
生活型の放デイでは高学年の活動や内容づくりが難しいと何度か書いてきました。難しい理由は大人側の問題が大きいです。それは、発達障害があろうとなかろうと関係ありません。全国の学童保育所で高学年あそび問題も古くて新しい問題です。大人に依存的な低学年と、自立を模索し始める高学年とでは活動の質が変わってきます。
今日も高学年の子どもの暇つぶしに「ジグソーパズル」を課題として与えていいものかと議論になりました。好きに遊んでいいと言ってもパソコン以外は難しく、せめて静かにしてほしいのでパズルを与えるというスタッフ側。子どもにしてみれば、早くパソコンがしたいのでなんでもいいから手っ取り早い課題をするということで双方の利害が一致するのでこの「パズル問題」は見過ごされてきたのです。
しかし、これでは子ども自身も、放デイに何をしに来ているのかということになります。もちろん、ダイナミックな外遊びの提案だけでは毎日は運営できませんし、パズルでも内容やねらいによっては優れた課題になることもあります。生活型療育であっても、何のためにこの活動をしているのかスタッフが語れないような内容はNGだという話をしました。
服薬
L君は服薬を始めたたばかりで日によっては眠そうにしています。Mさんも服薬を始めたばかりですが、穏やかに過ごせるようになっています。こう書くと、L君は副作用が出ているから多いのではないかとか、Mさんは著効して良いのではないかとか言われそうですが、それは、放デイという環境でわずかな時間の話です。
自宅や学校の過ごしはどうか、何より本人が過ごしやすくなっているかどうかというトータルで一定長期間のデータが必要なはずです。その割には主治医や薬剤師から現場が求められる情報は皆無というほどありません。様々な環境で様々な様子を見せているはずなのに、医療は現場から遠いところにあるように感じます。
紅葉の特別入山
光明寺の『紅葉の特別入山』が明日から開催されます。総本山光明寺は承安5年(1175年)宗祖円光大師法然上人が御歳43歳の時、日本で初めて念仏を上げられた立教開宗の地です。今年は、現在放送中のNHK連続ドラマ小説「エール」のモデルになっている古関裕而さんの作曲した「念仏讃」直筆楽譜を初公開するそうです。
いつも静かな光明寺がこの時ばかりは「密密」です。同時に駐車場が拝観者用に有料になるので、お寺を散策したりする駐車場にも使えず、西山歩きにも使えなくなります。ただ、今年からは奥海印寺方面からアプローチする西山歩きを考えていますので、特別入山中でもなんとかなりそうです。
今の西山は一番歩きやすい時期でもあり、一服時の一杯のインスタントラーメンが至極の味です。今日もJ君がリュックにラーメン・コッフェル・バーナーの「山歩き三種の神器」を担いで、いそいそと山歩きにスタッフと向かいました。ちょっと時雨ている時もあったけど夕日が差してきたので大丈夫そうです。光明寺の紅葉が最も美しいのは、通常は12月初めころです。
私を見て
不適切な注意喚起行動の原因は大きくわけて二つです。一つは、ここで何度も掲載してきている機能的コミュニケーションの障害で、相手にうまく伝える表出コミュニケーションスキルがなくて、大声を出したり、物を壊したりする他害行動でしか伝えられない場合です。
もう一つは、家庭内が落ち着かないなど心理的な不安定で他者の注意を引く行動です。家庭は外で活動してきた後やれやれと帰ってきて、お風呂に入ったり、ご飯を食べたり、ぐっすり眠たりして一日の心身の疲れを癒す場所です。しかし、もしも、この心身のケアステーションである家庭が、いつも場所が変わったり、ゆっくりご飯が食べられなかったり、不安で眠れなかったりすれば、子どもは声なき声で訴えます。
知的に遅れがあったり、言葉でうまく表現できない子どもの場合は、大人への注意喚起行動「私を見てて」とばかりに、不適切な行動を繰り返して大人の注目を得ようとします。この場合は、機能的コミュニケーションの問題が原因ではないので、表出のコミュニケーションスキル訓練では解決しません。まずは、おうちの中の生活を安定させ家族の時間をゆったり持つことが必要です。
ただ、家庭の中でも一度顕在化した注意喚起行動は、最初のうちは簡単には消えません。保護者が音を上げてしまうような強く長いものもあります。この時、公的な支援システムの保護者支援がとても重要です。保護者が疲れてしまわないように、子どもとうまくかかわれるように支援することが重要ですが、片親がこんなに増えているのに、保護者への心身の支援はとても少ないと言わざるを得ません。シングルペアレントを支える多様な取り組みが求められています。
本人参加の支援会議
子どもの支援計画を議論する中で、高学年児は目標やその手立てについて本人も懇談会に参加してもらい、なぜこの目標を設けているのか、どのようにして目標を達成しようとしているのか話し合う場を設けることが必要だと話しあいました。
高学年ともなれば、自分はどうなりたいのかを考え始める時期です、対人関係や学習など様々な困難を抱えている子どもたちも、自分は何者か考える時期です。自分は何のために通級指導や支援学級に在籍して学んでいるのか、何のために放デイに来ているのか薄々子どもらも考えてはいるのです。
子どもにこっそり聞いてみると、たいがいはネガティブな理由です。通常学級ではしんどいから、勉強がわからないから、みんなとうまく遊べないからと、できない理由をたくさん並べてくれます。けれども、通級指導を受けたり支援学級に在籍したり放デイに来たらどんなメリットがあるのかは、どの子も答えられないのです。せいぜい、気兼ねなく生活できるという答えでした。
半年に一回懇談会があって保護者とスタッフが自分の話をしているのは子どもらは知っています。それならば、高学年からは本人も交えて支援会議を持てばいいと思うのです。中学からは3者面談を行いますが、ほとんどは成績と生活態度の反省会のような形になっています。そうではなく、どうすればうまくいくのかを話し合う必要があります。そして、とても困難な状況になっても3者で協力して乗り越えていく会議のスタイルを小学生の時期から持つことはとても重要です。とても困難になってから本人を無理やりに引っ張り出すのではなく、穏やかな時期から一緒に話し合いを積み重ねていく支援会議を大事にしたいものです。それが、自分のことは自分で決めるアプローチになると思います。
正常性バイアス
Jさんの評価について、関係者間で意見が違うというスタッフの報告がありました。行動問題が多く服薬したほうがいいという意見と全く問題ないから服薬などやめたらいいという意見などです。
そもそも、長く様々な関係者と付き合っていると考えが同じことのほうが少ない感じがします。保護者の意見も学校の意見も事業所の意見も相談所の意見もすべてが同じであったことのほうが少ないくらいです。それくらい、子どもの評価は見ている環境によって違ってあたりまえだということを知っておくことが大事です。
環境がちがうのだから評価が同じであるわけがないという前提に立てば、相手の考えていることが客観的に見えてきます。Jさんの場合もそうなのでしょう、場面の切り替えや移動が少なければ穏やかに過ごせるし、切り替えが多ければ混乱しやすくなるということを、障害特性と数年間の経緯が把握できていれば、いろいろなJさんの姿を知ることができると思います。
関係者や保護者が自分の知らない混乱したJさんの状況を聞かされたとすれば、たとえ嘘のない事実であったにせよ、疑ったり気分を害してしまう場合もあるという想像力が支援者には必要になります。良いことは共有しやすいですが否定的なことは共有しにくいのです。正常性バイアスといって、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう心理は誰にもあるものです。関係者間連携とはこういう前提で取組むものですから、「自分のやり方が悪いのかもしれないので協力して欲しい」という理由で動画など客観的なものを用意して、結論は出さずに困っているところをみんなで知ることが重要です。その上で、「うまく生活できているところからはたくさん情報や意見が欲しい」と知恵を出し合う取組を丁寧に行うことが必要です。
トランジションカード
スケジュール指導ではトランジション・エリアとトランジション・カードが定番で使われますが、トランジション・カードについては誰が発案したのかよくわかりません。スケジュールを置いてある場所をトランジション・エリアと言い、トランジションカードは「スケジュールを確認しに行きなさい」と指示するためのカードです。
この移動カードのシステムは、指示待ち(プロンプト依存)を作ってしまう場合があります。I君がタイマーが終わったのでスタッフにタイマーを持ってきました。こちらとしては帰る用意をスケジュールに示しているので帰る用意をしてほしいのですが、I君にしてみれば「タイマーが鳴りました」と示しに来るだけで、次の活動とは結び付いていないのです。
仕方がないのでスタッフは毎回トランジション・カードを渡して、スケジュールを確認するように仕向けるわけです。これは、プロンプト依存を作っているのと同じです。人的介入を絵カードにしているだけで声をかけているのと同じなのです。なんのために声をかけてはいけないということがわからないと、こんな形で声かけより厄介で強固なプロンプト依存を作っているのです。
トランジション・カードはスケジュールに戻って次の行動を確認しましょうというものですが、やることがわかっていても「トランジション・カード待ち」をするASDの子どもがいます。しかも、このカード渡し行動はフェードアウトのアイデアが浮かびません。
結局、ピラミッドアプローチで説明されるように、次の行動を起こす一連の動作として、スケジュールボードの一番上のカードを「これからやります」場所に貼り付け、その内容が終了したらスケジュールボードのおしまいボックスに入れて、一番上のカードを「これからやります」場所に貼るというルーティンを覚えたほうがよいのです。
そして「これからやります」の内容が終わっているのにスケジュールボードに戻れないなら、「これからやります」カードを貼る場所を子どもの目につく場所に貼って、終わればそのカードを持たせてスケジュールボードのおしまいボックスに入れさせて次のカードを取って移動するほうが合理的ですし、正しいやり方に移行する時のフェードアウトが身体プロンプトのフェードアウトで済むので移行しやすいです。
ということで、今後すてっぷではプロンプト依存養成トランジション・カードを廃止し、自立型スケジュール計画を考えていきます。
指示待ち
H君が、ワークシステム(自立課題の行動支援システム)にとりくんでいました。内容はプットイン課題3つですから重度の子どもです。でも左から課題をとり、課題が終われば右のおしまい箱に上手になおしていきます。動画を撮影していたこともあり、H君は終了すると撮影者におわったよとモーションをかけてきます。
撮影者は「ワーク中には声をかけてはいけない」と思っているので、しばらく反応せず撮影を続けていたのですが、申し訳なくなって「グッジョブ」サインを送りました。H君はいつもどおりに「よくできたねー」の反応をしてほしいのに「親指立てても意味わからんし」とばかりにせっかく片づけたおしまい箱をけって課題をひっくり返して大人の反応を引く行動に出ました。
要するに、終わったら、大人はいつも頭をなでて褒めると共に次の行動を指示してくれていたので、その大人の行動と指示をひたすら待っていたというわけです。通じなかったら不適切な行動でとりあえず注意を引くというH君のこれまでの姿がでてしまいました。
表出コミュニケーションが弱いことと指示待ちと不適切な行動はトリプルセットなのです。でも、どうすればいいかというスタッフへの次の課題をH君は提示してくれています。がんばります。
節目だから進路を考えられる
土曜にG君が昼過ぎにやってきて「また、やってしまった」と朝から来られなかったことを反省していました。週末は自分へのご褒美に、平日我慢しているゲームを夜中までやることにしているそうです。そして、今度こそは朝から放デイに行くぞと決意するのですが、朝目覚めても「もうちょっと寝よ」と昼まで寝てしまうそうです。
6年生の2学期ともなれば、子どもは中学校の生活に思いを馳せてあれこれと情報を友達などから収集するものです。でも、不登校の子どもにはリアルに情報を得る機会もないし、節目の時期の雰囲気も感じることができません。親や周囲の大人は進路についてあれこれ相談したり、悩んだりしますが、進路について正面から考える機会を与えられていない子どもには、その内容も親の思いも十分には伝わりません。大人は配慮のつもりで学校の事を話すのを控える場合が少なくありませんが、それではますます子どもは情報が得られません。
進路選択という節目の時期は子どもにも親や関係者にも大変な時期ではありますが、成長の時期でもあります。親や関係者は新しいステップに進むための情報を子どもに示し、子どもはできれば実際に見て自分の進路を考える機会です。これは節目の時期だから出来ることで、いつでも出来ることではないです。当然、大人と子どもは知識量が違うので意見の食い違いもあるし、正しいとわかっていていても反発することもあります。けれども、それは双方にとって殻を破るときの痛みです。自分の選択を表明することは、自問自答を深めます。「またやってしまった」という彼の言葉に「次こそは」という可能性を感じながら、進路のことを考えさせられました。
VOCAセットできました!
前回「VOCA 09/15」に掲載したように、LさんにVOCAに取り組んでみてはどうかというお話をお母さんにしました。Lさんにはボタンの意味を理解してもらうために、お散歩犬玩具をケーブルでつないでボタンを押せば鳴きながら歩く、手を離すと止まるというセットを作りました。そこからボタンを押せば変化が起こることを伝えようという事です。
それと並行しながら、ボタンを押せば「もっとー」とか「おかーさん」とか「せんせーい」と呼び声を録音して、手遊びをするとか、散歩に出かけるとか、おやつのおかわりをするなどのVOCA(Voice Output Communication Aid)に取り組んでもらいます。何と言っても学校の生活時間が一番長いので、学校で取組んでもらえるようにお母さんからお願いしてもらいます。ただ、おもちゃのボタンなのですぐに潰れるかもです。
BOOKOFF
K君が本棚に並べてある「結界師(田辺イエロウ 小学館)」の欠番があるのが気になって「全部揃えたい」と前から言っていたので、BOOKOFFに探しに行きました。ただしBOOKOFFですから必ずあるとは限りません。あちこちのお店を探すことになります。でも、そろえたいK君には嫌なことではありません。
放デイの漫画本は欠番だらけですから、そのうちK君文庫ができるかもしれません。1冊110円もうちょっと安くならんかね。結界師は全35巻だけど10冊くらい欠番で、ちょっと出費が痛いです。
結界師は妖怪退治のお話で、結界師である主人公が、夜の学校を舞台に「結界術」を使い妖怪を退治していく物語。平成18年度(第52回)小学館漫画賞少年向け部門受賞。2020年6月時点で、累計発行部数は1700万部を突破している人気漫画。ジャンルとしては「鬼滅の刃」と同じジャンルのようです。などというとファンに怒られます。主人公が鬼と化した妹を人間に戻す方法を探すために戦う姿を描く和風剣戟奇譚の「鬼滅の刃」は、22巻で1億部を突破しているので足元にも及ばないというべきなのです。
メモ書きと読み書きの苦手
他所で受けた検査の結果から、空間や位置の把握が苦手そうなAちゃんが、紙粘土で作ったおかずを、お手本通りお弁当箱に詰める課題に取り組んでいました。いちばん大きなおにぎりでも、指でつまめる位のサイズです。手先の不器用なAちゃんにとっては少し難しいところもあったと思いますが、よくお手本を見比べながら、丁寧に詰めていました。
楽しかったようで、いろいろアレンジがしたくなったAちゃん。スタッフに作っておいてほしいおかずが次々と思い浮かぶので、ふせんに書き出すことにしました。
ただしAちゃんには読み書きの苦手があります。『レ…タ…ス』と書きたいけれど、すぐに『タ』が想起できず、鉛筆が止まります。ほんのいくつかの単語を書くだけでも一苦労です。
こういう時に、どういう支援をしたらよいか。予め想定していた学習の場面ではないので、スタッフも書字支援の十分な準備がありませんでした。読み書きの練習場面ではないので、細かい字の間違いを指摘せず、楽しく『書いて伝える』ことそのものを楽しんでほしいのです。この時は、わからない字をスタッフがモデリングして、それを写しながら仕上げました。Aちゃん、ふせんを3枚も自分で書きました!次回のお弁当作りを楽しみにしています。指導後、事業所で相談すると『iPadなどで音声変換してみたら』とアイデアをもらいました。次回、同じような機会があれば試してみたいと思います。
読み書きの困難がある場合、ちょっとした『読む』『書く』に伴う、易疲労性を無視することはできません。本人が、『今は字を勉強する時間』と構えを持っているときならともかく、遊びの場や、読み書きが情報整理の手段でしかない場合、読むことや書くことの辛さで、やりたいことや考えたいことを止めたり諦めたりすることはとても残念なことです。
じゃんぷはLD支援に積極的に取り組んでいこうとしていますが、読み書きの困難と向き合うというのは、本人にとってはどういうことか、読み書きの苦手がありながら目の前の事に達成感を持つにはどうしたらよいか、そのことをお子さんやご家族と考えていける場でありたいなと思っています。
スタッフの療育の理解
J君が自立課題をするのを若手スタッフに任せました。内容はビー玉をつまんで穴に入れるプットイン課題です。スタッフは丁寧に一つ一つJ君がビー玉をつまむように指示し、穴に入れるたびに「すごいねーできたねー」と励ましていました。それを見ていたスタッフが、自立課題というのは自分の力で最後までやり遂げることを目的にした課題で、声掛けや行動プロンプトはできるだけ少ないほうがいいとアドバイスしました。
「なんでですか?」と若手スタッフの質問にアドバイスしたスタッフは驚いたそうです。若手と言ってももう1年以上実践しているスタッフから「初心者あるある」の質問を受けたことに驚いたというのです。確かにスタッフには常勤のスタッフだけでなくアルバイトのスタッフや経験の浅いスタッフがいますから、毎日、子どもへの指示の出し方や距離の取り方も説明はしています。
しかし、なぜ自立課題に取り組ませているのか?なぜ、声掛けを少なくするようにしているのか、なぜ、子どもとの距離をつめないようにしているのかについて、その目的を話したことはありません。支援のハウツーは話すけど、ここの療育が何を目指しているのか説明したことがありません。そんなことは自明の理だと、当たり前のことだと常勤スタッフが思っているからかもしれません。でも、結構このコンセプトは普通の人には当たり前ではないのです。人は励まされたり、お世話されて頑張ろうとすると理解されているからです。そして、もしもそれが真実ならなぜJ君がこれまでそうならなったのかという想像力が必要になります。
どんなに障害が重くても、どんなにハンディーがあったにせよ、人間は自分の力でできることで自尊心を育てるのです。できることならお世話はされたくないし、一人でやりたいのです。これは障害があろうがなかろうが同じです。もしも、成人のあなたがあれこれができなくていちいち人の手助けや励ましがいるとすればこれほどめんどくさいことはないという想像力が必要です。
そんなわけで、月曜から1週間、スタッフに「子どもたちが少しでも一人で自立して行動できるように、スタッフのみなさんの工夫をお願いします。次週はそのアイデアをお一人ずつ話してください。」というアナウンスをすることにしました。さてどんなアイデアが出てくるか楽しみです。
5W2H
「Fちゃんに、お菓子を持って山登りに行こうと車に乗ったまでは良かったのですが、車が走り出しだしてから、行先とは違う方向を指さして、騒ぎ出しました」とスタッフが言います。前の日はおやつを持って公園に行ったそうですから、多分「山登り?」公園に行くのと勘違いしたのでしょう。言葉をしゃべっているからと言って、すべての言葉を理解しているわけではないという初心者あるあるです。
昨日も一昨日もFちゃんは公園に行っておやつを食べたのです。今日もルーティンで行先を誤解したのです。行先は特徴的な場所を写真で示さないと「山登り」なんて言葉は理解できないことが多いです。「お菓子」と言ったので昨日と同じだと「シンボルキーワード」を聞いてで行先まで同じだと誤解したのです。
明日からは山登りでおやつを食べるポイントの写真を「西山」と命名しておやつも絵で示し、「西山でおやつ食べよう」と説明していきます。ASDの子ども達は場面場面の違いを理解しにくいので、昨日とやり方を変えるのなら明示的な5W2Hの説明が必要です。だったら、変更やめとこうかという声も出そうですが、世の中は変更だらけですから変更を教えることは重要なことです。
また、逆に考えればルーティンには強いのですから、正しいやり方を教えるとすぐに定着するところはいいところです。この強みを使って生活規律や作業手順を教えればいいのです。
ローマ字表と暗唱
ローマ字の宿題について、C君D君は苦手みたいだとスタッフから報告がありました。ローマ字には規則性があるので、ローマ字表のマトリックスを眺めていれば通常子どもは理屈として理解します。「一番上に横に並ぶKSTNHMYRWに、右端縦のAIUEOが合成されて50音が構成されるという発見です。「へーぇ、九九と同じやん」と納得するのですが、空間認知の弱い学習障害の子どもは表を見ただけでは気づかないのです。
空間認知は強くて音声処理の苦手なE君はすぐさま理解して、キーボードの位置も覚えてしまいます。でも言葉で説明されるとかえって混乱してしまいます。ワーキングメモリーモデルという認知理論では、視空間スケッチパッドと音韻ループでの処理の偏りが「見てわかる人」と「聞いてわかる人」を分けると言います。これの非常に偏ったものが学習障害の原因ではないかと言われています。
ですからC君D君にはローマ字表を見せながら言葉で一番上の並びと一番右の並びの文字が合わさると一音が表現できると説明したうえで、「ケイ、エス、ティー、エヌ、エッチ・・・」と「エイ、アイ、ユー、イー、オー」を暗唱させ、「かきくけこ。ケイ。エイ、アイ、ユー、イー、オー」「さしすせそ。エス、エイ、アイ、ユー、イー、オー」と順番に暗唱できるようにします。とてもめんどくさいけど・・・確実です。これに合わせてキーボードを打てば一石二鳥ですが不器用な子はひとつづつしないとパワー切れを起こします。学習障害(LD)はラーニングディフィカルティー(学習が難しい人)ではなくラーニング・ディファレンシー=学び方の違う人です。
じゃんぷエントランス照明完成!
5時になるともう足元が暗くなる毎日です。エントランスのスロープは、じゃんぷへの教室通所の子どもにはちょっと足元が危なそうです。開所の際には京都府の福祉のまちづくり条例に従わなければならないので、車いす用のスロープはあったのですが高さ60cmで2m傾斜では条例規格に外れるので、折り返し付きの6mスロープにしたのです。
もともと外灯も暗いうえに、玄関先のスロープの陰になって手前のスロープの足元が真っ暗だったです。じゃんぷの看板も薄暗くてパッとしないなぁということで、足元ライトと看板用スポットライトを増設しました。エントランスが明るくなりました。
しんどいが言えるように
B君が昨日はとても眠そうで、作業の合間にソファーに横になったり、また立ち上がって作業したり、独り言も多くて作業がはかどらなかったという報告がありました。
ASDの方は、スケジュールが示されると体調が悪くても、やらなければならないと思い無理をする人が少なくないです。原因は、自己フィードバックが弱くて少々の疲れは感じにくく、高熱が出て急にダウンすることがあります。
また、「しんどい」「休みます」を言い出すタイミングもつかめないので、支援する側から休んでいいことや与えられた課題を全部こなさなくてもいいことを教えていくことが大事です。
低学年では、毎日、「今日は元気ですか」と子どもに聞きますが、感情カードを張っておき、しんどいカードがすぐに使えるように貼っておきます。しんどいことはそう簡単には訪れないので指導のタイミングが難しいのですが、毎日、子どもの様子を見ている人がチャンスをうかがって指導します。
おやつ
「昨日は山歩きをして、たくさん歩きました」「1年生もたくさん歩いてくれました」とスタッフから報告がありました。「おやつは食べた?」「いつも通りのおやつです」そこはちょっとスペシャルなおやつにしたほうがいいよと話し合いました。
放デイの日課はとかくマンネリ化しやすいものです。同じ道、同じおやつでは必ず飽きが来ます。飽きて当たり前です。ちょっと頑張ったかなぁと思うときは、その子が好きそうな味のおやつや飲み物を持っていくのがコツです。おいしかったという満足感と活動体験が心理的に連合するように準備するとわりと飽きがこないものです。
おやつだって、うまく使えば大事な支援の助っ人になってくれます。決まった時間に決まったおやつを出すのがおやつの時間と考えていては、ちょっともったいないという話でした。おやつの出し方にもメリハリをつけて活動の中に組み込みます。
なぜ子どもは窓に登ろうとするのか
「Zさんが窓に登るのは何故だと思いますか」と聞くと、Aさんの真似をしたいから登っているとのスタッフの理解でした。確かにAさんとZさんは同学年でZさんはAさんの後ろをついて離れません。そして、Aさんの好きな人形を奪ってAさんの大騒ぎを面白がったりするのです。
Aさんが窓に登るのは、固有感覚を刺激したくて、つまり力が余っていて窓に登るのです。そして、「Aさん!窓から降りてー」とみんなに注意されます。Zさんは、公園へ歩いていくのもめんどくさがる低緊張の、つまり体を動かすのに時間がかかる人です。誰も見ていなければ、窓になど登るニーズはありません。Aさんは人が見ていようが見ていまいが窓に登ります。
そうです。Zさんはめんどくさい体を動かしてでも、一つの目的で窓に登る必要があるのです。それは「みんなの注目」です。ZさんはAさんの真似をしたいツボは「ダメでしょ!」とみんなに注目を浴びることです。とすれば、療育の目標は適切な行動をしてみんなの注目を浴びる内容=「Zさんアイドル化大作戦」を考え出すことです。
運動会
先週の土曜が雨で運動会延期だったので、今日明日に運動会をする小学校がほとんどのようです。Y君が「今日は俺と走るやつ二人ともデブかったから1位になれたけど、あんまりうれしくない」というので「3着の奴は今最悪の気分かも知れんで、2着3着の人をリスペクトする意味でも、素直に喜んどき。」「あーわかった」とわりと素直に聞いてくれました。23着をリスペクトするというのが響いたかもしれません。
この日彼は、転校した学校での初めての運動会での徒競走だったのです。学年ごとの保護者観戦とはいえ緊張で喉が乾ききって、出番の時間までに持ってきた1リットルのお茶を飲みほしたと言います。相手の気持ちが読めないので全員が自分のことを注目しているに違いないという誤解からの緊張です。集団演技のソーラン節も終え、迎えに行ったら彼は疲れ果ててはいましたが、徒競走の成果もあり晴れ晴れとしていました。運動会は彼らにとってはかくも過酷な舞台なのです。
避難訓練
先週の土曜日雨で延期になった避難訓練を今日しました。「震度6強で近隣火災、向陽高校まで避難」という設定でした。前回も向陽高校まで避難だったのですが、武漢風邪予防の臨時休業中という理由で、職員はいたけど避難場所の体育館までは入れませんでした。今日は、体育館までは入れて、子どもたちはここに避難することが分かったと思います。
今回は車いすのXさんは介助者がおらず自力で戸口まで逃げるという訓練をしました。避難開始から戸外の車いす移乗まで5分かかりました。また、安全用のヘルメットも買ったのでみんなで被って高校まで移動しました。結構気に入ってがぶってたみたいです。
今日の避難人数は大人も含めて15名。避難から点呼まで5分。向陽高校体育館までは15分かかりました。みなさん、お疲れ様でした。
【避難開始から向陽高校体育館まで15分】
怒りの地雷を踏まないで
W君がもっとパソコンがしたかったのだけれど、その日はスケジュールが圧していて思うほどPCで遊べませんでした。W君は前回約束した通り約束した時間に終えてPCを片づけました。
でも、約束は果たしたけれど気持ちが収まりません。周囲のスタッフに悪態をつきはじめました。とは言っても彼は悪態=腹いせをスタッフにぶちまけているつもりはありません。「悪態」のように他の人には見えるだけです。自分が他者からどう映っているのかはW君にはあまりわからないからです。
彼にしてみれば、みんなが「腹減ったー」と言うのと同じ感じです。スケジュールが圧したのは誰のせいでもないけど納得がいかないのです。ところがスタッフがこの怒りに付き合ってしまうとややこしくなります。人にはこの思いを聞いてほしいけど解決してほしとも思ってないからです。
反応したスタッフは地雷を踏んだも同じです。子どもは怒りに任せて「なんでやねん」と喋っているだけなのに、「それは違うやろ」とか「理由は君も知っているやろ」などと返すと、「はー」と売り言葉に買い言葉の関係になります。こんな時は思いだけはうんうんと聞いてあげて、「約束通り終われてよかった!ありがとう!」でいいのです。それ以上踏み込んでは彼の値打ちが下がります。
PECS Ⅳ+ アプリ 今なら安い!
iPadで操作できるPECSツール「PECS Ⅳ+ 」が10月は半額セールだそうです。10,400円が5,260円です。
Facebookより
拡大・代替コミュニケーション啓発の月に敬意を表して、10月中、PECSIV+ とIHear PECS:動物のアプリが割引価格でお求めできます。
Apple®のアプリストアからご覧ください。アプリの詳細については、www.pecs-japan.com/apps からチごらんください。
また、PECS®と聞いたことがあるけど、何だろう?気になる?と思っている方、10月19日夜8時から無料でPECSの概要を開催されます。
受付は www.pecs-japan.com にあるトレーニングスケジュールからお申し込み下さい。
PECSの概要 – ZOOM®, オンライン (2020年10月)
開催地: Zoom®
開催日: 2020年10月19日 - 2020年10月19日
日程: 20:00 - 21:30
受付開始: 19:45
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PECS Ⅳ+ は PECS からハイテクのコミュニケーション機器へ移行する際の解決策です。フェイズ Ⅰ から Ⅳ までを従来の PECS のブックを使って習得した学習者にとって、PECS Ⅳ+ はハイテク機器を使った次のステップとなります。研究で実証されいる、世界で話題の PECS を創り出したピラミッド教育コンサルタントから出た PECS Ⅳ+ は、学習者が複数の絵カードを使って文をつくることを可能にします。述語ページを含む各ページには、PECS の絵カードを 24 枚まで置くことができます。そして、それぞれの絵カードの音声を再生するシステムがアプリに内蔵されています。
PECS Ⅳ+ の特色
• マジックテープがついているタグのあるページと文カードがある従来のカラーのPECSブックと似ているので学習者の使用しているPECSブックと同じようにPECSⅣ+のブックを設定できます。
• 従来のPECSのブックと同じ方法を使ってタグのついているページから文カードに絵カードをドラッグしておとします。
• ページ間をスクロールし、タブをタップすることでページが変更することができます。
• 絵カードの絵を削除することなく、文カード上の絵の順序を並びかえることができます。
• 絵カード上の絵を取り除くにはボタンを一回押すか、各絵をブックにスワイプして戻します。
• 1000個以上のPics for PECSの絵カードが入っています。
• PECSの指導方法に含まれている一定時間遅延プロンプトによって音声表出を遅らせる機能も組み込まれています。
各ブックのカスタマイズ
• 専用の述語ページを1回タップすることであけたり閉じたりできます。
• 1枚から20枚のタグのついているページを作ることができます。
• 各ページに24枚の絵カードをのせることができます。
• 各ページのマジックテープの数、色、カテゴリーのアイコン、そして絵カードの枚数を決めることで各ページをカスタマイズできます。
絵カードのカスタマイズ
• Pics for PECSにある絵を使うか写真ライブラリから写真を追加したりウ。
• 絵カードの文字を変更する。
• 文字を絵カードの上か下かにつけたり、絵カードから文字を取り除いたりできます。
• 絵カードのサイズを変更できます。
• Pics for PECSのライブラリの機能を検索する。
音声
• カスタマイズ可能な合成された音声(AV音声シンセサイザー)を使うか、自分の声を録音することができます。
• 生徒が発語する機会を作り出すために研究で実証されている一定期間遅延プロンプトを文章に組み込んでいます。
カスタマイズするために設定されたプロファイルを選択する、または新しいプロファイルを作成する
• 絵カードを動かす方法:タップ、ドラッグ、または両方
• 絵カードの絵を削除(リセット)する方法
• 述語ページの可視性
• 左から右、または右から左の文カードの読み
• 文カードを読むタイミング:各絵カードが選択される度か、文カード完成後」に音声表出のボタンを押した時
生徒の使用状況の痕跡
• 日毎の作られた文カードリスト
• 最も使用頻度の高い絵カードの週毎、月毎の分析
ピラミッド教育コンサルタントは機能的コミュニケーショントレーニングをアプリを使ってまたは音声表出コミュニケーション機器からはじめることはおすすめしません。なぜなら、ハイテク機器はコミュニケーションには不可欠なそしてPECSの根本理念である対人相互作用を必要としないからです。機能的コミュニケーショントレーニングは従来のPECSのブックを使って始める必要があります。研究では、ほとんどの学習者は3ヶ月から9ヶ月の間にローテクのPECSの指導方法でフェイズ1から4まで習得できるとされています。
西山歩き
V君は西山歩きではいつもだらだら歩きなのに今日はガンガン歩いていたというので理由を聞くと、目的地での飲み物がサイダーなんだそうです。なるほどV君はサイダーが大好きです。家に送っていく時もお母さんを見るなり「三ツ矢サイダー?キリンレモン?」と催促しています。
以前、欲しいものがあることはいいことだと書きましたが、好きな飲み物や食べ物があることもとてもいいことです。好きなもののために頑張って、「よく頑張ったね」と褒められることの心地よさは、自分にも相手にも良い感情を育てます。たかが、サイダー。されど、サイダーです。
ピンチはチャンス
パソコンを遠隔操作でオフにするソフトウェアーはないかとスタッフが聞くので理由を聞くと、小学生のU君らがパソコンのゲーム時間を何度言っても守らないので強制的に終了するソフトウェアーで解決したいとのことでした。
「あのね、ここはゲーセンじゃなくて療育施設なんだけどな」と呻いてしまいました。スタッフがPCを止めたい理由は、U君が時間通りに動いてくれないと他の子どもの送迎時間が遅れるからです。子どもに言っても言っても言うことを聞いてくれないのは、放デイでは当たり前のことです。皆が困るということが想像できない子や、約束を忘れてしまう子が通所してくるのが放デイだからです。
こうした事例に取り組んで成果を出すのが報酬をもらっているプロの証です。リモートでゲームを物理的に切ってもU君の問題は何も解決しないし、自尊感情も育ちません。まずは、理由を説明し契約をして契約を履行すればボーナス点として延長時間が次回以降に貯金として与えられ、履行しなければ次回はPCはないという約束をすればいいのです。トークンエコノミーに取組む良いチャンスを生かしてほしいと思います。
スケジュールの前に教えるべきこと
スケジュールの支援10/6 のところでも書きましたが、スケジュールの理解はPECSではフェーズ3bだと書きました。スケジュール理解は「義務と報酬」の関係の理解が基本とも説明しましたが、もう少しわかりやすい説明がいると言われていますので、書き加えたいと思います。
生活に沿わせようとして、親切心でスケジュールを導入しても、かえって混乱する子どもがいます。新入所・入学の時期、療育教室や支援学校や学級の教室の個別スケジュールエリアに貼るスケジュールカードは、最初は次の場所に移動する1枚から慎重に進めていく事が必要です。
スケジュールカードの手順は、貼ってある絵カードを「これからやることスペース」に貼り付けるか、やるべき事を忘れそうな子どもなら行くべき場所(机等)に移動して貼り付け、終わればそのカードを剥がして持って戻り「おしまいボックス」に片付けます。(「スケジュールボードに戻る」というトランジションカードは「戻りなさい」と言う言葉の代わりのキューに過ぎず、フェイディング方法がなく、子どもにも支援者にもスケジュールの意味(自立性)を形骸化させ、結果的にプロンプト依存を強化しているように思います。)
もちろん初めてスケジュールを見る子どもの中には、一目スケジュールを見れば一日の流れを理解する子もいます。しかし、ASDの子どもは対人相互性の理解やコミュニケーションに課題を持っているので、このスケジュールの意味に大人との契約だという事は理解できていないのです。こうした子どもは、嫌なスケジュールを落としたり、投げたりします。
これは、スタッフに「嫌」を訴えたいからではありません。カードが無くなればやらなくていいと理解するからで、要求や交渉のコミュニケーションの存在を知らないからです。つまり、スケジュールを不適切に扱う子は、表出のコミュニケーションレベルがとても低いと考えるべきで、まずはそのレベルに合わせて取り組む必要があるのです。
絵カードの不適切な扱いの後でスケジュールボード上で交渉をする人もいますが、子どもによっては不適切に絵カードを扱えば嫌いなカードがなくなった・後回しになったという学習にならないかどうかの注意が必要です。
世間では、構造化支援=スケジュール提示と思われがちですが、その子の表出コミュニケーションレベルに合った、契約・交渉のトレーニングが必要です。それがスケジュール2枚提示の場合もあれば、1枚絵カード指示のこともあるし、それと並行して表出のコミュニケーショントレーニングに取り組まれなければ、大人と子どもの関係はちぐはぐなままとなります。
ビギナー支援者は支援グッズの意味を考えずに先輩の支援の真似をしがちですが、スケジュールよりも先に教えるべき表出のコミュニケーションの課題がないか、良く考えてから支援する事が重要です。
好きなものがあることはいいこと
先日の懇談会で、T君が習い事を嫌がるので困ったという相談を受けました。T君の欲しいものがあるか聞くとゲームが欲しいとのことでした。それではゲーム機やゲームソフトをご褒美にして習い事に通わせてはどうかとお話ししました。
すると、ゲームを与えてしまうとやめなくなってかえって家の中の親子の争いごとが増えそうで気が進まないとのことでした。ゲーム時間親子摩擦事象は、大抵の家庭で日常茶飯に生じている問題ですから、世界中で沢山の解決アイデア事例が蓄積されています。また、ゲームをするためにお手伝いをしたり、勉強をしたり親が仕向けることが、物を与えないと行動しない即物的で自制の効かない人になってしまわないか心配だという保護者の気持ちもよくわかります。でも、「ご褒美子育て」を貫いたから、即物的で自制の効かない人になったという例は見た事がないです。
むしろ、幼少期に必要以上の我慢を強いられたり、親の気分で一貫性のない物の与え方をされて、大きくなってから自制が効かず、いろいろ問題を抱えている人の方が目につきます。欲しいものを与えることは悪いことではありません。約束を守れば報いはあるということを小さな時期からしっかり教えることが人への信頼感や自尊心を育てると思います。特に相手の気持ちを推し量ることが苦手な子どもたちには、目に見えるものが大事なように思います。思いやる気持ちは褒められた経験から育ちます。
私たちが困ってしまうのは、好きなものが見つからない、やりたいことが見つからない人です。元気な人をコントロールすることは容易ですが、欲しいものやりたい事が見つからない人の行動変容はとても難しいです。ゲームにしろガンプラ(「機動戦士ガンダム」のシリーズに登場するモビルスーツ、モビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化したプラモデルのこと)にせよ、子どもに欲しいものが沢山あることは、子育て上、とてもラッキーなことだと考えると、色々なアイデアが湧いてくると思います。
初めてを、楽に
新事業所じゃんぷ、開設して10日程が経ちました。ありがたいことに、ポツポツと見学希望等いただいています。
学びの広場じゃんぷは、児童発達支援(療育)と放課後等デイサービスの多機能型ですが、今日は放デイの見学がありました。見学と言っても、まだ実際の場面を見ていただくことはできませんから、見学者自身に少し体験してもらえるような活動を用意しました。
スタッフ側も、楽しんでもらえるかな?じゃんぷを好きになってくれるかな?とドキドキで迎えますが、お子さんも初めての場所でドキドキしていると思います。発達障害の特性をお持ちの場合、『初めて』が苦手な方も多いので。折しも今日は朝から続く雨。雨や濡れることが嫌いなお子さんもいらっしゃるので、あまり初日には向かない天候…。
今回は字が読めるタイプの方でしたので、プリントしたスケジュールと、Ipadにダウンロードしたタイマーアプリを用意しました。
本来、時間的見通しや切り替えを支援するためのツールですが、お子さんとのかかわりの中では、大人と子どもの共通理解や交渉を助けるコミュニケーション支援にもなっていることを実感します。
「○○したら△△できるよ」と口約束でなく、はっきりと書いてある予定。「もうおしまい」でなく、『あと○分』と自分で確認できる見通し。情報を、ズレなく、双方がわかるかたちで共有することが、まず余計な混乱や、相手への不信を減らします。要求や拒否を上手く、程よく伝えることが苦手なお子さんとの初めての交渉を穏やかにし、お子さんの希望をスタッフが把握しやすくなります。
活動の最後に感想を聞くと、笑顔で「楽しかった!」と嬉しいコメント。スケジュールはやりとりの書き込みでいっぱいでした。楽しくて、まだ遊びを終わりたくない一幕もありましたが、スタッフが「じゃああと何分する?」と聞く前に「10分!」と交渉開始。素晴らしい!
少し予定時間を過ぎていたので、お互いの折り合いで、『5分』にタイマーをセット。タイマーアプリ、アラーム音が涼やかで耳に優しく、『おしまい』と文字も出るスグレモノです。スタッフとハイタッチをして帰っていかれました。
スタッフ支援
Sさん担当のスタッフがSさんの不適切行動に手を焼いていました。外に出ると逃げる。部屋の中にいると本棚から本を落として散らかす。注意をするとドアを蹴って大声を出す。「どうしてそんなことするの!」「そんなことしていいと思っているの!」と言いつつも、Sちゃんの後追いでスタッフは途方の暮れています。
「スタッフさん交代してあげて」とベテランのスタッフさんに交代してもらいました。ベテランのスタッフさんは、先手必勝です。遊びに誘い込んで主導権を取るのです。今まで不適切な行動しかしていなかったSさんは、ニコニコして安心して遊んでいます。「(私には)難しいですね」と先ほどのスタッフさんが言いました。
放デイはパートスタッフさんにも来てもらっているので、様々なキャリアの方がいます。皆さん福祉畑や教育畑でのベテランさんが多いです。ただ、「見守り」の考え方は子どもの場合意味が違うことが多いです。子どもは何をしていいかわからないときは、Sさんのように大人を巻き込んでくることがあります。それを、遊んでほしいサインとして受け止め遊びを教えてあげると、安心する場合が多いです。保育・教育畑ではよく知られていることですが、成人や重症心身障害の支援経験者の場合は、経験しないことです。スタッフ支援は忙しい中では丁寧にはできないのですが、OJTでその場で支援していくことが大事だと思います。
フラッシュバック
ASDの人にはフラッシュバックを起こしやすい人がいます。多くは驚いたり、怖いことがあった時の感情や行動がずっと残っていて、何かの拍子に繰り返してしまうのです。厄介なのは、結構困った行動が多いのです。おそらく、きつく怒られたか何かで驚いた経験として行動も一緒に保存されるようです。不適切な行動を起こして怒られて驚いているので、不適切な行動と驚きや不安な気持ちがセットになってフラッシュバックするのです。
Rちゃんは車道に飛び出して車を急停車させたそうです。本人も驚いたのだと思います。その後見通しがなく不安になったり同じシチュエーション(道路が見えると)になると、わざわざ飛び出そうとします。怖かった思い出が危険行動に結びつくのです。言葉がわかるようになってくると認知行動療法やEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)等の心理療法で軽減できるといいます。
従って、年齢が低かったり、言葉が十分に理解できないASDの子どもの場合は予防が大切です。イギリスの自閉症協会の提唱するASDを育てる基本理念の【SPELL】は、Structure=構造化、Positive=肯定的な関わり、Empathy=共感、Low arousal=低興奮・低刺激、Link=連携です。不適切行動も含めフラッシュバックの予防には、この5項目に勝るものはありません。
スケジュールの支援
Qさんがスケジュールに従わないという報告がありました。ただ、最初の頃から気にいらないスケジュールカードがあると自分で外していたといいますから、スケジュールに沿う意味は分かっていなかったのだと思います。
通常スケジュールの理解は、PECSのコミュニケーションレベルでは要求カードが自由に弁別でき、「待って」や「これが終わってから」に従えるフェイズ3bからです。それまでは絵カードに従うことをトークンエコノミーなどを通して「指示に沿う」ことを教えます。実はこの訓練ができていないと、スケジュール絵カードが弁別できても、従うという交渉の意味が理解できない場合があります。従うというのは無条件に大人に従うという意味ではなく、「義務と報酬の契約」があることを理解することです。
そこでもう一度、指導マニュアルの初歩に戻って、絵カード二枚提示で「これをしたら、好きなこれあるよ」を繰り返し丁寧に取り組もうということになりました。スケジュールは対人相互交渉の理解の上に成立するものだというコミュニケーションの基本に立ち戻ってのスタートです。
宿題が多すぎる!
すてっぷを利用している小学生のほとんどが「宿題の量が多い」「苦手な練習が多すぎ」と悲鳴を上げています。また、低学年のうちはいいのですが、高学年になってくると宿題に向かうたびに「できなさ」に向き合わされる辛さが半端ないと訴えています。
理由はほとんどが、言語性ワーキングメモリーの少なさ所以の読み書き障害か、視空間性ワーキングメモリーの少なさ所以の算数障害です。中学年以降からはただ読めるだけでなく、すらすらと読めないと書き写しもしんどくなってきます。他の子どもは読む中で単語の音と意味が短期記憶から長期記憶に保存されるので、それを呼び出してきてどんどん読む速度が速くなりますが、いつまでも拾い読みの人は長期記憶にも単語が保存されないので遅いままです。
算数の速度は事物ファイルシステム・量的イメージシステムという視空間性ワーキングメモリーに左右されます。パッと見て3~4個が認識できるようになると数の分解も可能になります。例えば、7+5の「5」を3と2に分解して10と2という繰上りができそのうちに「5は3と2」などの長期記憶ができるようになります。そうするとすらすらと計算できてしまうのですが、この視空間性ワーキングメモリーが弱いといつまでたっても分解合成で指を使ったりしないと答えが出ないので長期記憶に保存されず他の子どもとどんどん水が開きます。
10ある力を他の子どもは学年が増すにつれ長期記憶が助けるので4か3の力で読んだり計算しているのですが、それがいつまでたっても低学年児と同じように10の力を使うとすれば、量が多くなれば処理できなくなるに決まっています。学習は、練習よりも意味が理解できているかどうかに力点を置いてほしいです。排水量の少ないシンクを思い浮かべて、水は出しすぎないように、どうかよろしくお願いします。
知らんし…
P君が、以前、パソコンで遊ぶ時間はタイマーで決めようとスタッフと約束(契約書)したのにタイマーをかけずに遊んでいました。スタッフから「一緒に約束したことなのに契約違反だよ」と指摘されているのに、P君が「知らんし」と言ったので、「契約書もあるのに、その言い方はないだろう」とスタッフが叱ったという報告がありました。
契約書を作るのは、P君が約束そのものを忘れてしまうので作るのですが、今回のP君の「知らんし」発言は二つの意味があります。「約束を忘れてたのだから、その場面では知らなかった」「契約書を見せられたら、思い出したけど、だからどうしたらいいか知らない(わからない)」ということです。スタッフが思うほど、指摘したスタッフへの挑戦的な気持ちは、P君にはさらさらなかったと思います。
P君に悪意はないと思われるので、叱るのではなくエラー修正でいいと思います。「知らん」というのではなく「忘れてごめんね」「忘れないようにするにはどうしたらいいか一緒に考えてほしい」と言えばいいことを教えることです。併せて、指摘してくれた時に「知らん」というのは相手を誤解させるからNGワードだよと教えればいいと思います。真意を伝えるコミュニケーションは双方難しいものです。
遊びモデルの必要性
Nさんが、O君と水鉄砲遊びをしていました。そのあと水鉄砲のチューブの部分を空に投げる遊びをO君が考えました。「イッセーノーデー、ポイ」遊びです。O君はものすごく高く投げられるし、Nさんも自分のできる範囲で一生懸命投げて、盛り上がりました。
スタッフを入れて3人は飽きるまで投げました。他愛もない遊びですが今日はNさんにとってはO君が遊びのモデルです。大人がちょっと離れると不安になって大声を出して注意喚起するNさんですが、だからといって大人が横にいればそれでいいわけではありません。子ども同士をつなぐ遊び内容と、「ほれ、こんなに面白い」と示す遊びモデルになる子どもが必要です。それを大人が面白がっている図が、子どもの育ちには一番理想的だなぁと思います。
アセスメント・フリー
言葉のないM君が離れたところにいるスタッフの写真を識別して選び、歌絵本の電池を選択したスタッフに入れ替えてほしいと絵本を持ってきたそうです。また、最近作ってもらったポータトーンの絵を識別して、ポータトーンで遊びたいと要求してきたという報告もありました。
絵カードの識別はPECSのフェイズ3です。通常「~ではなく~だ」という力は言葉の出始める1歳半で確実になってくると言われています。また、M君は視力も聴力も中等度の障害を受けているし、食事や排泄、移動も介助が必要です。でもM君は自分の要求物や、行きたい人の写真を識別して自発のコミュニケーションが取れるようになってきました。
PECSは学習理論(ABA)に基づいたものですから、発達段階や障害の状態からできるできないを最初からは判断しません。小麦抜きをグルテン・フリーというように、アセスメント必要なしのPECSはアセスメント・フリーなのです。強化子さえあれば行動変容は可能というコンセプトは、実践の成果が出ない事を、障害や発達の理由にせず、実践のやりかたに原因を求めていく必要を、支援者に教えてくれます。
いやだー
Lさんが最近なんでも小さな声で「いやだー」と拒否するようになりました。スケジュールに提示してあるものも「いやだー」、PECSのおやつトレーニングも「いやだー」、自立課題も「いやだー」です。ただその「いやだー」はLさんの絶叫拒否から変化して周りはうるさくないので拒否を受け入れている状態です。
2歳ごろからはじまる「イヤイヤ期」は、自分で選びたい、急な大人の指示に沿えないなどの理由ではじまります。これは以前「自分で選ぶこと決めることの重要性 : 03/25」でも少し触れています。
Lさんの場合は、周囲の様子が理解できてきて、これまで機嫌よく受け入れいていたもの全てに「いやだ」が出ています。これは見通しがないわけではないので、自己選択の欲求のように思えます。「自分のやりたいものだけしたい」となると大変だと大人はすぐに心配しますが、それには当たらないと思います。ここは、まずLさんの小さな声の「いやだー」は尊重しつつ、体遊び等もっと好きなことを見つけて指示に沿うルールを作り直すことと、空中に向かって発している「いやだー」を絵カードでこれがしたい、これがほしいと示せるように仕切りなおすことだと思います。
何を支援したいのか?
Ⅰ君がスケジュールを見ないので、スケジュールを見るように声を掛けたらいいかどうかが議論になっていました。「ところでⅠ君首からスケジュールぶら下げているけど、あれは何のため?」「Jさんの見通しを戸外でも持たせるために、携帯スケジュールにしてもらったら効果があったから、Ⅰ君にもつけてもらっている」「K君がぶら下げているから自分のも欲しかったようなので作ってあげた」「???」
Ⅰ君のスケジュール支援の今の狙いは、「スケジュールを理解する」ことです。つまり、スケジュールが何の役に立つのかどう使うのかも分かっていないのです。Jさんの戸外の見通しが持てるようにするためのスケジュール携帯とは目的レベルが違います。しかし、こうした目的を理解しないまま使う視覚支援ツールの与え方は「現場あるある」で、あちこちで見られます。
他の人でうまくいったから、この人にも使おうというのはまだいいほうです。目的も分からずに格好だけ真似した「視覚支援」グッズを使う人のなんと多いことかと思います。武漢風邪のマスクと同じです。マスクで感染予防できるとは思っていないのに、みんながつけるから付き合いでつけているだけという現象とよく似ています。
視覚支援のつもりだろうけど、そのグッズの使い方はこの子にあってないよね、という様子はあちこちの学校や園で見受けられます。今回は、I君はまずスケジュールの使い方を理解する事が優先課題です。首からぶら下げていても肝心のスケジュールを見なければ役に立ちません。
スケジュール理解の最初のトレーニングは、子どもが場面の切り替えの度に、カードを貼ったり入れたりする操作をすることでだんだん理解していくのです。与えてすぐに理解できる子は多くはありません。スタッフが何を教えたいのか狙いを持ち、マニュアルに添って子どもの理解レベルにあったスケジュール支援をお願いします。
集団活動ができない障害やねん
H君に、放デイのない日はどうしているのと聞くと、誰とも遊ばずに家にいると言います。彼は保育所時代から同じ地域に住んでいるので知っている子はたくさんいます。でも皆共働き家庭なので顔見知りは学童保育所に行っており、声をかける人がいないそうです。
H君も学童保育に行っていたのですが、集団活動でつまづいてしまい、学童保育を嫌がってやめたそうです。「僕は集団活動ができない障害があるからみんなとは遊べないねん」と言うので「放デイでみんなと遊んでいるじゃないの」とフォローすると、「それはそうやねんけど」とあとの言葉が続きません。
確かに彼は空気を読むのが苦手で、必要以上にはしゃいでしまったり、自己抑制ができなくなる事があります。しかし、そんな子どもはどこにでもいます。まずは、職員集団がそのように子どもを理解し支援するのは学童保育も放デイも同じことです。ただ、当事者が嫌がるのは当事者の責任ではありません。どんなにサービス提供者が正当性を並べても、提供したサービスを評価するのは当事者です。
学童保育をやめたのは当事者家族の選択で、行政側が断ったわけではありません。けれども、彼は「僕の障害が友達と遊べなくしている」と考えてしまい、放デイのない日は部屋の中で過ごしています。当事者の困難度によって支給量は増えたり減ったりするのが公平というものです。週三日という地域の「標準」支給量に縛られて、放デイの支給量を増やすことはまかりならないというなら、公助とは一体何のためにあるのかと思います。
バースト現象とギャンブル理論
Gちゃんが、最近大声や奇声をあげて拒否したり要求したりするのけどなぜだろうという報告がありました。GちゃんはASDで、入学当初、機能的コミュニケーションがうまくいかず、要求が叶わないと大声をあげたりしていました。そこでPECSや機能的コミュニケーションに取り組み始め夏ころにはとても穏やかに要求や拒否ができるようになっていたのです。
学校が始まり、新しい事業所にも通い始め環境に変化があったのは当然ですが、この落ち込みぶりは激しいなぁと感じています。以前は、だんだん声が大きくなる感じでしたが、最近はいきなり奇声で「ぎゃー」と叫びます。これはABA理論ではバースト現象といって、不適切行動で相手が反応しないのでさらに大きな声や不適切な行動を修飾して要求を実現しようとする現象です。つまり、かなり日常的に不適切行動が無視されていることが推測されます。
大事なことは、不適切行動をスルーして無視することではなく正しい要求の仕方をエラー修正して教えることです。「そんなことで要求をかなえるとずっと大声を出すから反応しちゃだめ」という人がいますが、泣く子と地頭には勝てないのが世の常です。結局、激しい不適切行動の後要求がたまに実現したりするのです。
この「たまに」というのはもっと良くないのです。「ギャンブル理論」といって、たまに要求が実現するほうが行動は強化されてしまうのです。だからかけ事がやめられない人が多いのです。エラー修正で行動を修正して正しい要求実現の方法を教えることと、もう一方で、まってね・今はダメを、大暴れするような修羅場ではなく、我慢できそうな訓練場面で少しづつ教えていくことが大事なのです。
読み書き障害に対応した学習支援プログラム 【じゃんぷー1】
おかげさまで、当法人の新しい発達障害対応の事業所「じゃんぷ」が10月よりオープンします。「じゃんぷ」の支援コンセプトは「エビデンス・ベースド・プラクティス」つまり「根拠に基づいた支援」です。
あちこちの事業所のホームページをみると、必ず「発達障害」児の様々な支援がうたわれており、その支援も「ソーシャルスキルトレーニング(SST)・学習支援・個別療育・集団療育」とか「TEACCH 感覚統合療法 ソーシャルスキルトレーニング(SST) 学習支援 個別療育 集団療育 預かり支援」「応用行動分析(ABA) 感覚統合療法 言語療法 作業療法 理学療法 遊戯療法 音楽療法 運動療法 ソーシャルスキルトレーニング(SST) 学習支援 個別療育 集団療育 」などなど聞いたような療育が並びます。しかし、これらのどの療法にしても正確なアセスメントを行い個別化しないと取り組めません。それは、利用する子どもたちの凸凹のパターンや凸凹の開き方が違うからです。
「じゃんぷ」でも、幼児にはSIT(Sensory Integration Therapy;感覚統合療法)や小学生にはSSTや学習支援にABA理論に基づいて取り組みますが、こういう個別化した取り組みはアセスメントや評価をしっかりとらないとやっているだけになってしまします。子どもが楽しければいいのならそんなに難しいことは言わなくてもいいのですが、それですらなぜ子どもが楽しいのか、なぜ取り組もうとしないのかという仮説や根拠が必要です。
また、どの放デイにも「学習支援」と掲げられてはいますが、どんな学習支援をするのかは示されていません。「すてっぷ」のように宿題を手伝うことなのか、「じゃんぷ」のように保護者や子どもと契約して特別の個別学習プログラムを実施することなのかで、支援の密度も手法も変わります。
特に発達障害の子どもにみられる、読み書き障害(音韻障害を主とするもの)にどうアプローチするのかは、学校でも知らない先生のほうが多いです。じゃんぷは、認知特性だけでなく音韻意識の流暢性アセスメントをして、この問題に本格的に取り組もうとしています。おそらく、京都府の放デイでは初めての取組になるかと思います。
今回から、「じゃんぷ」の目指す支援について少しづつ紹介していきます。
「マジックジュース」サイエンス
高学年のD君E君と低学年のF君を読んで「マジックジュース」の実験をしてみました。「マジックジュース」とは、色が変わったり、泡が出てきたり、液体が混ざらずに重なったりする、まるで魔法がかけられたように変化していくジュースの実験のことです。
毎度掲載しているように、高学年児は同じ遊びばかりでは放デイの生活に退屈してしまいます。かといって低学年や重度の障害の子どももいるのでグループ分けはしますが完全に分離してしまうと、多様な人がいる生活の良さを生かせません。この匙加減が大変難しいです。そこで、たまに、高学年の興味関心を引き付ける内容を投げ込むことが大事です。
今回のマジックジュースは、グレープジュース(30ミリリットル)に重曹小さじ4分の1を入れて変化を見ました。「お~色が変わる!!」高学年の二人は大興奮。(ん?理科の実験って最近しないのか?)グレープジュースには「アントシアニン」が入っています。色は紫で、ほぼ「中性」です。アントシアニンにアルカリ性のものを混ぜると青くなり(グレープジュースでは黒っぽく見えます)、酸性のものを混ぜると赤くなります。重曹はアルカリ性です。グレープジュースが黒っぽく変わったのは、重曹を入れたことでアルカリに変わったからです。
D君は「リトマス試験紙と同じか」と推測。E君も「もっといろいろ混ぜてみよう」と乗り気です。ところが低学年のF君は「高学年の勉強やしおもろない」と逃げていきました。見えないものの変化に法則性を見出すのは9~10歳ころと言われているので無理ないとは思いますが、興味なさすぎでスタッフはがっくりしていました。
あとは、酸性のクエン酸(柑橘類の汁)では赤くなり、クエン酸と重曹では泡が出るなど楽しいミックスジュース遊びに、高学年は沸いていました。
注意喚起も強化子に
C君がゲラゲラ笑ったり大きな声を出して自立課題をしているといいます。「今日は、来た時からテンションが高かった(興奮していた)」「だんだん収まってきたが利用者が増えてくるとまた声が大きくなった」「テレビのコードなども抜くので音がうるさいのではないか」スタッフの言いたいことは2つです。「調子が悪いから声が大きい。音がうるさいから不適切な行動が出る。」ということです。
この論は対応するスタッフには問題はないというものです。子どもの不適切行動の大半は親や大人に向けられているものです。子どもの不適切行動が起こったら、まず大人の対応を振り返る習慣が必要です。誰にだって快・不調の波はありますし、ざわざわしてるところはいらいらするものです。しかし、だからっと言って大声をあげたりコンセントを抜いたりはしません。コミュニケーション能力があるからです。
でも、不適切な行動を繰り返している子どもには、こうした注意喚起行動が大人を引き付けるのに手っ取り早い方法となります。こうした行動が予測されるなら、一緒に座って作業を教える場面を作って「大人の適切な注目」を得る場面を作ったほうが安定してくるものです。「やることがないから」注意喚起するという理由で自立課題を与えたりするのは逆効果です。注目を得たいのですからスタッフの適切な注目を強化子にする課題を考えるべきなのです。
流暢性
高学年のB君は、書くのが大変遅くて課題に取り組むことが億劫で仕方がないと言います。読みができるので大人はあまり気づかないのですが、実は読みの速度も書く速度も遅かったりします。これを流暢性というのですが、文字を音に変えたり、音を文字に変えたりする速度のことを言います。(私たちの経験からは、視知覚による問題だけで読み書きが遅い子は大変少なく、音韻の問題が絡んでいる子が多いと感じています。)
この流暢性が弱いと4年生くらいから読み書きの困難が顕在化し始めます。つまりただ読めるだけただ書けるだけではなく、すらすら読める、すらすら書ける事が大事なのです。読めるけれどもつっかえやすいとか、連絡帳の写しの場面で他の子がカバンに片づけているのにまだ写している様子があれば流暢性が弱いとの疑いが必要です。
こうした場合、WISCやKABCだけでなく、流暢性を測るテストが必要です。STRAW等がテストとしてはスタンダードです。そこで平均値からどれくらい離れているか見て支援が必要かどうか判断します。
流暢性が著しく遅い場合は、読むことを聞くことに変え、書くことは話すことに変えて、その後電子デバイスへの入力スキルについての必要の可否を検討していきます。低学年のうちは、こうした代替手段も導入しながら、一方で音韻障害専用の音読トレーニングやひらがな獲得トレーニングに取り組んでいきます。ただ、何年たっても苦手なものは苦手なので、限られたパワーや時間をどう配分して使うかが重要です。高学年はどの方略を使っていくかの決断の時期です。
相談支援員のキャリア
9月10月は相談事業所のモニタリングが多い時期です。これは、放デイなどを紹介した相談事業所のスタッフが子どもたちの様子を見たり聞いたりして、今後のサービス計画を立てるための調査です。そこで、いつも気になるのは、子どもの見立てが違うことがあります。もちろん、相談事業所は毎日子どもを見ているわけではありませんから、毎日見ている放デイのほうが細かなことは知っていて当たり前です。しかし、利用者を見ている時間が長かろうが短かろうが、障害や発達、家族力動についての基本的な知見は不可欠です。例えば、不登校の原因に分離不安という視点や、読み書き障害の有無も留意しておくという知見は欠かせないものです。
相談員の資格はテストをするわけではありません。決められた研修に参加し、決められたサービスキャリアがあれば取得できます。今日明らかになっている発達障害や心身症関連の知見、その支援方法については、必修ではありません。こんなものは、どこまで知ればいいというものではありませんし、決められるものでもないとは思います。しかし、ある程度のレベルが必要なことも事実です。その判断は、現場に任せるしかないと思います。
例えば、研修を受けたら、1年程度はインターンとなり資格者である人の元で働き、意見書で課題も明らかにしてもらって資格者となるような手続きが必要ではないかと思います。そうでなければ、何を最低限おさえて相談をすればいいかわからないからです。この職種は相談者になってしまえば、もう誰も指摘してくれないので、最初の養成過程が重要なのです。クライアントとの聞き取りスキルなどはキャリアを重ねればそれなりに見栄えはしますが、どういう見立てを行うかは基礎的科学的な根拠が必要です。対人サービスはどんな職種も同じとは思うのですが、相談支援者は利用者が最初に出会う職種だからこそ、客観的な信頼性が大事です。しっかりと人が育てる期間が必要だと思います。
VOCA
Aさんが、頭を床に打ち付けて自傷するのは、いつも通りでない場合や要求が叶わないときに必ず起こるという報告がありました。それでも、事業所の生活に慣れてくると、Aさんにも見通しが立ってくるので、初めの頃のような頻繁さはなくなったと報告されました。
では、PECSに取り組みましょうとはなりません。Aさんが長時間手に持てる物は食事中のスプーンとか、おトイレに行くときの着替えバックくらいで、カードは無理です。つまり受容性コミュニケーションの力は伸びてきたけど、表出性コミュニケーションが伸ばせていないのです。
だったら、VOCAに取組んではどうかと話し合いました。(VOCA=Voice Output Communication Aids)(携帯用会話補助装置)。簡単に言えば大きいボタン(ビッグスイッチ等)をたたけば「お願いしまーす」と録音された声が出て、周囲の人が手助けするという仕組みです。でも、これを実現するには、まずスイッチを押せば何かが起こることを教えないと因果関係を理解するのは難しいです。
そこで、ボタンを押すとおもちゃが動くとか、好きな動画が始まるとかから取り組む必要がありそうです。本物のボタンスイッチは1万円、音声録音機能付きだと4万円と高価ですが、アマゾンなら音声ボタンは安物なら千円、壊れにくそうなのは5千円くらいから購入できます。
学びの広場じゃんぷ オープン!!
学びの広場 じゃんぷ
10月1日オープン!!
「学びの広場じゃんぷ」は、就学前から中学生までの発達障害の子どもを対象に、自立に必要なコミュニケーションスキル、生活スキル、学習スキルの支援をおこなう療育タイプの多機能型事業所です。
発達障害・学習障害のあるお子さま一人ひとりのニーズに応え、得意をいかす指導で意欲をもって学習できる支援を提供します。個別指導での学んだことことを園や学校などの集団生活でも発揮できるように、個別指導と集団指導を組み合わせながら最適な支援を提案します。
また、子ども自身のスキルアップだけでなく、ペアレントトレーニングなどご家族への支援、園や学校、ご自宅などの生活環境での様子にも目を配り、必要に応じて連携を取りながら、子どもが自分らしく生きる力を育むためのお手伝いをさせていただきます。
小学校就学を前にして、適切な集団行動や家庭学習の準備を必要とする子どもと家族のために、そして、思春期に向かう高学年から中学生の時期に自分の特性を知り、それと向き合い、自分に合った学習や生活の方法を探したいと願う子どもたちとその家族のために「じゃんぷ」の扉は開かれています。
阪急西向日駅から徒歩5分の立地ですので、乙訓地域や京都市からも通いやすい教室です。児童発達は親子通所用の駐車場があります。放課後等デイサービスは自主通所を原則とし、送迎は行っていません。
9月中旬より、新規利用・見学についてのお問い合わせ受付を開始しております。詳しくはお電話かメールでお問い合わせください。
電話 :075-874-5170(受付9時から18時まで)
E-mail: manabi.jump20@nifty.com
※教室見学は事前のご予約が必要です。
アンガーマネージメント(怒りの鎮め方)
Yさんは、相手が小さな子どもでもカッとなってしまうと後ろに引けずけんかになってしまうという報告がありました。それは、怒りのコントロールをトレーニングしてはどうかという意見がありました。
アンガーマネージメントは、人によって自然に身につく人もありますが、学んだほうがうまくいく場合があります。子どもの場合は、大人と一緒に学ぶのがいいと思います。
子どもが「怒り」のサインを見せるのは3歳ころからですが、実際にアンガーマネジメントが使えるようになるのは5才からと言われています。5才から8才にもなると、怒りは自然な感情であり、他人を傷付けたり怒らせるためにあるのではない、と理解できます。でも子どもには子ども向けのアンガーマネジメントテクニックがあります。
1.タイムアウト(その場を離れる)
子どもが怒っていたりムカムカしていたら、タイムアウトを教えましょう。小学生の子なら、数分間その場を離れさせて自分を取り戻させます。深呼吸をさせて、何が原因で怒っているのか考えさせましょう。子どもに「あなたは怒りの奴隷ではない」「怒りお化けを追い払おう」と教えます。
2.問題解決
5才にもなると、どちらかが勝ってどちらかが負けるwin-lose、二人とも負けるlose-loseといった結論以外に、両者にとって望ましい結果を得られるwin-winという状況を理解できます。友達と争いが生じたら、相手と話し合ってお互いがハッピーになれるように、話し合いを持つ事を勧めます。
3.大人に話す
子どもが怒りを感じた時、一番理想的なのは誰か大人に気持ちを話す事です。先生や親が子どもの話を整理してあげる事で、子どもが友達等に自分の気持ちを伝えるお手伝いをします。子どもには、自分の気持ちを表現する大切さを教えます。
4.絵カードを使う
5才でまだ文字がうまく読めなかったら、様々な種類の「感情カード」のセットを使います。小さい子どもは、怒っているように見えて、実はその感情が恐怖だったり混乱だったりします。子どもが怒り出したら感情カードを見せて、自分の今の気持ちを選ばせて下さい。
5.ストーリーにする
この年齢の子どもだと、まだ自分の怒りの感情をただちに捉える事ができないかもしれません。このような時、子どもが好きなキャラクターを使って、そのキャラクターが上手に怒りの問題と向き合っているお話を聞かせてあげるのも有効です。
医療連携
X君がお母さんに計算は努力してできるようになるもので、電卓使って宿題しても努力にはならないと言われた事がありました。X君には知的な遅れはなく、集中力が短いので短期記憶や空間把握が苦手で、計算したり書いたりすることが困難になっているようです。計算ができないのは本人の努力が足りないせいではないとお母さんに話しました。
また、X君は低学年の宿題がいまだに困難な結果、自分のことを否定的に考えてしまい学習性無力感に苛まれていることも伝えました。そこで、計算ができるかどうかはわからないけれど医療の支援を受けてせめて注意集中の短さが服薬によって改善しないか受診を勧めました。自分の特性について学習するサポートも必要なことを話しました。
実は、以前も同じ話をして、受診を促してみたのですが、受診はされませんでした。お母さんの話によると、低学年の時、学校から同じように促されて精神科医を訪ねたけれども、病院の先生は話を聞いているだけで何もしてくれなかったという苦い経験を話してくださいました。
親にしてみれば、障害が疑われるからと受診を勧められても、そう簡単には腰は上がりません。家の姿と学校の姿も違いますし、なんと話せばよいかもわかりません。勇気を振り絞って病院に行っても、親や本人からの困り感が医師に感じられなければ「様子を見ましょう」と言われるのはよくあることです。
親に強い困り感がない時、学校や施設が受診を勧めるなら、親と一緒に同行する専門サポーターが必要だと感じます。多くの保護者と関わる中で、このニーズは大変高いのではないかと感じています。字が書けない、計算ができないことが病院と結びつくとは普通は考えないからです。
しかし、お医者さんにしてみれば、「外野」は黙れと思うかもしれません。それは、症状(障害)名を背負うのも、服薬の副作用を引き受けるのも当事者と家族だからです。善意とは言え、他者が手伝うのは限度があるという意見もよく分かります。
ただ、眼鏡はかけて見ないと役に立つかどうか当事者には分からないのも事実です。薬とメガネ一緒にするなと怒られそうですが、メガネだって調整していなければ目に害で苦痛しかありません。と考えていると、堂々巡りです。
学校から送られてくる視力検査表や尿検査表等と「専門医にご相談ください」という通知を訝る親がいないように、学習症(障害)についても同じような仕組みにならないものかと思います。
言葉が喋れるからPECSはいらない?
Wさんが、おやつPECSを始めようとするとBOOKを投げて拒否するとスタッフの報告がありました。そして「おやつください」と言えるのだから、もう嫌がるPECSは取り組まなくても良いのではないかという話です。
カードを投げたりBOOKを投げたりするのは、それが出てくると不利益が起こるからです。あるいはそれを投げると要求が叶うからです。カードを投げた時のシチュエーションは他の子がおやつタイムなのに自分はPECSだったといいます。PECSの練習はおやつ食べるための手段ではありません。たまたま、おやつが好きだからPECSの練習に使っているだけです。WさんのPECS導入の理由は、要求を叶えるために大声を出す噛む、暴れるという表現なので、機能的コミュニケーションを教えるためでした。
今回の拒否は、おやつの時間に他の子は自分のお皿からとって食べているのだから私もそうしたいという「以前の」表現だったかもしれません。つまり、まだまだ機能的コミュニケーションは獲得されておらず、カードのやり取りの「形式」を学んだ段階ではないかと思います。叫べばおやつは出てくるのですから、カードが便利だとはまだ感じていないようです。
なんのためにPECSをしているか?言葉が喋れても大人ではなく、冷蔵庫に向かって大声を出しているだけではコミュニケーションとは言えません。言葉をしゃっべているかどうかが基準ではなく、対人機能的に言葉でもカードでも使えているかどうかです。しかし、ブックを投げつけるとは困りました。保護者の同意があるとはいえ、すてっぷ以外はPECSに取り組んでいないという弱点を抱えつつではありますが、エラー修正の良いアイデアを探したいと思います。
家庭環境
子どもの不安症や不適切な行動の理由に家庭環境を要因とすることがあります。子どもの様々な行動の理由には、親や家庭環境が影響していることは当然です。しかし、それを家族のいない場所であれこれ詮索して議論しても子どもの行動が変わるわけではありません。むしろ、自分たちの対応のまずさを覆い隠してしまうことのほうが多いと感じています。
障害や発達、家庭環境などを正しく知っていることはとても重要ですが、問題はそういう背景を抱えた子どもたちとどう向き合っていくかが、サービス機関の役割です。もちろん、すべてが解決するわけではなく、現在のスタッフの力量や現状のサービス環境では困難ということもあります。それでも、障害やハンディーキャップは本人や家族の責任ではないし、置かれた家庭環境も家族のせいにしてもしかたがありません。必要なのは本人にも家族にもどのような支援がいるかということにつきます。通所している本人や送りだしている家族へのリスペクトこそ欠かせないものだと思います。
話がしたい
U君が、話がしたくて友達に話しかけるのだけれども、何度も同じ話なので困っているとの報告がありました。U君は、YOUTUBE等も好きなのですがマニアックな話なのでみんながついていけません。それに、話の展開が彼の興味だけで進むので、話をしているというより、一方的に聞かされている感じでしんどくなるというのです。
何かゲームや作品など双方で共有できる意味の枠組みがあればいいねという提案がありました。けれども、U君はゲームの勝ち負けがとても気になる人で、ゲームは話題にしにくいということで没、作品といっても彼は結構不器用なので物を作ること自体好きじゃないということでした。
それなら、彼が昔興味があった写真はどうかなということで、インスタグラムを使う提案がありました。それは名案だとなったのですが、「いいね」の数を気にしだすと大変そうなので、事業所内に写真コーナーを作ってそれを話題にして話をするようにしようということになりました。うまくいくかしら。
調子のいい時こそトレーニングを
調子が悪いと人をたたいたりして、皆が頭を悩ませているT君が、今日は笑顔でとても調子がいいと報告がありました。「絵カード取りゲームも笑顔で取組んでくれます。スタッフの分も取ろうとするのでまぁいいかぁと取らせてあげました」という報告に、「それってルールを教えるという目標からずれていませんか」と指摘がはいります。これは、スタッフあるあるです。
スタッフを困まらせがちな子どもが笑顔でいると、ほっとしてうれしい気持ちになるのは誰もが同じです。でも、調子のいい時だからこそ伝わりやすいことがあるはずです。私たちは、不適切な行動が起こり始めてから、やれ構造化だ視覚支援だ、応用行動分析だ、要求カードだとあれこれ持ち出しますが、調子が悪い時に絵カードなどを使ったトレーニングがでてくるのは本来のあり方ではありません。調子のいい時こそ、視覚支援や構造化の工夫をしてトレーニングに取り組むべきです。
喉元過ぎれば熱さ忘れるトレーニングは大人の都合だけです。それでは子どもは迷惑です。子どものためのトレーニングをお願いします。
好奇心
S君が「勝竜寺の近くに光秀の時代に構築された『空堀』があって感動した」と教えてくれました。興味のない人にしてみればただの窪地ですが、歴史的好奇心があれば壮大な戦国ロマンが想像できるのです。
案内してあげると言うS君は私をとんでもない方向に連れて行きます。しかし、S君の激しい方向音痴などほとんど気にならないほど、この迸るような好奇心に私はいたく感動します。
やっとの思いでたどり着いた残暑の昼下がりの「神足城の空堀」はひっそりとしていました。目を輝かせてよどみなく空堀の説明をするS君の歴史物語を、私は暑さで軽いめまいを感じながらも心地よく聞いていました。
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神足城の空堀見つかる 京都、改修して勝竜寺城に
2014/7/31【日本経済新聞:共同】
戦国大名の細川忠興と妻、玉(ガラシャ)が新婚時代を過ごした京都府長岡京市の勝竜寺城跡で、築城前にあった城の空堀の一部が見つかり、長岡京市埋蔵文化財センターが31日までに、発表した。
空堀は、地域を支配した土豪「神足氏」が拠点とした神足城のものとみられ、センターは「詳しく分かっていなかった神足城の場所を裏付ける貴重な発見」としている。
センターによると、空堀の一部は断面が逆台形で幅約3.8メートル、深さ約1.5メートル。神足城は一辺約50メートルの方形で、周囲に空堀と土塁があったことも判明した。勝竜寺城は、忠興の父・藤孝(幽斎)が1571年に織田信長の命令を受け大改修しており、藤孝はその際、神足城の空堀と土塁を活用して城の防御を強固にしたと考えられる。
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注意喚起行動
Rちゃんは、いたずらばかり。お水の入ったコップをひっくり返す。プリントをやぶる。食べ物を落とす。その行動の原因は自分に注目して欲しいからという注意喚起行動でした。
困った行動の原因が「注意喚起」のときは叱ったり注意をしたりすることは、その子が求める「注目」という要求が満たされたことになるため、あえて反応を返さずに、サラリと流します。ただ、不適切行動をスルーすると、バースト行動と言って、激しいいたずらにエスカレートしていくので、無視は大変危険です。注意を引きたい時は、いたずらではなく相手の名前を呼ぶ、肩をトントンする、カードを手渡すなどの行動に置き換えるのがセオリーです。
それと同時に、お手伝いや大切な役割を担う活動を通して、「ありがとう」「よくできたね」をたくさん伝えます。いたずらではなく、人に喜ばれることで注目される喜びを感じる困った行動は減っていくというのが行動療法の教科書には書いてあります。しかし、言うは易し、行うは難し。大人の冷静さと気長さが求められます。
余暇を探す
Q君は暇な時間が上手に過ごせません。ブロックを組み立てるとかyoutubeを見るとかキャラクターを並べるとかの興味のあることがあまりないので、大人の注目を集めるようないたずらをします。PCの電源を引き抜いたり、ドアから出たり、仲間の作業の邪魔をします。
余暇の過ごし方は、本人の好きなことを保障します。しかし、好きなことが大人の注目を集めることとなると目が離せなくなります。余暇とは余った暇と書きますが実は大変重要な意味を持ちます。自分の楽しみを実現する時間です。もちろん、対戦スポーツなど人を必要とするものもありますが、基本的には一人で楽しめる活動がないと自立が困難となります。
Q君はロゴや文字などの書写の能力がありそうなので、レタリングやカラーリングの作業が好きにならないだろうかなどと話しています。考えてみれば、本来、余暇の内容は本人が決めるもので、他人が余暇の内容を考えてあげるというのも不思議な感じですが、人がいなくても一人で過ごせるというのは思春期以降の大切な力です。Q君の余暇が見つかるように、彼の強い力を生かせるものを考えていこうと思います。
個別療育型事業所
9月は利用者のモニタリングの時期です。計画した支援計画通りに支援ができたかどうか、その到達と課題を明らかにする会議がたくさん入る時期です。
支援計画に立派なことが書いてあっても、「あれ?こんな支援してないなぁ」ということがよくあります。いくら紙に書いて議論したからといっても、毎日の支援の中ではついついいつも通りの支援を進めてしまうことがあります。これは、生活支援型の療育の弱点です。
毎日対象者を決めて課題に直接迫る個別療育型の支援ではこんなことは起こらないのですが、その分支援に「幅」が出ません。生活型療育と個別型療育をうまく組み合わせていけばいいのですが、一事業所では、スタッフがそんなに器用に立ち振る舞えないのが現状です。
そういう意味で、10月から立ち上がる新事業所の役割と成果に期待が寄せられています。新しい事業所は、個別療育と集団療育が組み合わされています。特に、自分の特性理解や、それに基づく学習方法をスタッフと一緒に考え実践していきます。自分のいいところを伸ばしたいと思っている高学年の小学生から中学生を対象にしています。自学自習のスタイルを作っていくには保護者の方にも協力をお願いすることになります。毎日5名程度の療育を考えています。詳しくはステップまでご連絡ください。
障害観
O君にP君がしつこく乱暴をしたので「だから障害なんや」とO君が吐き捨てた言葉について、スタッフで議論しました。障害は悪いもの、人より劣るものという見方は、言葉で言い聞かせたからと言って本音のところで修正できるものではないなぁという話になりました。
本来、自分の特性である得手不得手への考え方は、家庭や学校で粘り強く取り組んでいくしか方法はありません。算数障害のある子が宿題を電卓でやろうとしたら、それでは苦手なことが治らないと家族に言われ、「やっぱり僕はあほなんや」と嘆いていた話があります。いくら、放デイで「人の力はみな凸凹していて、それが激しい人もいるけど、それは治すのではなく視力の悪い人が眼鏡をかけるように、弱い力を補う工夫が大事で、人と同じように裸眼で努力して見ようとすることではない」と話しても、家や学校で「みんなと同じにできなければ努力したとは言えない」と一蹴されてしまうなら、彼らの優れた力は引き出せません。
でも、考えてみると放デイでも様々な問題を抱えた子が多いので、トラブルが結構起こり子どもらを叱ることが少なくありません。せめて我々が、子どもの優れたところやいいところをいつも言葉にして評価しなければ、O君のように「だから障害なんや」という言葉に打ち勝つことはできないなぁと話し合いました。
ビニールプール
昨日O君の保護者から「昨晩寝てたらエアコンが壊れて熱中症で救急で診てもらいました」と連絡を受けました。もうエアコンがないと京都の夏は越せないようです。
夜中だけでなく、立秋過ぎても昼間の酷暑も激しく、ここは東南アジアか中東かと思わせるくらいの気温で子どもたちはずっと外に出るのをがまんしていました。実はビニールプールの購入は梅雨明けから考えていたのですが、武漢ウィルス予防でご近所の目が気になって自粛をしていたのです。しかし、低学年に一日中部屋の中で過ごせというのも不健康な話なので、遅ればせながらビニールプールを購入しました。
今日も外から嬉しそうな声が聞こえてきます。聞けば、政府は武漢ウィルスを、感染症法上の指定感染症の分類相当の見直しに入るそうです。結核と同じ2類相当からインフルエンザと同じ5類に引き下げる方向だそうです。これまでは、何が何だかわからなかった感染症の実態が、次第に明らかになり適切な予防策になることは良いことです。猛暑はまだまだ続くようなので、水浴びが気兼ねなくできるようになって欲しいと思います。
女子の身だしなみ
Nさんの支援計画の話をしているときに、今後思春期にむけて身だしなみの問題が議題に上がりました。子どもによっては女の子でも身だしなみのことが気にならない人も少なくありません。Nさんも髪は長くしたいと思っているのですが、よく洗えていなかったり、毎日の髪のケアができていないので、スタッフも「長くする前にまず身だしなみを教える必要があるな」と感じていました。
女子の場合、軽度の知的障害があっても障害のない女子と同じように身辺のことが気になることが多いです。しかし、発達障害がある女子の場合、いわゆる「女性らしいふるまい」や、身だしなみや片づけ、人づき合いなどを上手にこなせない場合があります。人から自分がどのように映っているか見えにくいからです。
さらに、第二次性徴によって身体や心の状態が大きく変化しますが、発達障害の子どもにはその変化自体がストレスになります。女性の場合は、月経時に感覚過敏の特性が強まったり、月経前症候群(PMS)の症状が重くなったりする人もいます。精神的にとても傷つきやすい思春期は、日常のちょっとしたつまずきや困難が学校生活への不適応につながることもあります。自分の気持ちを表現することが苦手な発達障害の子どもは、不安やつらさを身体症状として訴える場合があります。
身だしなみの支援策としては、良い例と悪い例が見てわかるイラストや写真などを使って、良い例と悪い例を教えます。身だしなみの整えかたについて、手順表やチェックリストを作成したりします。感覚過敏で、ゆったり服装しかダメな時は、合理的配慮を求めると同時に生徒への理解も進めてもらいます。また、身だしなみに頓着がない時は、行きつけの美容院などを作って、美容師さんを権威のあるプロフェッショナルとして紹介し、トレンド情報などを教えてもらうのも一つの方法として考えられます。
発達障害女子については国立障害者リハビリテーションセンターから簡単なリーフレットが作成されているのでお読みください。
学校お迎えでのおねがい
Nさん、学校のお迎えの時に見通しが持てなかったのか先生の気を引きたかったかのかわからないけど昇降口で座り込んで動こうとしません。しばらくスタッフ待ったのですが、他の子どもを長時間待たせるわけにもいかず、抱え上げて送迎車に運ぶことになりました。そのあとは本人は何事もなかったかのように事業所についたのですが、あまり勧められた支援ではないなと言う話になりました。
学校でもスクールバスに乗せるまでは担任の仕事であるように、放デイの送迎車に誘導するまでは先生方にお願いしたいのです。もちろん、ほとんどの子どもは自分ですすんで送迎車に乗り込んでくるのでスタッフはそれをサポートしています。ただ、不安が強かったり切り替えが苦手な子どもも少数ですがいます。こういう子どもは、それまでの経過がよくわかっている先生方にお願いしたいのです。子どもの身体が小さければ実力行使も可能ですが、こういう子どもこそ思春期に差し掛かって体力もついてくると今度は子どもの側からの実力行使が始まります。
自立心が高まって来る時は大人の一つ一つの指示が気に入らなくなり反発します。その時は「どの靴はいていくの?」等と選択をさせると嘘のように自分で移動できます。なんでもお兄ちゃんのようにできるようになりたいけど「できないかもしれない」という不安が起こる時期では、斜めに構えてなかなか挑戦しようとしません。そんなときは、まずできたことを褒めます。昇降口ではつまづいているけど教室からは一人で来た事をえらいえらいと評価します。あとは、本人次第となりますが決して人と比べてはいけません。やるべきことは分かっているのですから。
それから、障害特性から次の見通しを「消失」することがあるということを念頭に置くことです。せっかく意気揚々と教室からは今日は放デイだと思ってきたけど、昇降口の喧騒で記憶がなくなって、いつもの「スクールバス」に置き換わっている子が少なくありません。そうなると、「何故あなた方は私を放デイに拉致るの?」と誤解します。ワーキングメモリーへの保存が心配な子どもには、自分で本日のお迎えコース写真を自分で選んで昇降口まで運んでスタッフに渡します。そうなると「ご乗車ありがとうございます」とご機嫌の放課後が始まるのです。どうぞよろしくお願いします。
分離不安
昨日は始業式時期のストレスの高さを書きましたが、女子によくみられる分離不安もこの時期に顕在化しやすいです。低学年のKさんも、登校渋りがあり、あれこれ理由をあげるときりがないのですが、不安が大変高いのでちょっとしたトラブルでも行き渋りの原因になります。大人は「また、あとから理由をつけている」と思いがちなのですが、それほど不安なのだという理解が大切です。
発達障害の子どもにおいて、母子分離不安の特徴が見られることがあります。発達障害の子どもは対人関係のあり方が偏っていたリ、ものの捉え方が異なったりするため、障害のない子どもに比べて、極度な不安を感じることがあるからです。
母子分離不安は発達障害の中でも、ASD(自閉スぺクトラム症)の子どもに多いと言われています。ASDのある子どもにおける母子分離不安は、一言で言うと対人関係上の特性が原因です。ASDのある場合、親がいなくても平気という親子関係の希薄さを示す子どもがいる一方、子どもによっては極めて強い不安感を抱き、他の子どもがいるのを嫌ったり、ひと時も母親から離れられないといった神経質、過敏傾向も示す場合もあります。
母子分離不安の対処法は、発達障害が関連していようとそうでなかろうと変わりはありません。信頼でき愛着のある大人がそばにいてやさしい言葉をかけて、子どもの不安を軽減させることです。信頼できる大人との安心した関係を確保したあと、不安を感じにくくするような治療法(リラクゼーションスキル・自律訓練法等)を取り入れます。
母子分離不安が表れたからと言って、すぐさま発達障害だということではありません。母子分離不安そのものは病気ではなく、多くは「一時的に心配ごとがある」というサインだからです。母子分離不安の特徴だけでなく、子どもに他にどんな特徴が見られるのかも把握するようにします。
自立を始めた子どもには母子分離不安が生じます。親から離れ出すと誰もが不安になるものです。そうした、発達過程で生じる正常な母子分離不安も少なくありません。子どもの母子分離不安がどのようなものなのか、どう対処すべきなのか、しっかりコミュニケーションをとって把握します。。
また、甘えだと思って厳しく叱ってしまうのではなく、子どもを認めてあげ、一緒になって不安を取り除いていくことで改善することができます。子どもは安心することで、自立できるようになります。
一方で治療を要する母子分離不安もあります。分離不安のために親子の日常生活が困難であったり、就学期を迎えても不安のために学校に通えない日が続いたりするなど、症状の程度によっては医療や専門家のサポートが必要となる場合もあります。その場合、特別支援に詳しいスクールカウンセラーなどに相談してください。
2学期始業
今日は、支援学校と京都市で2学期始業式です。M君宅から「今日はもう疲れてしまったようで、お昼から放デイ行けないみたいです」と連絡がありました。短い夏季休業でも、子どもによっては、家庭生活から学校生活への切り替え時期は、ストレスが極限に達する場合もあります。
「友達に会えるから楽しみ」「新しい勉強が楽しみ」という子どもがいる一方で、「教室の喧騒に耐えられるかな」「今日も突然の予定変更でしんどくならないかな」等登校への心配事が少なくない子どももいます。
2学期も平常授業になれば7校時で低学年でも授業時間が15時を越えるそうです。発達障害の子どもたちが心配しているのは、授業時間ではなく、休み時間や当番時間です。構造化されておらずイレギュラーなことが起こりやすいからです。休み時間は短くても図書室に行ったりカームダウンエリアを決めておく方が本人は安心できるようです。
大事なことはエネルギーが枯渇するまで無理をさせるのではなく、早い時期からヘルプが出せるように校内の仕組みを作っておくといいようです。本人はいつヘルプを出せばいいのか何がヘルプなのか分からないことがあるので、決まった時間に相談するように決めておくのがが一番いいようです。今日感じた良いことと気になる事を報告する時間です。何もなくても5分間は話していく約束をします。基本は言語ですが、必要に応じてコミック会話などテキストもコミュニケーションに使うとうまく表現できるようです。
興奮している時は文字でお願いします
J君が「赤いヘッドホンの音が鳴りません」と訴えてきました。「うーん、故障かなぁ、他のヘッドホーンでお願いします」「いやだいやだ赤いヘッドホンじゃなきゃ嫌だ―」とボルテージが上がって暑い狭い部屋の中で叫びだしました。J君は普段はおとなしく穏やかな人なのですが、ひとたび怒り出すと大声絶叫モードになります。
困ったスタッフは、いろいろと赤いヘッドホーンが使えない理由をJ君に説明するのですが、要は使えないと言う結論は変わらないし、興奮しているので説明の理解ができないようです。そして、またまた絶叫するという悪循環でスタッフも困り顔です。周囲の仲間もうるさくて迷惑そうにしています。
別のスタッフが付箋に「大きな声を出す人は迷惑なので、帰りは後部座席に座ります。小さな声でお願いします」とJ君との乗車の契約を文字で示しました。すると、一瞬で自分で読んで「小さな声で話します」と小さな声で話しだしました。
子どもが興奮しているときには、あれこれ話して諭すよりも文字にしてあらかじめ契約したことを示して納得してもらうようにしたほうが双方疲れなくていいと思います。ただ、文字で示す時がいつも修羅場と言うのは良くありません。文字が示されたら悪いことが起こると記憶に連合させてしまうからです。普段から文字で説明し、本人にとっていい結果の時にも文字で示しておく必要があります。子どもが怒っている時にはダメージがあっても通じるコミュニケーション手段(ここでは文字)を使います。ただし、「ビジュアルドライブ(視覚優位?支配?)」で書いたように、視覚情報はASDの方には強力な支配力があるので、禁止については多用はしないようにお願いします。
いいところを応援する服薬
最近、小学生のH君やらI君が支援学校から来ている利用者の障害について気になってよくスタッフに質問してきます。裏返せば、自分にも同じような障害があるだろうかという気づきです。質問されたスタッフはできない事だけを述べるのではなく、できることも得意な事もあるということを説明するようにしています。
コンサータ等の服薬機会も気づきのきっかけになります。服薬をしている利用者は少なくありませんが、その服薬がなんのために必要で、いつまで必要なのか、どうなれば必要なくなるのか、その年齢に応じて正しく理解している子どもは多くないと思います。最近の医師の中には保護者にだけでなく子どもにも理解が得られるように説明する医師もいますが多くはありません。保護者ですら、「お医者さんが早口で説明されたけどよくわからない」という人も多いです。発達障害対応の服薬については、まず保護者と当事者が服薬の目的を正しく理解をすることが大事です。
服薬は、生活がしやすくなったという実感を子どもが持てるようにします。その実感を掴んだ上で、生活や勉強がしやすくなるには、お薬だけの力ではなく自分の力でもだんだん解決できる方法を学ぶことなのです。発達障害のお薬は「飲んだらおしまい」ではないのです。むしろ、「飲むことから始まる」のです。
落ち着きがないと、自分を振り返ることも一苦労する子どもたちだからこそ、服薬してじっくり振り返る機会を作る事も服薬のねらいです。やがて自分のことが自分で分かるようになってくれば、「今は集中のコツをつかんだので服薬は必要ないけど、試験の前は必要かも」などと医師と相談できるようになることが大事です。周囲の大人がすべきことは子どもの状態を見て服薬量が多い少ないという事だけでなく、子どもが自分で自分の状態がモニタリングできるようになることを支援することなのです。
学校や事業所の関係者が適切な協力ができるようにするには、保護者の服薬への理解と見通しが何より必要です。子どもは服薬することで「僕は病気だ」と誤解したり、「障害をなくすために服薬している」と誤解していることもあります。そんな子どもには「君のいいところを応援するために服薬は大事なんだ」と説明していくことも重要となります。
PECSのフェイズ2の重要性
京都PECSサークルでマニュアルの読書会がリモートで毎週行われています。会員の中には保護者の方も多く参加されて毎回20名弱の人数で90分ほどかけて開催されています。
昨日は、フェイズ2の箇所の読み合わせをしました。フェイズ1はプロンプターが要求動作の介助をしながら絵カードをコミュニケーター(カードを受け取ってほしいものをあげる人)に渡せば目の前の欲しいものがもらえることを教えます。それができるとフェイズ2は、コミュニケーターが距離をあけて遠くにいても要求カードが渡せるようにします。
子どもは、このフェーズは比較的早く理解してくれるので、私たちは次の要求カードの弁別=フェーズ3aにすぐに進もうとしがちです。しかしマニュアルには延々とトレーニングの深化を行うようにスタッフ・パーティーやお友達とのPECSタイムに取り組むように勧めているのに気が付きました。実はここがピラミッドアプローチ(PECS開発者の教育コンセプト)の神髄ともいえるところなのです。
PECSマニュアルは自閉症の子どもたちがそんなに簡単に機能的コミュニケーションが理解できるわけがないという前提で作られているのです。そして、一人として同じ子はいないのだから同じやり方や同じ時間で同じものが獲得できるはずがないという前提で作られているから、あんなに分厚い冊子になってしまったと思います。
フェイズ2はいつでもどこでも誰とでも「要求」カードが使えて合格なのです。すなわち学校でも自宅でもお友達の家でも、できればお隣さんでも使えることが重要なのです。私たちは、ついついコストパフォーマンスからコミュニケーターとプロンプターに大人を2名も使ったんだからと「厚い手をかけた」と思いがちです。違います。フェイズ2はさらに大人がスタッフ・パーティーを演出して楽しそうに本人が欲しがるものを大人同士でやり取りして本人が要求カードを出すように仕向けなさいと書いています。少なくともあと一人大人がいります。次に子どもも呼んできててスナック(おやつ)タイムやらホビー(おもちゃ)タイムやらを本人の目の前でやって本人も要求カードを出すように仕向けましょうと書いてあります。それを参加する子どもに説明する大人やらガイドする大人がもう一名必要です。
そんなこんなで、フェイズ2は子ども1人に対して3~4名のスタッフが必要になります。それだけ人的コストをつぎ込むのは、単なる訓練場面だけでは子どもは理解しないよ、楽しい場面をナチュラルな生活場面を人工的に作り出して、カードの弁別なんてまだまだできなくていいから、「ねぇねぇ、それちょうだいよ!」と相手にまとわりついて要求カードを手渡そうとする子どもを育てましょうと言いたいようです。金と時間に糸目をつけてはいけないと…。
8/13~8/16夏季休業中
8/13~8/16 夏季休業中です。
新事業所開設
明日から日曜まですてっぷはお盆休みです。なんだかんだと言っているうちに長岡京と向日市は来週水曜から2学期始業式です。
以前から検討していた、新事業所の開設目処がやっとつきました。新事業所は児童発達と放課後等デイサービス事業の多機能型事業所です。
児童発達事業では、母子通園で、就学に向けて発達障害児童の療育と保護者支援を行います。アセスメントを重視し障害特性に応じた行動の支援に保護者の方と一緒に取り組んでいきます。
放課後等デイサービス事業では、主に発達障害の小学校高学年・中学生の学習支援と療育支援を実施します。特に学習障害の方の学び方の支援に力を入れたいと考えています。場所は阪急西向日駅の近くで、利用者の送迎はありませんので、利用者の通所意欲と保護者の協力が必要となります。
開所は10月を予定し、申込など詳しい内容については、来月に正式に発表する予定です。
縦割り集団
子どもの縦割り集団の教育的効果については、多くの先達によって語りつくされています。しかし、今日では地域で生の縦割りの子ども集団を地域で見つけること自体が稀有な時代となってしまいました。学校の中では、人工的に兄弟学級やら交流やらを組織してますが、それも感染予防の昨今ではソーシャルディスタンスの名のもとに取り組みは希薄になっていると聞きます。
学童保育の中ではこの縦割りが、子どもの「管理技術」として利用される場合が多く「ジュニアリーダー」とか「リーダー会議」とか聞くとトラウマで「気分が悪くなる」という大人も少なくありません。後遺症の原因は子どもたちの遊びニーズに基づいた自然な自治ではなく、大人の介入が多かった所以かもしれません。
新しく入ってきた新1年のE君をボーリングゲームにどう迎えるかと言う話を中2のFさんと小6のG君で話し合っているのを目にしました。話の内容はあらかじめ誰が何をするかの役割分担です。普段は大人が仕切って話している内容ですが年少者が入ってきて自分たちで仕切りたくなったのだと思います。きっと達成感があったのだと思います。帰り際にG君が「話し合いができてうれしかった」と珍しく人との関係行動を振り返って気持ちが高揚したことを伝えてくれました。
ボーリング&外食
久々の外出企画でボーリングと外食をしてきました。ボーリングはバンパーをつけてのガーターレスですがそう簡単に得点は上がらないです。小学生なら100点そこそこそこです。でも、最初はレーンが壊れる!と思う位の投球がなんとかスムースに投げられるようになってきました。
投球補助スロープも借りることができたので、D君も自分でボールリターンストックからボールをスロープまで運んで転がすことができました。自立して転がせれば達成感は100倍です。
そのあとは、回転寿司で昼食。20皿も食べちゃう人や、牛カルビ寿司ばかりを6皿も食べちゃう人や、何故か寿司は頼まず巨峰シャーベット一点狙いの人やら、不思議注文も多かったですが、みな満足したようです。若干名消費税を読み違えて予算をオーバーする子どもがいたので、次回は消費税計算付き電卓を持参する予定です。
反抗?
スタッフが「D君は最近自我が芽生えてきたのか、おむつ替えようと勧めるとものすごく怒って反抗します」と報告してくれました。それはどんな時に起こるのか聞くと、音楽絵本を聞いている時や扇風機の羽の回転を見ている時だと言います。そりゃ、怒るでしょうね。
もう一人のスタッフが「オムツと絵本を示して、オムツ終わったらまた絵本していいよと言うと穏やかに受け入れる時もあります」と報告してくれました。それって、自我がどうこうと言っても解決しない問題だという事です。大事なのは見通しではないかなということです。
子どもが言う事を聞かない時の理由として自我の発達を理由にされる方がいますが、自我が発達したら指示に反抗するもので、子ども側の問題だと言っているようにも聞こえます。そうではなくて、指示する大人がこれまで、本人の見通しお構いなしに指示して、本人が何も言わずに従っていたのを、やっと本人が「?」と気が付いたという事です。
言葉が通じにくい彼には、オムツと絵本を順番に示してくれる人には無理やりではないことが分かり、穏やかに対応するのではないかということです。そして、この時期こそスケージュールやワークシステムを教えるチャンスでもあります。絵でなくても2段のBOXにオムツと絵本を入れて上から順に事が終わることを伝えるのです。自我と反抗は決してセット物ではありません。
自立課題
自立課題に多くの子どもが取り組んでいます。自立課題の報告で一番多いのが「Dさん ◇●△ができるようになりました」という内容についての報告です。こちらから聞かない限り最初から最後まで自立的に作業ができたかということはほとんど報告されません。スタッフの関心が自立課題の中身、つまりプットインであったりマッチングであったり分類であったり文字検索の出来不出来だからです。
自立課題は、認知レベルを上げることを目的にした課題ではありません。自立課題の目的は、将来、就労するにしてもしないにしても、人からあれこれ言われて作業をするのではなく、ワークシステムを整えて工夫さえすれば、一人で作業ができる人になってもらうためのトレーニングなのです。
よく、この人は重度だから横に人が寄り添えばいい、そしていつの間にか寄り添う事が重要だと本末が転倒して考えられるようになることもあります。重度の人でも思春期を境に自尊心が芽生えてきます。しかし、自分でできることがなければ自立に向かうための自尊心のエネルギーは、注目を集めようと不適切な行動で人の気を引いたり、一つ一つの課題が「できないかもしれない」と怖くなって大声を出して拒否したり暴れたりする行動に向かってしまう事があります。或いは、全てを人任せにして気力をなくしてしまったような姿を見せる人もいます。
自立課題で最も重要なのは3つです。いつ自分が課題に向かうかわかって始めようとする事。課題はどこまでやればいいか自分でわかる事。課題が終わったら自分で終了して次のやるべきことに一人で向かうことができることです。「一人で始め、一人で向かい、一人で終わって次に向かう」これができれば、その人のできることに応じて仕事量や時間は違いますが一人で成し遂げることができます。
スタッフに最初に話し合ってほしいことは、一人で始め、続け、終われたかどうかです。内容は自立的にできる内容であったかどうかが大事で、前より難しいものであっても一人でできなければその内容は不適切なのです。このワークシステムに適応する力さえ身につけば「ご苦労さま」「ありがとう」「よくできたね」とねぎらう事ができます。このような毎日があってこそ、初めて自尊心は育てられていくのだと思います。自立課題は、一人で自信をもってやれているかどうかが大事なのです。一人でできていない部分があれば、何故できなかったのかどうすればひとりでできるのかをスタッフで話し合うことが大事です。寄り添うというのはお互いが向かい合う関係ではなく、同じ方向を見て並んで歩む関係だと思います。
チューペットと山登り
休日プログラムになると夏の午前中は山登りをします。歩行不安定な人や低学年は麓の光明寺を散策します。山頂の「第2鉄塔」までは片道40分ほどかかりますが、たいていは中間の「分岐点」まで20分歩いて登ります。休憩を入れたら往復1時間程度の行程です。
山登りと言っても、「分岐点」まではコンクリートの作業道を上がっていくだけなので大したことはないのですが、汗をかいて登った後の山風が心地いいのを感じて欲しいです。と、子どもたちには勧めても「うざい」「暑い」「めんどい」と一蹴されます。
それでも、山登りの後のチューペットの味は子どもたちとも共有できます。キンキンに凍らせたチューペットを2つに折って分け分けし合って頬張るあの共感性は格別です。PAPICOのモソッと横に引きちぎる分割感よりチューペットのパキンと割れる潔さ、PAPICOの終始シャーベット感よりチューペットの最初のカチカチ感の方が、皆に愛されています。
終業式
今日は、長岡京・向日市の終業式。お迎えに行くと先生方みんな嬉しそうに子どもたちを送っています。感染予防と度重なる日程変更の中でようやくたどりついた1学期終業です。ただ、学校が平常通り授業をしたのは2か月もなく通常の半分くらいの授業時間だったと思います。感染予防のため行事もなくプール授業もなく、子どもたちは楽しいかなと思うのですが、友達がいるから楽しいといいます。対人関係の苦手な子どもは、運動も演奏も話合いも遊び時間も「蜜」にしない全体への配慮があったから登校できたかもといいます。
京都市と支援学校はすでに8月1日から夏休みに入っています。大山崎は7日が終業式。長岡京・向日市はお盆をはさんで2週間後19日に2学期始業、続いて支援学校・京都市が24日から最後に大山崎が26日からです。お休みくらい統一してよと言うのが放デイの本音です。というのも休業中のプログラムはスタッフにとっては結構過酷なのです。
9時半から各家庭にお迎えの車が回り、10時からお天気が良ければ山や公園に行きお昼になっていったん事業所に戻ってお弁当を食べて最高気温に達する頃の14時頃からお天気がいいならもう一回外出で公園で水遊びか室内遊びなどをして、終了が16時過ぎです。1回目の送りが終了するのが17時頃、延長で残っている利用者は18時過ぎから2回目の送りで全て完了するのが19時頃です。通常はこの日程が猛暑の中30日続くわけです。今年はそれがばらばらと20日間続くので子どもの生活リズムを整えにくいのです。
長期休業中で一番大事なのは、放デイでも家庭でも生活リズムの確立です。このリズムでお互いの息が合わないといろいろと各人が抱えている問題が顕在化してくるのです。がんばります!
周知の事実
スタッフのCさんが「子どもたちが食事中しゃべりすぎます」と言われたので、みんなが「?」となって、食事中にこどもはおしゃべりするのが当たり前だし、不注意な子どもの集団ならなおさらお喋りなのは仕方がないと言う反応でした。
テレビを見ている人ならすぐに「武漢ウィルス感染予防は食事中の沈黙が大事」とわかるのですが、若い人はテレビはそんなに見ないのです。無症状者の検査で陽性反応が出ても「感染者数がまた増えた」と毎日煽りまくるテレビからの「不安の感染」は、視聴していなければ「感染」しません。だから、予防が大事と言う意味がすぐには伝わらず、食事中おしゃべりが止まりそうにない子どもに「マナーとして注意してほしい」と伝わったのです。Cさんの真意は、「感染拡大中」は食事場所を分散して、壁に向かって食べさせたいという事でした。
これは実践現場ではだれにでも言えることですが、本人が当たり前だと思っていても周囲の人は必ずしもそうは思っていないことがよくあるのです。それを放置しておくと、組織内がだんだん疑心暗鬼になってしまうので、小さなことでも違うなと思った事は言いやすい職場づくりが大事なのはいうまでもありません。ただ、その時に違う考えが存在することも享受しなければなりません。
テレビ等大メディアが流す情報の信頼性が問われている今、テレビが報道しても誰もが見ているわけでも信じているわけでもないという事が、当たり前だと考える心得が、めんどくさい話ですが必要なようです。
課題分析・機能分析
Bちゃんにどのようにすれば線の中に色を塗ることが指導できるかという質問がスタッフからありました。スタッフが教えようとしているのは、ハートのマークに線をはみ出ずに色を塗って欲しいということです。「線を太くしてみたらどうか」「線を物理的に超えないように高くしてはどうか」「線の外は色がぬれないようにハートマークを切り出して色を塗らせてはどうか」といろいろ考えました。
対象者が目標を達成するために、スモールステップで行動を考えていくことを課題分析と言います。課題を順番に小分けにして教えることは支援者の工夫やアイデアが大事です。課題分析ができたら大事なことはあと一歩で完成するところから取り組むことです。つまり完成形を知ってもらうことです。それができたらもう一つ前から取り組むようにします。大人は一番初めから取り組ませようとするものですが、それでは目標が遠すぎることが少なくないからです。これをバックワードチェイニング(逆行連鎖化)といいます。身辺自立課題などではよく使う手法です。ズボンを膝まではあげておいて後を子どもに任せるやり方です。
ただ、道具や教材の教え方の工夫だけでなく、どうすればBちゃんが「やったー」「またやってみたい」と思えるかです。これを機能分析といいABC分析などが知られています。このブログで機能分析をしつこく取り上げているのは、子どもがその行動を利得に感じているかどうかが一番大切なことだからです。いくら上手に教えてもまた自分でやろうとしないなら再現性がない支援なのです。どうしても、我々は手元だけを切り取って考えてしまいがちです。子どもの行動を変容させたいなら、この両者の分析が大事なのです。
我慢をしてルール通りに参加する
ボーリングゲームでA君が負けるのが嫌で残したピンを手で倒したので、倒れるまで投げるように支援したという報告がありました。それは狙いが違うのではないかという話し合いになりました。
負けるのが嫌でズルをしてしまうことについて、その場で指摘すればきっとA君はひっくり返って怒るかもしれません。そして、それは適切な支援とはいえません。だからと言って、何回投げてもいいというのでは何が教えたいの?ということになります。
要は、A君が少し我慢をしてルール通りに参加することが「一番」なのだと教える工夫が必要です。まずは、A君とゲーム前に取引をするのはどうかと言う意見がありました。負けてもズルしなければ、A君の好きなビデオをいつもより10分多く見られるとか、大好きなオレンジグミを10個追加など契約をして臨めばどうかということです。そして、ルールを守った手柄に「えらい!すごい!日本1!」と褒めたたえて、やがては賞賛だけで契約が成立するようにならないかという話をしました。
ただ、ルール遊びが楽しめる小学生同士の課題というならまだしも、青年期になっても負けると嫌な気持ちになると分かっている人に、敢えて勝ち負けゲームを提供するメリットは無いと思います。ならば、こんな話し合いは必要ないと言われそうですが、二者択一のマニュアル対応ではなく、利用者をリスペクトした支援とは何か考え合うプロセスがスタッフには必要だと思うのです。
トイレ問題
帰宅準備をするなど、行動を大きく切り替える際にASDの人たちの中にはトイレなど静かな場所で行動を切り替える準備をする場合があることを以前書きました。「席をはずすのはいけない事か?07/03」や「トランジションカード 07/16」 で話題となった彼は、帰りの促しをすると声掛けだろうが、スケジュール(ワークシステム)だろうがトイレに入ってしまうというのです。
そこでスタッフから、トイレにタイマーを持ち込むのはどうか?5分前くらいからトイレに行かせてはどうか?と提案がされました。「家でも出かける前には長くトイレに入っている」という家族からの聞き取りも示されました。トイレは公共の場所だから独占させるのは良くないと言うのは当たり前です。ただ、当たり前だからといってタイマーをトイレに持ち込むだけで本当にいいのかということです。もしタイマーが通用しないならあとは実力行使しかありません。
その前に、いくつか工夫をして、彼との間で平和的に折り合いをつけるチャレンジがあってもいいのではないかというところで落ち着きました。さてどうなるやら、また報告します。
ビジュアルドライブ(視覚優位?支配?)
魚釣りゲームにあまり気のりしていないZ君にハッスルしてもらおうと、魚の代わりにZ君の大好きな「でこぼこフレンズ」のキャラクターを釣る設定にしました。確かに、でこキャラを釣りつくすまではZ君張り切りましたが、他のスターウォーズキャラや戦国キャラには見向きもせず、「はいおわりー」とばかりに早々とゲーム離脱。以前は気のりはしなくてもたくさん釣り上げようと最後まで参加していたのにと報告がありました。
ASDの人は視覚が優位なので、聴覚から入力した情報よりも視覚から入力した情報の方が優位に働きます。「たくさん釣りましょう!」というスタッフが話した情報よりも、大好きなでこぼこキャラが缶釣り対象となっているので誤解が起こり、「フレンズを全部釣って終わります」という情報に塗り替わってしまったのでしょう。これをASDのビジュアルドライブと言います。
確かに視覚で情報を示した方がわかりやすいのですが、逆に言うと示し方が不適切で、その視覚情報が強すぎて他の情報が吹っ飛んでしまうこともあります。「~してはいけません」を絵にかいて×マークで示すことがありますが、この×マークばかりを示して遠足ルールを説明した結果、「×ばかりだし、もう遠足行かない」と泣き出す子がいるくらい強烈な刺激になることがあります。ビジュアルドライブは、視覚的刺激に支配されてしまうという意味もあるので注意が必要です。
行こうか行くまいか 揺れる心
Y君がゲームをしているときのことです。ゲームのルールにあれこれ注文を付けたり自分の順番を決めたり要求は多いのですが、はたと自分の順番が回って来るとしり込みして「アトニスルー」「ヤラナイ」と引いてしまいます。
子どもの価値観にも発達段階があり、「できる」「できない」に非常に過敏な時期があります。「できるようになりたい」「うまくなりたい」という願いが強くなる時期は、裏返せば周囲の注目が集まったりすると「できないかもしれない」という不安が大変高まる時期でもあります。やがて、小さな成功体験を積んでいくと「もうちょっと、もうちょっと」と自分を励ます力がついていきます。そうすると「まぁまぁ」という中間の評価が受け入れられるようになっていきます。
やってもやっても達成感がない高すぎる課題にさらされていくと、「できないかもしれない」思いが強くなります。「おしかった」「もう一息」の体験を重ねることで、「できるかもしれない」気持ちが育つと思います。
フラッシュバック
X君がしくしく泣いています。どうしたの?と聞くとPECSで「悲しい」「泣いています」と叙述のフェイズ6でしっかり応えてくれました。ただ、原因が思い当たりません。PECSのフェイズ6は叙述ですから、「なぜですか」にも対応はしていますが、ASDの彼にそこまで深掘りして叙述を求めることはないので応えてはくれません。
ただ、これと言った理由がないのかもしれません。感情のスリップ現象とかフラッシュバック現象などと表現されますが、言葉のある高機能の人でも昔感じた負の感情が何かの拍子にわっと押し寄せることがあるといいます。それは酷くいじめられたり、嫌な事や意味の分からないことを強く押し付けられた時の感情だと言います。従って、周囲の人は、そっとしておくしか方法がありません。
「悲しいです」とPECSで教えてくれたX君は、今日もやっぱりトイレで気持ちを切り替えてから、10分後鼻歌を歌いながら帰りの車に乗り込みました。
消費税電卓活躍中
本日は、祝日なので昼食をはさんでの休日活動です。お弁当を持ってくる子や、近所のコンビニでお弁当を買う子もいます。小学生は、ほぼ500円以内の1品で済むのですが、高校生となると良く食べるので、「1000円まででお願いします」と連絡帳に書いてあります。
W君は支援学校の高校生です。先日は、消費税分がわからなくて1000円オーバーだったので、今回は消費税電卓を練習して万全の態勢で臨みました。お弁当と200円おにぎり!!の価格を足して消費税ボタンを押して1000円以内で収まりました。
GO TOトラブル?
今年は、近隣に遊び場にできる水場がありません。昨年は重宝した、長岡京市のじゃぶじゃぶ池も閉鎖中です。Go To トラベルと山へ海へと政府が誘っているのに、各自治体の公園課の頭の中は感染源になったら困る、クラスター化したらどうしよう、ということばかり考えているのでしょうか。ちなみに亀岡市は亀岡市民のみ亀岡市立プールに入れるそうです。亀岡市長偉いです!
警戒が必要なのは70歳以上のお年寄りであって、0歳から30歳までの人の中では28歳の力士を除いてみな軽症で完治していますし、そもそも無症状の方がはるかに多いのです。感染のリスクは極めて低い子どもたちなのですから閉鎖することはないと思うのです。これでは遊び場のGO TOトラブルです。どこか涼しい水場はないものでしょうか?これでは子どもの楽しい夏の思い出が半減してしまいます。
リモートで勉強会
PECSについてレベル1の研修は受けたけど、それっきりマニュアルを開けて読んだことがないという人は少なくありまあせん。なにしろPECSのマニュアルはA4版で400ページ、厚さ2cm程あって2kgほどなので重くて持ち歩くのが苦痛な代物です。その結果、どうしても本棚の奥へ奥へと鎮座させてしまうことになります。できれば、PDF版とかkindle版になって、お見本の動画も添付されるマニュアルになってタブレットPCに収まればありがたいのですが、それはまぁピラミッド社にお任せするしかありません。
そんなわけで、マニュアルなんか最初から最後までまじめに読んだことがないという人も含めてzoom読書会をすることになりました。主催は京都PECSサークル、読書会の座長はPECSマニュアル監訳者の門眞一郎先生で、20人程度のメンバーで毎週月曜31週に分けてリモート研修で開催されます。すてっぷからも保護者の皆さんやスタッフが参加しています。読書会は、少しづつ読み進めて、切りのいいところで参加者の質問や意見を交流するというものです。機会を見てまた報告できたらと思います。
週間熱中症情報
今週は、明日明後日の厳重注意を除き全て危険域です。今も36度!!昨年の今頃も暑い暑いと書いていたのを思い出しました。さて明日から普通なら夏休みでしたが、長い春休みのために、学校は通常営業です。
ただ、京都市は明日で給食が終了ですから、残る10日間は短縮授業です。8月1日からは府立学校が夏季休業にはいり、続いて長岡京向日市が5日から大山崎町が8日からとばらばらと夏季休業入りです。そんなに地域によって勉強する量が違うのかなと思ったりもしますが、夏季休業の少ない学校は、冬季休業や春季休業を減らすのだろうと思います。
そんなわけで、昼間もばらばらと子どもが帰って来るので、これから10日間は遊ぶにも落ちつかない日程となります。熱中症には十分注意すると言っても、締め切った部屋でのエアコンは3密ですし、さすがにこの暑さでは窓を開けると暑いままだし、どーするかなーと思案中です。人のいない涼しいところありましたらご紹介ください。Go To 放デイ!
電池が切れて困っています。
V君が事業所のカウンターの中に入って頭を叩いて自傷しているのを見つけました。どうやら、大好きなメロディー絵本が見当たらないので探し疲れて頭を叩いているらしいので、メロディー絵本を一緒に探して見つけました。V君にっこり。ところが残念なことに電池が切れていたらしくボタンを押しても押しても音が出ません。失望したV君は再び頭を叩きだしました。
ここまで、ありきたりの文脈で書いたように、多くの人は、このV君の行動を見て疲れ果て失望して頭を叩いていると理解しますが、全然違うのです。頭を強く叩けば人が注目してくれます。そして、あれこれとV君の欲しいものを考えてあれかこれかと聞いてくれます。V君は欲しいものが見つかるまで頭を叩き続けます。音のなる絵本が欲しいと表現できなくても、せめて、「助けて」という機能的コミュニケーションが取れれば、頭は叩かなくて済むのです。V君はPECSのフェイズ3a「必要カードの選択」に取り組んでいますが、助けてカードが弁別できるようにトレーニングする必要があります。