今日の活動
「わかってくれた!」
支援学校高等部のTくんは表出が弱く、自分の思いが伝わらないと注意喚起行動や他害行動が出ることがありました。すてっぷでは絵カードコミュニケーションの練習に取り組み、トレーニングの場面(おやつ時)では自分のほしいものを要求できるようになりました。ただそれ以外の場面では自発的な表出が難しく、『暑い』や『うるさい』などTくんが苦手な状況になったときでも、自分からは伝えられません。職員が「暑いね」「うるさかったね」と声をかけると、Tくんは「暑い」「うるさい」と返事をして、共感してもらえたと落ち着くのですが、自分からしんどさを伝えることが当面の課題でした。
また昨年度から、Tくんは選択の練習に挑戦しています。以前も取り組んでいたのですが、『どっち』という言葉にこだわりが出て、選択の場面になると「どっち!?」と叫んで選択できないという状況が続きました。そこで選択の練習はいったん控え、こだわりが薄くなってきたころを見計らって、練習を再開しました。選択の練習は、休憩時間の過ごしを選ぶことに取り組んでいます。休憩時間になったら、スケジュールで休憩の代わりに貼ってある『えらぶ』カードの色を見て、同じ色の選択ボードから『ごろん(横になる事)』や『かるた』などのしたいことを選びます。したいことを選べる候補やタイミングを明確にすることで、自分で選んで向かえるようになってきました。
この選択の練習を続けてきたことで、伝わった実感が積みあがってきたのかもしれません。次第に、表出できる種類や機会が増えてきました。そして先日、なんと自分から『しんどい』カードを職員に渡し、「しんどい」と言ったのです! 熱を測ると37度以上で、その日は保護者の方がお迎えに来ることに。保護者の方といっしょに帰るTくんに、職員は「しっかり伝えられたね」と褒めて見送りました。
今では「うるさい」「あつい」と自分から伝えるようになってきたTくん。Tくんとずっと絵カードコミュニケーション練習に取り組んできてよかったと職員みんなで振り返りました。まだコミュニケーションパートナーは限られていますが、今後誰にでも伝えられるように、練習を続けていきます。
じゃんぷ夏祭り!
じゃんぷは今週夏祭り期間です!
去年は今年のじゃんぷ夏祭りは「魚釣りゲーム」をします。
ブルーのプチプチシートの上に魚を模したカードをたくさん置き、ビニールテープや送風機を使ってイソギンチャクや海草、風を表現しました。子ども達がじゃんぷに来た時に「楽しみー!」となるように工夫しました。
釣り竿作りから始めましたが、苦手な作業にも関わらず魚釣りゲームが楽しみなのでどの子も一生懸命三つ編みをしてくれました。
魚釣りゲームはすごく盛り上がり、「もう一回したーい!」という声がたくさん出てきました。
今日を含めてあと2回夏祭りをします。最後まで楽しもう!
わり算の筆算は
わり算の筆算は手順が処理が多く、悩みやすい単元です。
わり算の筆算は「たてる、かける、ひく、おろす」の4つの手順を基本で考えます。
①たてる②かける③ひく④おろすという手順をラジオ体操のように大きな動作で覚えていきます。①たてるのときは大きく上に手を上げ、②かけるのときは腕でXを作ります。③ひくのときはひき算のマイナスを表すように腕を横に伸ばし、④おろすときは下に向けておろします。
動作の際には必ずそれぞれの動きの言葉を「たてる!かける! ひく! おろす!」というように唱えます。
手順が複雑になればなるほど学習が苦手な子どもは問題を解くまでの途中でパワーを使ってしまい,疲弊ばかりしてきます。上記のように机上の学習だけでなく,少し体も動かしながら取り組んでみてもよいかもしれません。
(参考・引用 「子どものつまづきからわかる算数の教え方」 監修:平岩幹男 著:澳塩渚(合同出版) 「小学4年生までのつまずき総ざらえ算数レスキュー隊」(岩崎書店)
位取り表
4年生の算数で「一億を超える数」という単元があります。この単元では桁の大きな数を扱います。
桁の数が膨大になり、情報の処理が追い付かなくなることがあります。また、「数字に直しましょう。四十兆七千百八…」といった問題で「漢字を数字直す」→「桁を整理する」の処理の中で混乱し、苦手意識を持つ子どもも少なくありません。
最初は「位取り表」を使って、そこに一つずつ書き込みながら問題に取り組んでいきます。視覚的に情報を整理しやすくし、位取りがしやすくなっています。
こういった素敵な教材は他にもたくさんあります。筆者おすすめのサイトのリンクを下に貼ってあります。興味のある方はぜひ見てみてください。
なんで出来ないんだろう
ネガティブな話題です。
4年生のI君が「なんで僕はみんなと同じように漢字が読めないんだろう」と話してくれました。彼は読み書きが苦手なことと、中々覚えることが難しいことがあります。
子どもらしく、明るい子でじゃんぷの学習の中で漢字の読みをしても「わかりません~!」と言っていましたが、ふとそのようなことを言ってくれました。
学習が苦手な子どもでも年齢と共に周りを見る力はついてきます。さらに小学校の中学年は大人よりも子ども同士のグループを優先する「ギャングエイジ」という時期や、高学年だと周りと自分を比べることも増えてきます。
どこまで行っても学校は学習をする場です。子ども達はそこで半日以上を過ごしています。子ども達の生活の半分は学校なのです。当然が学習面を気にします。それは子ども達にとってどれほど重たいものでしょう。学習に課題を持つ子ども達にとってはそれが劣等感に繋がります。
最初の話に戻りますが、筆者は「ここで〇〇君の得意な力(聴覚から情報を処理する力)を使って漢字を覚えたり読めたりするようにしてるんだよ」と、薄っぺらい言葉しか出せませんでした。
自信を持って学習支援をしているつもりですが、本気で悩み、壁に当たった子どもに対してこんなに薄い言葉しかかけられないのか、と情けなくなりました。このような時どんな言葉をかけたらよいのか、正解がわからないですね。
興味の仕掛け
前回のブログにも書きましたが、じゃんぷでは七夕飾りを飾っていました。子ども達が短冊に思い思いのお願い事を書きました。
本物の笹を使いましたが、「リアルさ」は子どもの興味を惹きつけます。玄関に入ってきた時に「なにこれ~!」と子ども達は目をキラキラさせ、興味を持ってくれました。緑のビニールテープを使って笹に見せかけてもよかったのですがやはり本物が良い、ということで笹を準備しました。
ただ全ての活動で本物を用意できるわけではありません。今年のじゃんぷの夏祭りでは「お菓子釣り」をします。ただビニールプールに水を入れてお菓子を浮かべるわけにはいきません。
子ども達に興味を持ってもらうためにどのような工夫をするのか、考えています。夏祭りの週が終わったらこのブログにも載せますね。
ある学校の特別支援学級の取組でも、渡り廊下いっぱいに飾りをして、ホンモノの季節感を全校に発信し、子ども達の自信につながる体験をしているところがありました。
七夕
筆者がまた夏風邪にかかってしまい更新が滞ってしまいました。どれだけ医者にかかっても「重い夏風邪ですかね」としか言われず、薬を飲んでも一向に回復しないのは怖いですね。
さて、夏と言えば七夕です。じゃんぷでは毎年短冊に願いを書いて笹に飾っています。じゃんぷの職員の知り合いに笹をくれる方がいるので、本物の笹を使って七夕飾りが出来るのは雰囲気が出、子ども達も喜んでくれます。
読み書きが苦手な子が多いので、願いを書く時もあまりくどくどと長く説明はせず、来所したときに笹と短冊、筆ペンを置いておき「短冊に願いを書いてね」の一言メモだけ書いておきます。
その場ですぐに書けるように仕掛けをしているわけですね。形式ばった形だと「書かなきゃ!」と少し構え、しんどい気持ちが出てきてしまいますがラフな形にし、すぐに書いて飾って終わり!という形にした方がよいのでしょう。
今年もたくさんのお願いを書いてくれました。なんと児童発達で来た未就学の子どもも興味を持って書いてくれました!みんな、叶うといいね!
垂直と平行
4年生の子ども達は算数で「垂直・平行」を習っているところです。
そもそも「垂直」「平行」という言葉自体子ども達にとって身近な言葉ではなく、頭の中に入りにくいものです。読み書きが苦手な子どもにとってはさらに難しいのかもしれません。
今回は図に示し、「垂直」と「平行」のヒントカードを出して問題を解きました。それを続けて定着が出来る子もいますが、それだけでは中々定着が難しい子もいます。
じゃんぷに通うO君が中々覚えれず、どうしようか、と悩んでいる最中です。Y先生とも相談し、「O君は昆虫が大好きだから垂直と平行を昆虫に例えてみてはどうか」となりました。
カブトムシの角を垂直、クワガタのハサミを平行と例えて、それをヒントカードにしようかと考えています。
さて、これが有効かどうか!O君にとってわかりやすかったら、と願っています。
小6息子テストで70点で「満点やで!」と笑顔…その理由に絶賛の声 先生独自の採点に「個に応じた指導」「すてきな配慮」
小6息子テストで70点で「満点やで!」と笑顔…その理由に絶賛の声 先生独自の採点に「個に応じた指導」「すてきな配慮」
上のニュース記事は、書字障害の子どもへの配慮として、国語テストの漢字を書く部分はやらなくてよいことにし、70点満点のテストでやった、という記事です。
この子どもは漢字を読むことは出来るが自分が書くときに漢字の形を覚えることが難しく、漢字が出てこないのでしょう。おそらくひらがなカタカナでも相当苦戦したのだと思います。
最近は高校受験、大学受験でも合理的配慮としてタブレット端末を使って問題を解くことが出来るシステムを導入しているところも少なくありません。ただテストをするのではなく、子どもにとって何が大事なのか、どんな力をつけることが大切なのかを考え、既存のテストでも少し形を変えるということを柔軟に出来る教員が増えていくといいですね。
人差し指は『もう1回』
支援学校小学部のSくんは、すてっぷでPECSの手法での表出トレーニングに取り組んできました。おやつや遊びでほしいものを伝える練習から始め、公園ではブランコ遊びをするときには「押して」、公園から帰りたいときは「てをつなぐ」カードを渡すなど、職員とコミュニケーションを取ってきました。
そうして伝わったという実感が積みあがってきたおかげか、日常生活の中で手ぶりや行動での表出がだんだんと増えてきました。以前は拒否のサインと言えば寝転ぶことが多かったのですが、最近は手をパーにして『バイバイ』と同じように左右に振ります。よく見られるのが送迎時で、車のソファが心地よいSくんは家に着いても『降りたくない』と手をバイバイします。そして続けて人差し指を突き出してきます。これは『もう1回』のサイン。実際にこのサインが出た時、職員が「じゃあ友だちを先に送ろうか」と言って、一緒にもう1回ドライブしてから帰ってくると、今度はすっと降りることができました。
また先日、Sくんが公園から帰ってきたときのことです。スケジュールでは次が自立課題で、その次がおやつになっていました。ところがSくんは自立課題のカードを自分で外し、おやつを次に貼り替えたのです。それを見た職員が修正し、「自立課題ができたらおやつだよ」と伝えました。するとSくんは『はい』と言わんばかりに手をパーにして上げました。そして自立課題に取り組み始めました。
いろんなコミュニケーションが生まれてきているSくん。どういう表出なのか分かれば、絵カードでの表出に変えることで、誰にでも伝わるようにすることができます。ですが、どんな形であれ表出してきたらまずは受け止めること。Sくんが自分から表出できたことを褒め、どんどんコミュニケーションできる機会を増やしていきたいと思います。
「○○ありますか?」
リリアン編みにチャレンジ(2022/8/2)で紹介した支援学校高等部のRくん。利用日に少しずつ取り組み、1mほど編んで筒状の生地編み物を作りました。それからまた新しく、リリアン編みを開始したのですが、前とは比べ物にならないほどのスピードで、もう2m以上も編み続けています。これにはとある理由が。
もともと車が大好きなRくん。以前からも、家に帰るときにこの車に乗りたい!と「ノアありますか?」と職員に尋ねることがありました。そしてRくんがリリアン編みにチャレンジしていた昨冬、すてっぷの送迎車として新しくルーミーがやってきました。さっそく興味津々のRくん。「ルーミーありますか?」と職員に尋ねます。このときのRくんはリリアン編みや作業課題に毎日取り組んでいたものの、切り替えが悪かったり手が止まったりすることがありました。そこで職員は、トークンエコノミーシステムの目標にルーミーに乗れることを設定し、そのためにリリアン編みや作業課題にがんばろう!と提案しました。
すると効果てきめん! Rくんはしっかりと目標を持ち、スピーディーに取り組むようになりました。切り替えよく課題に向かい、手が止まることもほとんど見られません。最初は苦手だったリリアン編みの毛糸のセット。職員に見本を見せてもらいながらも「いーやー」「てつだって」と職員にセットしてもらっていました。ところが編む回数の目標も増えて、早く取り組みたいRくんは職員にセットしてもらうよりも自分でセットしようとチャレンジ! 職員に教えてもらいながらだんだんと自分でできるようになり、ついにできたときは「やった!」と喜んでいました。
今では自分で次々と毛糸をセットし、一巻きするごとの回数も自分でペンを使ってチェックし、確認できるようになったRくん。課題が終わったらトークンシールをもらい、喜んで表に貼っていきます。表が貯まったRくんは念願のルーミーで帰宅。満足しながらも次の目標もルーミーに乗ることを選んで、日々の活動を頑張っています。やりたいことを要求できたRくんに、すぐにトークンエコノミーシステムで支援をしたことで、Rくんは自発的ながんばりを見せてくれました。子どもの要求は最大のチャンス、すかさず支援していきます。
イライラした時の対処法
支援学校から帰ってきた高等部生のNくんが職員に声をかけました。「もんもんと(イライラ)していることがあるんだけど」。実はこの日の前日、学校で嫌なことを言われたそうです。中学部の時も嫌なことを言われたことを職員に相談していたNくん。当時のことを思い出したようで、「(中学部のときの)○○さんといっしょかな」と尋ねてきました。職員は気持ちを受け止めながらも、「今日の担当の先生(すてっぷ職員)は誰かな」とNくんと一緒に確認。この日のNくんの担当職員はOさんでした。Oさんは「あとで話を聞く時間を取ります。相談したいことをノートに書いてみる?」とNくんに伝えました。Nくんは「わかった」と答え、ノートに伝えたいことをまとめ始めました。
後日このことを共有した別の職員はNくんの成長に驚きました。昔のNくんはイライラしたことがあっても、素直に相談することは難しかったのです。でも自分の気持ちに気づいてほしいと友だちや職員にアピールするために、ものに当たるなどの不適切行動につながってしまいがちでした。そのNくんが落ちついて相談があることを伝え、職員を待ってから話すことができたのです。さらに驚いたのがノートのことでした。
実はNくん、この数週間ほど前から自分のノートを持ち、自分で記録を書き始めました。きっかけはお母さんが「何があったか忘れないように書いてみたら」とアドバイスしてくれたからだそうです。そこには、自分のできごとや大人からのアドバイス、そして次はこうしようと思っていることなどが、きれいに書かれています。それも時系列がしっかりと整理されて、他の人から見ても分かりやすくなっています。
ノートに話したいことを書き終えたNくん。Oさんの手が空いたのを見計らって、「今、話していいですか?」と尋ねました。Oさんは「いいよ」と答え、Nくんといっしょに机につきました。Nくんは手帳を開き、書いた文字を指で押さえながら、何があったかを話してくれました。自分で書いて整理してから職員に相談できたNくん。本当に素晴らしい成長を見せてくれました。
特別支援学校
先日、向日ヶ丘支援学校の学校説明会に行きました。筆者は小学部のみの参加でしたが、今まで具体的に知れなかった部分が知れたように思えます。
ここに通う子ども達の姿は見ていても、学校の中でどんな勉強をしているのか、活動をしているのかまでは知りませんでした。また、児童発達等の福祉の視点と、学校の学習が繋がっているような活動がなされている、ということに気づくことが出来ました。
地域の小学校の特別支援学級で取り組むには難しい学習の方法であったり一つのことを膨らませていき、教科の学習に繋がったり社会性の学習に繋がったりなど、見てて面白い取組がたくさんありました。
教員時代に支援学校に研修に行く機会があまりなかったので、どれも新鮮な気持ちで見ることが出来ました。
何よりも子ども達が学校でも楽しそうに活動をしている様子を見れたころが一番の収穫でした。
作業療法士の視点
「一般社団法人 奈良県作業療法士会」に載っていた一般向け冊子「子どもの育ちを応援する”作業療法士の視点」を紹介します。
「幼児期編」と「学童期編」の2つあり、どちらも大人から見た子どもの困った姿について書いています。それについて感覚機能や運動機能、心理機能など作業療法士ならではの視点から困った行動についての要因や支援が書いています。
学校現場でここまでの視点を持って子どもを見ていることは少ないでしょう。(そもそも専門分野が違うのでこれを教師に勉強しろ、というのもまた違う気もしますが。)ただ知っておいて必ず役立つ冊子だと思います。保護者だけでなく、教師など子どもに関わる仕事に就いている方にぜひ読んでほしいですね。
調子のいい時こそ支援のチャンス
先日のブログ(「子ども達の変化 フィードバック 投稿日時 : 05/31 」)で少し書きましたが、子ども達が良い変化を見せ始める時があります。
子ども達の課題を感じた時、それをどのような支援をしたらそれが解決できるのか、或いは少しでも軽くできるのかを考えます。それぞれの子どもの得意不得意を見ながら支援を計画していきます。
子どもが課題のある姿を見せている時、試行錯誤しながら支援を続けていきます。ただ問題がある時があり、少しその課題がなくなった姿を見ると続けていた支援もパタッとやめてしまうことがあります。
子どもが良い姿を見せた時こそが支援のチャンスです。じゃんぷに通う子どもの中に少し言葉遣いが荒い(乱暴な)子がいます。(本人に悪気はないですよ!)「誤解されるよ」と言っても意味がよくわかっていないので「〇〇します、と話します。」と続けてきました。
その子は自信のついた学習は自分で進めたい、という気持ちがあります。そういうときも「もう教えんといて!自分でやるわ!」と少し乱暴な口調でしたが、ついこの前「ちょっと待ってください、自分でします。」と話してきました。「今の言い方とってもよかったです!」と返しましたが、それで終わらずこれからも支援は続けていきます。今、調子がよいからこそ入るでしょう。
新リーダー誕生!
この5月から、すてっぷの小学生グループの仲間が2人増えました。2人とも小学校中学年で、さっそく活動に参加したり、休憩時間に友だちと一緒に遊んだりして過ごしています。新人2人が友だちと一緒に過ごせるよう、職員も支援していますが、頼りになるのは先輩たちです。
小学校5年生のJくんは、もう一人の6年生の先輩Kくんと一緒に小学校グループを引っ張ってくれています。Jくんが3年生の時、当時の6年生4人が下の子達をリードしてくれていました。その姿を覚えていたのかもしれません。今年5年生になってから、職員に「Kくんといっしょにリーダーしなあかんなぁ」とポツリとつぶやきました。そして有言実行、後輩の子達を思いやる姿をたくさん見せてくれています。
先日、新人のLくんが休憩時間にパソコンでマインクラフトをしようとしていたときのこと。そばにいたMくんがLくんに「それ、使わないで!」と叫びました。すてっぷにある子ども用のパソコンは共用で、Lくんが遊ぼうとしていたセーブデータは以前Mくんがそのパソコンで作ったものだったのです。自分の作ったものを壊されたくないというMくんの気持ちもわかりますが、だからと言って強い口調で注意しても、新人には酷な話です。Lくんがおろおろしていると、そばにいたJくんが声をかけました。「L、新しく世界作り。教えてあげるし」。その後、Lくんが自分でセーブデータを作り、自分の世界でスタートできるところまで見守りました。そして最後に、「友だちの世界に入って壊したりするのはあかんのやで」と優しくLくんに伝えました。Lくんは落ち着いて、「うん」とうなずきました。
リーダーとしてLくんに思いやった言葉をかけられたJくん。職員の指導だけでは子どもたちの集団作りはうまくいきません。子ども同士だからこそ伝わる思いもあります。その機会を作ったり、邪魔しないようにしたりと支援しながら、思いやれたJくんをたっぷり褒めたいと思います。
自然のかくし絵
小学3年生の国語の授業で「自然のかくし絵」という教材があります。この教材は説明文の中心文や段落ごとの内容、大事な語に注目し、読みを深めていく力をつけていくのが単元の目標です。
ただ子ども達は大人が狙っていることよりも教材の中身に興味があります。(当然ですが)
この教材は自然の生き物が身を守るために植物や周りの風景に擬態することについて書かれています。昆虫や自然が好きな子どもにとっては興味しかない教材ですよね。
さて、乙訓地域の3年生の子どもは今、この教材に取り組んでいます。じゃんぷに通う3年生の子も今これを習っており、得た知識をじゃんぷで披露してくれました。
せっかくなので他の学年の子どもにも「3年生で習ったの覚えてる?」と自然のかくし絵について休憩時間話しました。覚えている覚えていないは子どもそれぞれでしたが、かくし絵当てゲームをすると大盛り上がりしました。
夕方に来る中学生にも見せましたが、かくし絵が意外と難しいらしく苦戦をしながらも楽しそうに見つけていました。他学年同士で一つの教材についてみんなで共有する、というのは学校ではあまり見られません。じゃんぷならではの光景かな、と筆者は感じました。
下の写真はある小学校のあるクラスがアゲハチョウの幼虫を教室で飼っていた時の写真です。見つけられるかな?
子ども達の変化 フィードバック
先日じゃんぷの休憩時間に風船バレーをしました。
そのメンバーは去年風船バレーをしましたが負けるのが苦手だったりテンションが上がって落ち着かなかったり、そもそも対戦ゲーム自体が嫌いだったりと一度断念していました。
一人の子が「風船バレーやりたいなぁ」と提案したので「他の友達がOKだったらやろう、断られたら違う遊びをしようね。」と伝えていました。「多分無理だろうなぁ…」と思っていたのですが、以外にも他の子も「いいよ」と答えてくれました。
1年も前にやったことなのでみんなただ忘れているだけなのかな、と思っていましたが、今回はどの子も注意、注目するべきポイントをしっかりと聞き、頭に入れてゲームをしていました。
負けるのが苦手だった子が「次行こう!」テンションが上がって落ち着かなかった子がチーム同士で相談を進め、対戦ゲーム自体が苦手な子が「(サーブ)僕やりたいなぁ、いい?」と良い声かけがたくさん出てきました。
中には薬を去年等に始めた子もいますがそれでも大きな変化です。自分たちが1年前に比べてものすごい成長をしているのには気づいていない様子でしたが、Y先生と良い声掛けをホワイトボードに書き出して(筆者は字が苦手なので汗)注目させ、子ども達にフィードバックできるようにしました。
大きな数
「大きな数」という単元があります。一の位、十の位、百の位、千の位、一万の位…3年生では十万、百万、千万、一億まで。4年生では十億、百億 千億、一兆まで学習します。
こういった膨大な数は数量を想像しやすくするために人口等で導入し、学習に入っていきます。ただ数量はわかっても読み書きの苦手な子は文字と結びつきにくく、問題になった途端ぐちゃぐちゃになることも少なくありません。
じゃんぷに通う子の中にも位が苦手な子どもがいます。じゃんぷでは「位取りカード」を作って子ども達に渡し、「小さいに順にならべてごらん?」と渡しています。最初は一緒に文字を読んだり等手伝いながらですが、最終的に自分で並べれるように練習をします。
文字と読み方、そして数量と様々な情報を使いながら単位の勉強は進んでいきます。まずこの位の関係をわかってないといけません。まず文字と読み方、そして数量をこれで一致させ、子ども達が不安なく学校の学習に臨めるよう支援をしています。
「けった」って?
すてっぷでの公園遊びでたびたび紹介している『けった』という遊び。筆者は乙訓で育ったので馴染みがあるのですが、全国的にはマイナーな呼び方のようです。簡単に調べると、鳥取で『けったん』、滋賀や京都で『けった』と呼ばれているとのこと。詳しい経緯をご存じの方はいらっしゃるでしょうか? いずれも、『缶蹴り』と同様の遊びと記載されていましたが、細かいルールは異なるようです。ここでは、筆者が子ども時代、または学童の指導員補助をしていたときの経験を元にした『けった』を紹介したいと思います。
要は空き缶を使わない『缶蹴り』なのですが、空き缶の代わりにみんなで場所を1か所決めてシンボルにします。たいていは木や柱がシンボルになるので蹴るかわりにタッチすることにします。『缶蹴り』であれば最初に空き缶を蹴りますが、『けった』は鬼が目を閉じ数える間に他の人は隠れます。あとは『缶蹴り』と同じように、鬼は隠れている人を探し、見つけたらシンボルに戻って、「○○さん、けった」と言ってタッチします。逆に隠れている人は鬼の目を盗み、シンボルに「鬼さん、けった」とタッチ出来たら逃げる必要はなくなります。『缶蹴り』だとここでゲーム終了となる場合が多いですが、『けった』はこのまま続行。隠れている人がいなくなるまで続け、最後に「けった」された人だけでじゃんけんして次の鬼を決めます。
この遊び、隠れる場所が四方にあるような公園がうってつけ。なかなかそんな公園はありませんが、先日訪れた公園はぴったりの場所でした。子どもからもリクエストが出て、久々に『けった』をすることに。「初めてする人」と聞かれ、Iくんは「はい」と手を挙げます。ルール説明をしてから、Iくん以外で鬼を決めてスタート。Iくんはしっかりと隠れていましたが、飛び出すタイミングはさすがに分かりません。鬼が近づいてきたのに我慢できず、飛び出します。ところが鬼はシンボルと隠れている子の間。当然鬼の方が先にシンボルに着いてタッチしました。一方で先輩たちはさすがです。鬼の位置をしっかりと確認しながら、自分の隠れている位置からシンボルまでの経路を吟味、間違いなくいけるというタイミングで飛び出し、見事タッチ! 次の鬼を決め、2回戦、3回戦と続けていきました。最後のゲームでは、Iくんも見事「おにさん、けった!」ができました! どちらが言い出したかは分かりませんが、Iくんは先輩たちと一緒に隠れて、先輩達と一緒に飛び出してきました。そして見事「けった」。教えた先輩たちも、学んだIくんもグッジョブです!
一方でこの遊び、『缶蹴り』も同様ですが、鬼が空き缶やシンボルの周りを離れずにその場からずっと探していると、隠れている人はまったく面白くありません。また隠れる側も、あまりにも遠くに隠れると、鬼が面白くありません。実際、このときも子どもから指摘する声が上がりました。時間制限を作ったり、場所制限をしたりする?審判役が必要になるけれど。それとも鬼を複数にする?いや、鬼が有利になりすぎるか…。と個人のアイディアは貯めていますが、せっかくです。子どもと職員とでアイディアを出し合える機会を作れないかと思案中。またぜひ、みんなで『けった』を盛り上げたいと思います。
ほっとタイム
じゃんぷに18時以降に来る中学生たちは中間テストが終わったところです。中1の子ども達は初めての定期テストということで物凄く緊張もし、疲れたと思います。
Y先生と「少しお話をしながらほっと一息する時間も必要かな」と話し、普段は到着したら学習を始めるのですがテスト終わりは「ほっとタイム」ということで各々の話したいことをテーマに話す時間を作りました。
先日は中間テストが終わった子が校外学習で神戸に行ったらしく、「めっちゃ疲れたわー!」と話していました。その子が言うには神戸に到着してから「北野異人館」、「生田神社」、「東遊園地」、「メリケンパーク」、「南京町」を歩きで回ったそうです。昼食の時間が10分程度だったりと、その子にとってかなりタイトなスケジュールで疲れたようです。
こういった学校のことや普段の生活のこと、たまには愚痴を話しても良いでしょう。そんな時間を作ってから学習に取り組むのもよいかもしれません。
ちなみにたまたまですが筆者もつい最近神戸の南京町に行っていました。そこで食べた芋スイーツがとても美味しかったです。ただすぐにお腹が膨れてしまいました。昔はもっと食べれたはずなのですが、年は取りたくないものですね。
学習の土台
読み書き障害のある子ども達は学校の中の勉強の中で自分の苦手な部分に直面し、自己肯定感を失い学習に乗らないようになります。それが飛び出し等の形になって出てきます。(中には目に見えないようにする子どももいますが)
それは学校に入った時に起こります。今までの生活から一気に学習ベースの生活になるため、子ども達は環境の大きな変化に対応しながら学習をしていかないといけません。ここでどこまで子ども達に楽しい、おもしろいと思わせながら授業を進めることができるか、が大事です。1年生の担任が重要と言われる理由の一つですね。
さて、じゃんぷに通う子ども達の中には学習のベースが出来ていないまま進級し、目の前の勉強に困難を示す子ども達がいます。もちろん子ども達が悪いのではありません。
学習のベースが出来ていない子どもにどれだけ勉強しようと言ってもそれは辛い、しんどいことを押し付けられているだけとしか子どもは感じません。そういった子ども達にはその子が大好きな事やしたいことをしながらその中に勉強に繋がる要素を少し含ませ、学習のベースを少しずつ積み上げていく必要があります。たとえそれがその子が学習から逃げるために「〇〇したい」と言ったことでもしてあげる必要があると考えています。
今までずっと勉強がしたくなく、動物調べや怖い話調べ等をしてきた子どもが少しずつ勉強に向かうようになっています。動物調べや怖い話調べの中で文章読み練習やタイピングの練習を少しずつ入れていきました。そこで学習のベースをその子なりに作り、ようやく勉強への構えが出来たのでしょう。
先日は休憩中のゲームで「トーナメントをしたい」と言ってきました。しかもトーナメント表をホワイトボードに書く!と言って、友達と一緒にですが、みんなの前で表を書いてくれました。それまで友達の前で書くなんてことを絶対にしなかった子がみんなの前で文字を、表を書いているのです。子ども達がトーナメント表を見ながらワイワイしている様子を見ながら、こういったことも学習に繋がっているのだな、と実感できた瞬間でした。
読みの二重ルートモデル
先日の宇野彰先生の講演の中で「読みの二重ルートモデル」の話が出ました。筆者自身、それについてよく理解していない部分がありましたが、Y先生から「読み書きの苦手を克服する子どもたち(発行 文理閣 著 窪島務 滋賀大学キッズカレッジ)」を貸していただき、その中に詳しく記してあったためここに紹介します。あくまで2005年の著書であり、現在とはまた考え方が変わっている部分もあると思いますが大変参考になります。
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「読み」の現在の主要理論
大脳が文字を処理するメカニズムには、大きく視覚的処理から単語意味に向かうルート(語彙ルート)と文字と音韻との対応関係の規則によって処理するルート(音韻ルート)の2つがあります。通常は2つのルートを同時にバランスよく使用しています。
しかし、失語症や学習障害では語彙ルートに至る経路に障害があると音韻ルートに依存する処理が中心となり、音読はできるが意味がわからない、不規則文字が読めないことが生じます(語彙性読み書き障害)。音韻ルートが障害されると語彙ルートに依存する処理が行われ、意味はおおむね理解されても読み誤りが多くなります(音韻性読み書き障害)。意味の誤読が生じることもあります。背景に記憶関連の際害や処理の自動化の障書が想定されています。
トライアングルモデル(コンピュータモデル)
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トライアングルモデルは、コンピュータによる読み処理の計算モデルであり、その特徴からコネクショニストモデル、並列分散モデルともよばれています。このモデルは、二重ルートモデルのように系列的に機能を極在化したモジュールを仮定せず、文字、意味、音額の3つのユニットが並列的な関係を構成します。中間層で情報の処理が行われます。漢字の読みでも意味だけでなく、文字の読み知識が関与していることを証明しました。二重ルートモデルが、獲得性読み障書の病理モデルであるとすれば、トライアングルモデルは正常な読み学習モデルを基本とする構造から、その一部の障害をコンピュータでシミュレーションします。発達性読み書き障害のモデルとしては有効かもしれませんが、まだ多くの検討課題があるようです。とりわけ、発達主体の要因、書くことなどは要因として想定されていません。
二重ルートモデルはアナログ的モデルとしてまだ有効性を保っています。二重ルートモデルは、成人の脳障書がモデルとなり、病理的視点に立脚しています。トライアングルモデルは、正常成人の読み能力をモデルにしています。しかし、いずれにしても、「発達」の視点が弱く、「発達的ディスレクシア」という場合でも、成人モデルを子どもに当てはめただけという場合がしばしば見られます。
量産は難しくても
最近、すてっぷの小学生グループの間で「街コロ」が流行っています。もともとはすてっぷの子ども達には、こういう街を発展させてよりたくさんのお金を得ていくというゲームははまるんじゃないかと個人的に思っていました。ところが子ども同士で遊びを選ぶ際には候補に挙がっても嫌だという子が多く、あまり遊ばれてきませんでした。理由を聞くと、1ゲーム30分という時間が長いというのです。ただ長いだけではなく、勝ち負けがはっきりと見てわかるので、30分もかけて遊んだのに負けて終わった…、と思う子が多いようでした。
ところが先日、小学生Gを2つに分けてボードゲームの取り組みをした時のことです。2つに分かれてからそれぞれ何をして遊ぶか相談すると、一つのグループの方で「街コロがしたい!」と高らかな宣言が聞こえました。それに続いて、同グループの子ども達からも「僕もしたい」との声が。普段は「長いからしない」と言っていたのに、この日は「街コロ」フィーバーが起きていました。
さて困ったのは、もう一つの方のグループです。実はこちらのグループでもサイコロを使う「海底探検」というゲームをしようと思っていました。(「海底探検」はまた別の記事でご紹介します。有名なゲームですが…。)そこで以前も紹介したサイコロ転がしの道具を準備していたのです。この道具を使うことでサイコロが転がってどこかに行かないようになりますし、透明の箇所にサイコロが出てくるので、離れている職員でも子どもの読み間違いなどにすぐに気づけます。順番が混乱しやすい子も多いので、こういった目立つものを次の人に渡して回していくことで順番のシンボルにしているのですが、徳利のような形で誰でも持ちやすいようにもなっています。ただこの道具、手作りの物で1つしかありませんでした。そのため「海底探検」のグループでは箱のふたをひっくり返し、即席のサイコロ転がしの箱にしました。この箱を順番のシンボルにして、次の人に渡していくことに。ですがただの箱なので持ちづらく、弾いて渡そうとする子がいたり、真上からしかサイコロの目が見えないので、子どもの間違いに職員が気づきづらかったりというマイナスポイントがありました。
その日はそのまま活動を終えましたが、新しく利用する友達も増えにぎやかになった小学生グループ。今後も2グループに分かれて、それぞれでサイコロを使うゲームをすることもありえます。なのでサイコロ転がしの道具をもう一つ作ることにしました。せっかくなので、すでに完成しているものを元に簡単な設計図を起こすことに。印刷した設計図を段ボールに貼り、切り分けてからグルーガンで多少のひずみは気にせずくっつけました。なかなか量産できない道具でも、支援に必要なものはすぐに用意していく必要があります。こういった設計図もファイルを残して手軽に作れるようにして、支援に穴が開かないように工夫していきます。
「背」
前回の続きです。前回の記事はこちら→5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2
前回漢字の形を子ども達に教える時、パーツを文章にし、視覚と聴覚からアプローチして(聴覚寄り)教える方法がある、と書きました。
さて、「背」を教える時にはどんな文章がいいでしょう?筆者は
「背中の 北には 月がある」
と、ありきたりな文章しか思いつきませんでした…
講演会では
「背中に 北斎の 月」
と、「入れ墨!?」と突っ込まれる文が出てきました。こういったシュールであったり面白い文章の方が子ども達は覚えやすいのですね。宇野先生からは
「背脂が乗っかった 北海道の 月見そば」
と考えた子どもがいたそうです。「気持ち悪いよね~」とウケたそうです。ただ教室の中でどっと笑いが起きる方が子ども達の印象にも残り、覚えやすいと思います。
こういった漢字の覚え方は実は本にもなっています。「漢字九九」と検索すれば出てくると思いますが、特別支援の漢字指導教材としてよく使われています。通常の授業の中では覚えることが難しくても、こういった方法で覚えることが出来る子がたくさんいます。通常学級の中の漢字が苦手な子どもにも試してみるとよいかもしれません。
5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2
5月14日(日)、同法人が後援をしている「京都発達性ディスレクシア学習会」が主催する講演会に運営スタッフとして参加をしてきました。前回と同様、発達性ディスレクシア研究会の宇野 彰先生をお呼びし、「発達性ディスレクシアの評価と支援 その2」を講演していただきました。
その中で発達性ディスレクシアの子ども達の漢字指導にについての面白い指導方法があったのでここで紹介させていただきます。
例えば「湖」という漢字を教える時に、漢字を「さんずい(カタカナのシ)」「古」「月」に分け、それを使って文章にします。
例えば、「湖で シずかにすると 古い 月がみえる」
こういった文章で視覚と聴覚のどちらからの経路からも学べるようにしています。ただ講演の中で宇野先生からのデータでもありましたが視覚よりも聴覚の方が子ども達が覚えたという結果が多く、やはり聴覚法が効果があるなぁ、となったそうです。
さて、どんな文章でも子ども達が覚えるわけではありません。子ども達が覚えやすい文章と言うのがあります。それはどんな文でしょうか?次回、じゃんぷブログで紹介しようと思います。
次回は「背」という漢字を使って説明しようと思います。この方法で「背」を教える時にみなさんだったらどんな文章にしますか?一度考えてみてください。
ひらがなの曲線
ブログの更新が少し滞ってしまいました。子ども達は今日も元気にじゃんぷに通っています。筆者も五月病に負けずに頑張りますよ!
さて、今回も簡単な文字指導の紹介となります。以前からもここのブログで紹介している「新国語授業を変える「漢字指導」(白石範考/文溪堂/2019年)」からの引用です。
この中で白石先生はひらがな文字について以下のように書いています。
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日本語の文字は、独特の線によって構成されています。文字を美しく書くために練習するのであれば、その形を練習する必要があるのです。長い直線や画一的な円や曲線をいくらなぞっても、日本語の文字の曲線を書くための練習にはならないのです。
例えば「め」「ゆ」「つ」という三つの文字。いずれも右側に膨らんだ曲線がありますが、その形は同じではありません。
(一部省略)
線の形だけではありません。日本語の文字の中には、「とめ・はね・はらい」もあります。「い」「さ」「ふ」の文字にはいずれも「はね」がありますが、それぞれのはねの大きさや向きは違っています。
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上記のようにひらがなはそれぞれ独特の形を持っています。似ているところはありますが、やはり文字を書く練習をするのであればこれらの独特な線をかく練習をまず行う必要がありまs。
例えば「め」という字であれば、右上から左下に向かってかすかに膨らみをもたせながら下ろし、やや角をつけるように曲げた後、大きく膨らませるように書く、という「め」の独特な線の形を練習します。
ただ漫然と練習をさせるのではなく、なぞらせる前に「どの部分を意識しながらなぞるのか」を指導し、文字の練習をします。文字の特徴を意識しながら手本をなぞると、記憶の定着につながることがあります。
連休明け
GWが明けました。子ども達も今日から学校が始まります。リフレッシュをして元気に登校をしていると思います。
連休や長期休暇明けは子ども達はリズムを取り戻すことに集中します。発達障害のある子ども達は特にそこにエネルギーを使います。特にこのGWの期間は新年度が始まって1ヶ月ですぐに連休に入ります。4月は新しい環境が始まり、クラスや学習、場所によっては運動会の練習がすぐに始まったりと新しいことだらけで知らず知らずのうちに疲れていきます。
こういった連休明けにはよく「登校しぶり」等の問題が挙げられます。それももちろんケアをしなければなりませんが、「無理をして学校に行っている子ども」がいます。そういった子ども達は影に隠れていますが、学習姿勢等に表れることがあります。
じゃんぷに通う子ども達も今週はちょっと無理をして来るかもしれません。「しんどくなったら休憩してもいいよ」と伝えながら、学習を進めていきたいと思います。
「ちょっと待とうや」
先日のじゃんぷの休憩時間は「ぶたのしっぽ」をしました。低学年~高学年まで入り乱れてのゲームです。
そのグループは半年以上前に同じゲームをしているのですが、それぞれの発達段階の違いもあり、ルールも覚えている子、名前は覚えているけどルールを忘れた子、名前もルールも忘れた子、と様々です。ルールを覚えている子が率先してみんなに説明をしてくれてました。
ただその子は他の子どもが迷ったり悩んだりしている時についつい「早くしてよ」「長い」と言ってしまいます。本人に悪気は全くないのですが、乱暴な口調で言ってしまい時に言い合いになりそうな場面もあります。
その子は今年度4年生になりました。いつかのブログでも書いたかもしれませんが、4年生になった子には「チャレンジする学年だよ」と伝え続けています。その子には「高学年になったら低学年を引っ張っていきます。その口調や態度は通用しなくなります。」と伝えています。その子の乱暴な口調や態度は無意識なもので、なんの悪気もないので「なぜ直さなければいけないのか」と思っているでしょう。ただ、そのままだと損をすることが多くなってしまい、その子の良さより悪いところが目立ってしまうようになります。そういった理由も含めて伝えています。
休憩時間の時の話に戻りますが、ぶたのしっぽの最中、低学年の子がルールがまだあやふやで職員と一緒に確認しながらゲームをしようとしている時、別の子が「まだかな~」と漏らしたときに「ちょっと待とうや」と言ってくれました。上手に理由を説明できない様子でしたが、「待とう」と思い、それが言葉に出てきたことが大きな成長のように感じます。
「今って○○していい?」
支援学校中学部のCくんは、毎日宿題に取り組んでいます。すてっぷでは活動を優先することを前提にですが、休憩などの空き時間で宿題に取り組む際はスペースを提供しています。Cくんはすてっぷで宿題を終わらせてすっきりしたいという気持ちがあり、自立課題(パソコンなど一人で取り組む課題)とスケジュールを入れ替えて先に宿題に取り組みたいなどの交渉を、自分から職員に伝えることもありました。
先日は学校から帰ってきてすぐに中学部、高等部の友だちと公園に行く予定でした。ですが友だちの一人が制服から私服に着替えるため、Cくんは予定外の待ち時間が10分ほどできました。もしかしたら宿題をしたいと交渉に来るかもしれないと職員がCくんを見ると、Cくんはスケジュールを公園遊びにした後、ぐるぐると室内を歩き回っていました。おそらくCくんは、自分だけのスケジュールであれば交渉に来るところ、友だちを待つという自分では時間が分からない状況だと、何をすればいいのかわからず、気持ちも落ち着かずに歩き回っているのだと感じました。ただ、友だちが着替えるのを待つという状況はこれまでも何度もあったので、Cくんも待つ時間をある程度把握できているだろう、であれば交渉も自分からできるようになるのでは、と考えました。
そこで職員はCくんに話しかけ、まず状況を整理しました。Cくんは「Dさん、○○くん、△△さんと行きます。」「公園に行くのを待っています。」と答えます。そして職員が「なんで待っているのでしょう?」と尋ねると、Cくんは少し考え、「Dさんが着替えているから?」
と答えました。そこで職員は「Dさんが着替えるときは10分くらい時間ができるから、職員に交渉してもいいよ。」と伝えました。そして「今日みたいな場合によってできる時があるかもしれません。自分がすることだけじゃなく、お友達がすることも考えて、何ができそうかを自分で考えたり行動してみたりするのは大事な力になるよ。」と話をしました。
職員が話をした翌週、さっそく同じ状況がやってきました。Cくんは自分のスケジュールと活動全体の予定が書かれているホワイトボードを見てから、職員に「公園の出発まで宿題していいですか?」と自分から交渉できたのです! 職員はあえて「どうして?」と尋ました。するとCくんは「Dさんが着替えを持って、着替えに行ったから。」と答えました。職員はCくんが交渉できたことをほめ、「友だちの着替えが終わったら、宿題が途中でも切り替えてね」と約束して、Cくんを宿題をするスペースへ案内しました。そして職員が「Dさん準備できたみたいだよ。」と伝えると、約束通り、宿題を途中で切り上げて、公園へ出かける準備に向かうことができたのでした。
現在では、公園へ行く前の時間だけでなく、他の友だちを待つような状況でも、自分や全体のスケジュールを見て、宿題をする時間を見つけたら職員に交渉することができるようになりました。自分のことなら予定が分かってスケジュール交渉できていたCくんでしたが、その力を友だちとの予定の中でも発揮できるようになったことは、社会性、コミュニケーションの課題があるCくんにとって大きな前進であったと思います。取り組み前の時間にも支援のタネがいっぱいありますね。
通常級での支援
昨年12月の文科省での調査で、発達障害の可能性がある小中学生は学級に8.8% とありました。現場での実感としてはもう少しいると感じているでしょう。
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官の加藤典子先生のが調査結果について書いた寄稿を読みました。最後に大事なことが書いてあったのでこちらに引用させていただきます。
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通常の学級には、発達障害を含む障害があるだけではなく、教育上特別な支援を必要とする児童生徒が在籍していることを前提に、学級経営や授業づくりを行うことが必要であるとともに、学校全体として個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を、組織的かつ計画的に行うことが求められています。
また、令和4年3月に公表された「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」報告において、「特別支援教育の考え方は、特別支援教育分野の専門性向上や進展のみならず、また、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与するものである」と示されていることからも、特別支援教育を基盤とする校内支援体制の構築と充実は重要な意味をもっています。
全ての教職員が児童生徒に対する配慮等の必要性を共通理解するとともに、全ての児童生徒がお互いの特徴を認め合い、支え合う関係を築いていけるよう、児童生徒の多様性を踏まえた学校づくりや学級づくりを進めていくことが重要です。
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引用した部分に書いてある通り、通常学級の中にも特別な支援を必要としている子どもがいる、ということを前提に学級経営をしなければならない時代です。
しかし特別支援に力を入れている学校と、それが出来ない学校の二極化がされているように思えます。通常級では担任が出来なかった教諭や、講師をとりあえず支援級にあてがう学校が今でもあります。また、通常級の担任であっても支援が必要なことはわかりつつもどうしたらよいかわからないまま一年が進む、こともあります。(中には様々な理由をつけて個別支援をしたがらない教員もいますが…これは論外ですね。)
教室の中に特別支援が必要な子がいるのであれば全員にすればよいのです。必要のない子は必要ない、と自分で判断も出来るでしょう。いじめ等に繋がる、といった消極的な理由で特別支援を避けるのではなく、積極的に特別支援を用いる教員が増えてほしいと思います。
今までの学習が通用しない「分数」
特別支援教育士資格認定協会が発行している「LD/ADHD&ASD 2023年4月号」に分数について面白い記事がありました。分数の難しさについて2つのポイントを教えてくれています。
1つめの難しさは、分数はさまざまな点で整数とは異なる点にあります。小学校学習指導要領解説算数編(文部科学省 2017)で「小数が十進位取り記数法で表されているのに対して、分数は二つの数の関係で一つの数が表されており、構成する単位が分数によって異なることに着目する必要がある」と説明されているとおり、分数は整数・小数とは異なり、10進法が当てはまりません。たとえば、同分母同士の分数の大小判断では整数的な理解で解決することができますが、異分母の分数だと整数的な理解では対応できず、分数的な理解が必要となります。すなわち、整数は1つの数で1つの量をあらわすという明確な関係がありますが、分数では分子と分母という2つの数を使うことによって、初めて1つの量を示すことができる点に特徴があります。
2つめの難しさは、子どもたちが生活の中で理解している分数と算数で習う分数のズレにあります。子どもたちは就学前の年長児から1、2年生において、分数概念として、全体から部分に分割するインフォーマルな知識は獲得していることが知られています。たとえば兄姉には多めに、弟妹には少なめに分けるような、等分配ではない生活経験をとおして、「“半分にする”とか“等しく分ける(分配する)”という行動を獲得しています。
一方、学校で習う分数は、小数同様、1以下の端数(はしたの数)を扱う学習として位置づけられています。そのため、このインフォーマルな知識を算数でうまく活用できません。幼児は生活体験の中で、丸いケーキを3人で分けたときと4人で分けたときの1人分が多いのはどちらなのかをすでに知っているにもかかわらず、分数を学習した後に「1/3と1/4はどちらが大きいか」という問題に誤答してしまいます。
このように分数は今まで学習してきたことが通用しないことが多いです。そのため子ども達が混乱して勉強が嫌になったり、本質を理解しないまま学年が上がりつまづいてしまうこともあります。現在は分数パズルなどの視覚的に大きさがわかりやすい道具もあります。そういったものを活用して子ども達が混乱しないような授業をしていきたいですね。
トランプの神ゲー「たこやき」
「たこやき」について→ https://omocoro.jp/kiji/268690/
じゃんぷの休憩時間に新しいゲームを取り入れました。「たこやき」という日本発祥の比較的新しいトランプゲームです。2人~3人でするゲームで、戦略性はなくほとんど運によって勝負が決まるゲームです。
簡単なルールについては上記のリンクの記事を見ていただきたいのですが、これがかなり子ども達にウケが良く、大盛り上がりをしました。
ただ順番を数えるといっても年齢や発達段階の違う子ども達です。毎回1から数える子もいれば大体の見当をつけて数字を数える子もいます。能力に差はあれど、それがゲームの結果に左右されずに楽しめる良いゲームでした。またいろんな曜日の子ども達と楽しんでみたいと思います。
当たったらホームラン!
「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」とつぶやいたのは、小学生のBくん。Bくんは野球に限らず、苦手だと思っているものや遊びが多く、また拒否しやすい傾向があります。すてっぷに来た1年前くらいから、野球にも少しずつ取り組んできました。当時、職員がBくんに苦手な理由を聞くと、「ぼくは、投げることが下手やねん。」「グローブでボール も取れない。」「バットで打つこともできない。」といった否定的なイメージが。それがこの1年取り組んできた中で、少しずつ抵抗なく遊べるようになってきて、ティーバッティングも以前より打てるようになって喜ぶことが増えました。友だちから「キャッチボールしない?」と誘われても、「ぼくは、絶対しない!」と強く拒否していたBくんでしたが、最近では、誘われると「いいよー。」と返事してキャッチボールに向かう姿も見られます。
先日も、友だちと一緒にティーバッティングをして遊んでいました。Bくんのバッティングも上達しましたが、他の友だちも上達していて、この日は友だちがホームランを連発。「ホームランやー。すごいなぁ。」と感心するBくん。それに続けてとバッティングにチャレンジしましたが、その日の調子はあまりよくなく、友だちほどボールを飛ばせませんでした。バッティング後、「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」と、久々のBくんのつぶやき。見るとBくんは肩をがっくり落としていました。
そこで職員は一計することにしました。次のティーバッティングの取り組みの日。普段は公園やグラウンドなどの広く空いた場所で取り組みますが、その日は高架下のコンクリートの壁の前にティーを置きました。壁までの距離も、普段のホームランの距離の半分くらい。いつもと違うセッティングに子ども達には?が浮かびます。職員は「今日は壁に当たるとホームラン!」と説明すると、子ども達は狙え!ホームランと言わんばかりに次々とバッターボックスへ。Bくんも意気揚々とバッティングにのぞみ、1回目は3球中1球が見事壁に! 「ホームランだよね?やったー。」と喜ぶBくん。2回目では、なんと3回とも打ったボールが直接壁に当たって3連続ホームラン!「3回連続や!(ヤクルトスワローズの)村上選手みたいや!」とBくんは大喜びでした。
普段のティーバッティングでは、やった!ホームラン!と言っても、小学生の遊びのことですので、プロ野球みたいにフェンスを越えたといった視覚的にわかりやすいものではありません。Bくんも、これはホームラン?と疑問に思うことが何度もあったでしょう。今回Bくんがホームランを打てた!と実感できたのは、「当たったらホームラン」という視覚的にわかりやすいルールにしたことが大きいと思います。いつもの遊びとは違うやり方やルールにチャレンジすることで、普段とは違う楽しみが生まれます。そこで成功体験を積めたり、感じた事を職員や友だちに伝えたりすることも、子どもの力になっていくのではないでしょうか。
そのうちじゃなくて今すぐがいいの♪
最近Tiktokで「新しい学校のリーダーズ」の「オトナブルー」が流行していますね。Tiktokを知っている子ども達からちょくちょく話を聞くこともあります。タイトルはその曲の歌詞ですが、本記事の内容とはほとんど関係ありません。すみません。
子どもが「〇〇をしたい!」と遊びやゲームを要求した時に「宿題をしてから」「やることをやってから」と約束することがあります。このブログで何度も書いている応用行動分析(ABA)の理論を基に、「してほしい行動」にアプローチし、それを行動した結果として「良いこと」がある=強化としているのです。
ただ子どもの発達段階によっては「~~をしてから」ということ自体が難しいことがあります。特にASDの傾向がある子どもは「0(出来ない)か100(出来る)」しか見えていません。「今できない」=「できない」となってしまうのです。つまり「そのうち」じゃなくて「今すぐ」がいいのです。そういった子にどれだけ「後から出来るよ」と伝えても良い強化には繋がらないこともあります。
そういった子にはまず「したいこと」を思い切りさせます。「したいこと」がひと段落ついた後、ほんの少しの量でいいので「してほしい行動」を提示します。この約束が子どもがパニックになる前に提示できることが一番良いですね。
基本的なセオリーは抑えつつ、子どもによって支援の形を変えることが特別支援には必要な視点だと考えています。ただ公教育ではそれが薄まってきているように思えます。これについてまたY先生と話したのでそれも後日ブログに書く予定です。
がんばりすぎに注意!
新年度になり、子ども達は張り切っています。特に普段「宿題はやりたくない~!」と話している子が今じゃんぷに来ると「宿題するわ!」と言って黙々と宿題と向き合っています。
ただ去年の4月も同じような姿を見ました。筆者は去年じゃんぷに来たばかりだったので、「話に聞いてたより全然勉強するやん」と思っていたのですが、ある日突然宿題から逃げるようになったのを今でも覚えています。つまり、新年度は新しい環境の先生に良いところを見せようと張り切っているようです。
それ自体はとても良いことです。きっかけがなんであれ、苦手なことに対して向き合って努力することは素晴らしいです。ただ恐らく多動なことも相まって「頑張る」のコントロールも難しいようです。
学習障害の子ども達は私たちが思っている以上に学習に対しての苦手感が強いです。「やっぱり限界だ~」と感じてプツンと力が切れ、さらに出来ない自分に対してのネガティブイメージもあり、自己肯定感が下がっていきます。
子ども達が頑張っていることを止めることは出来ません。努力認めつつ、「休憩してもいいんだよ」と伝え続けていこうと思っています。「いつでも休憩してOK」と最初に伝え、休憩する場所を決めてしんどくなったらそこに行っても良い、というルールを伝えています。がんばるのもOK、休憩するのもOK、とある程度枠組みを作った上でそれを伝え、それぞれ自分のペースを掴んでほしいと思っています。ホップ、ステップ、ジャンプ!
単位換算定規
じゃんぷの学習支援で使っている道具の中に「単位換算定規」があります。これは面積・長さ・液量・重さ・体積の各単位を方眼上に表記されています。中央には数字の1と0が書かれた帯が備えられ、左右にスライドできるようになっています。例えば「1」を「km」の位置で止めると、長さならば「1キロ=1000メートル=10万センチ」と読むことができ、液量ならば「1キロリットル=1000リットル=1万デシリットル」だと分かります。4年生の算数で出てくる「ヘクタール」や「アール」など、普段子ども達が日常で聞かないような単位も、すぐ平方メートルに換算できる便利な道具です。
単位の換算は学習が苦手な子どもにとっては難関となることが多いです。定型発達の子どもでもややこしくなり、間違うことが多くなる問題なのですが、「単位が変わると数字が変わる、でも量(距離)は同じ」というのがかなりややこしいです。それがいくつも出てき、その時その時で100=1になったり1000=1になったりと混乱することも少なくありません。
この道具はその複数ある単位換算を一目で見てわかるようになっています。同時処理が得意な子どもにとってはぴったりな道具だと言えます。継次処理型の子どもでも一つ一つの単位を説明し、自分で操作して量(距離)が同じとわかると覚えることが出来る子もいます。
少しずつこういった教材が増えてきています。この道具自体もそんなに高くはないのですが学校で配られる算数セットに入っているのは見た事がありません。このような道具をどんどん使って子どもが学習をしやすい環境が増えていくことを願っています。
高学年だから!
タイトルの通り、4年生になったB君が「高学年だから!」と言ってくれました。
今まで一緒に低学年の友達と同じ場所で勉強をすることがありましたが、低学年の友達は勉強が終わるとブランコをしたり遊びに入ることが多いです。そのたびに「え~ブランコやってるやんズルい~」と漏らすB君。調子の悪い時は「ブランコしたいしたいしたい~!」と駄々をこねることもありました。
今じゃんぷに通っている子どもには「新しい学年になったら〇〇なことが始まります。〇〇な力をつけていきます。」と話しています。この4月に4年生になる子ども達には「高学年になります、4年生は難しいことにも挑戦してみようとする気持ちを育てていきます。低学年のリードをすることも増えていきます。初めてのことや難しいことに多く出会う学年です。」と伝えています。先日B君は今まで通り「ブランコしたいしたい~!」となりましたが、低学年の友達にまず順番を譲り、その子が自分よりも長い時間遊べるように自分の時間を少し減らす、と話してきました。理由を聞くと「高学年だからね!」と答えてくれました。
話をしっかり覚えており、それの通りに頑張ろうとしているようです。さすが高学年!かっこいい!
デジタル教科書 国語嫌いの味方
先日の朝日新聞の記事をY先生に見せてもらいました。以下が一部抜粋です。新聞を見ながら打ち込んでいるのでかなり省略します。ご了承ください。
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熊本・山江村立山江中学校 大瀬順子先生
「国語の教科書なんだからデジタルより紙でしょ」大瀬順子先生は、依然そう思っていた。だが、デジタル端末が「1人1台」となり、2021年度からは国語の学習者用デジタル教科書を使っている。今は「国語嫌いの子から嫌なイメージを払拭してくれる道具だ」と実感している。
文部科学省の昨年の調査では、公立小中学校の通常学級の児童生徒の3,5%が「『読む』または『書く』に著しい困難を示す」とされた。つまり40人学級に1,4人程度。しかし現場の実態としてはもっと多く、近年は増えていると感じている。「読み書きが苦手なため中学入学段階で国語嫌いで授業に集中できない生徒が一定数いるんです。」
中1国語『不便益」の授業では「便利のよい面」「便利の悪い面」「不便のよい面」「不便の悪い面」の4分割に整理し、授業を進めていく。これをデジタル端末上で行い、読み書きが苦手な児童生徒も取り組めるようにした。「紙の教科書だと、読んで見つけて、抜き出してという一連の作業が嫌で、作業をしない子が必ず出ます。思考以前に拒否してしまう。」と大瀬先生。そうした子も簡単に教科書の文章を切り貼りでき、何度も修正できて負担感がないため「生き生きとした表情になる」という
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今、全国的に「1人1台」の端末が学校から支給されています。読み書きの苦手な子ども達が自分の弱点を補いながら、学習を受けることができるようにタブレット等もツールがあります。実際にデジタル端末の先行導入をしていた学校で勤めていた筆者からすると、子ども達の考えや意見を全員のタブレットに送って共有できたり、植物の成長や観察を写真に残してそれを記録していくことが出来る等、授業する側としてもやるやすい部分がありました。(植物の観察を絵に描くのは根、くき、葉に注目する、発芽後の子葉の特徴を捉える等の目的がありますが、それもリアルな写真の方が子ども達にとってもわかりやすいでしょう。何よりもどうしても絵の上手さを気にする子どもも出てくるため、本来の授業の目的から外れてしまうことが多々あります。)
子ども達が自分にあった方法で学習に取り組むことが一番大事です。まだこういった新しいことに抵抗のある教員もいるようですが、時代と共に淘汰されていくでしょう。ICTを使った授業はこれからも発展していきます。子ども達が自分にあった方法を見つけ、それぞれのスタイルで学習に臨んでいけるようになってほしいですね。
新レギュレーション発表!
新年度になり、じゃんぷの放デイのシステムも一新しました。
子ども達が勉強した後に筆箱やノートを机の上に置きっぱなしにしてしまったり、他の子の物と混ざってしまうことがありました。なので片付ける場所として使っていたカゴの使い方を一新し、そのカゴに必要な物を入れ、それを持って移動したらよい、というルールを作りました。
ただじゃんぷに通う子ども達にとって突然新しい決まりやルールが増えると混乱することがあります。なので下記の画像のようにじゃんぷに到着したら必ず読むように「読んだ人は進めます」というホワイトボードを書き、子ども達が必ず新しいルールを読んでから次のことに進めるようにしました。
子どもによってはすぐに理解できるわけではないのでその後に職員が手伝うことはもちろんありますが、一度子どもの目に入ることが大切です。新しいルールを作ったらそれを一つ一つ説明するのではなくまず全員に周知する、そしてその後の定着は子どもによって支援するようにしています。環境がガラリと変わる時は子ども達は混乱しやすいです。できるだけその負担を減らしてあげることが必要ですね。
新しい仲間
出会いの季節と言えば春。ですが、まだ肌寒かった2月に、すてっぷへ新しい仲間がやってきました。小学生のAくんは活発な子で、年上の友だちにも物怖じせず、元気に話しかけます。声が大きくなりがちで、職員が声のレベルを提示することで、小さな声で話せるように練習をしています。
もう一つ職員が気になったのは、友だちへの誘い掛けの言葉。「○○くんはこっち、△△くんはあっちをして」と、誘うというよりも、なかば指示のような声掛けになってしまいます。年上の友だちにも同じように声をかけてしまい、「なんで決められな、あかんねん」と反発の声が返ってきます。そこで職員から、「~しよう?」や「~はどう?」といった、相手が受け入れやすい誘いの言葉に言い換えられるように練習してきました。
先日は年上の友だちたちといっしょにボードゲームで遊びました。人数が多かったので2グループに分かれることに。Aくんははじめ違うグループだったのですが、他方がしていた『スライドクエスト』というゲームに興味を持ちました。『スライドクエスト』は箱の四方にレバーがあり、そのレバーを動かすことで箱の中のステージを傾け、駒をゴールへ動かしていくというゲームです。レバーは4つですから、当然一人ではできません。2~4人が協力してレバーを動かすのです。
「『スライドクエスト』したい!」と伝えたAくん。グループみんなもしたいとなり、他方のグループと交代して『スライドクエスト』をすることになりました。早速Aくんは「○○くんはそっち、△△くんはこっちのレバーね。僕は2つする!」と宣言します。そこで職員が「他の子が2つしたかったらどうする?」と聞くと、Aくんは「あっ、そうか! どうする?」と自分から2人に聞くことができました。Aくんすごい!と内心驚きの職員。日々の成長が現れた場面でしたが、Aくんがやりたい!と思える遊びだったからこそ、発揮できたのだとも思います。毎日の取り組みが面白いと思えるよう工夫して、支援の機会を作っていきたいと思います。
お出かけの計画
じゃんぷに通う中学生の中に、お出かけをするのが好きな子どもがいます。先日は友達と淀川河川公園にある「さくらであい館」に自転車で行ったそうです。
その子は読み書き計算にかなり強い苦手意識があります。計算機を使うこと等はルール違反と思っているのか使おうとはしませんが、本来は使うべきでしょう。なので学習の中ではなく、本人の興味のあることの中で使うことにしました。
知的好奇心の強い子なので、いろんな場所に行きたいと思っています。歴史に興味があるので本来は海外にも行きたいそうですが、現実的に行ける場所に絞って、「ここに電車で行くとしたら往復いくら必要かなぁ」というと、計算機を使います。それで計画を立てる練習もしつつ、学習に計算機を使うハードルを下げたい、と考えています。
次は8月にある山科のお祭りに行きたいそうです。山科は乙訓からだと電車を使わないといけないので、また練習をする良い機会になりそうです。
春!
子ども達から「桜見た~」という話をよく聞きます。筆者も先日京都伏見で行われている「桜まつり」を見てきました。
興味がない子もいるかな~と思いつつ桜の話をしますが、意外とみんな反応をしてきます。「僕も花見行ったで~!」「いいなぁ~けど花粉症やから~」とそれぞれの反応を見せてくれます。
じゃんぷで通う子ども達は学習に苦手感を持っています。ただ「詩は好き」「〇〇には興味あるよ!」と子ども達には好きなことがそれぞれあります。桜はみんな好きなようです。国語の教科書には最初大体詩が載っており、合わせて詩を書くことを国語の最初の授業にすることもあり、それが楽しみな子もいるようです。
こういった季節感を味わったりすることも大切です。駅から通所する子ども達は西向日駅の桜並木を見ながら「春だな~」と話しています。こういったほんわかした時間も必要ですね。
今年度もよろしくお願い致します。
R5年度が始まりました。今年度もどうぞよろしくお願い致します。
すてっぷでは4月1日の土曜日に子ども達が来ており、じゃんぷでは明日から子ども達が通所してきます。新しい学年になった子ども達はどんな表情を見せてくれるのでしょうか。春休みの宿題を終わらせて一息ついている子もいるでしょう。宿題が中々進まず、「手伝って~」と助けを求める子もいるかもしれません。中には春休みの宿題がそもそもなく、「〇〇行ってきたよ~」という話をしてくれる子もいるでしょう。まずは何よりも元気な姿を見せてくれることを願っています。
環境がガラリと変わります。それで少し不安定になってしまう子どももいるかもしれません。それは仕方のないことです。私たちはいつもと変わらず、子ども達を受け入れようと考えています。変わった環境の中で頑張っている子ども達を褒めつつ適切な支援をしていきたいと思います。改めて今年度もどうぞよろしくお願い致します。
成長!
R4年度が終わります。すてっぷでは支援学校に通う子ども達が卒業します。
先日筆者が入り用ですてっぷに向かった時、卒業する中の一人の子どもが書いた手紙がありました。そこには、とても丁寧に「ありがとう」と書かれていました。「これ〇〇君が書いたんですか!?」と驚きました。筆者が知っている時も困ったことを中々言い出せなかったりしたのが言えるようになったりと凄い成長を見せてくれていましたが、これまた凄い姿を見せてくれました。
また、作業課題中にお喋りが止まらない子どもがいましたが、その子が黙々と課題に集中して取り組んでいました。筆者の声が聴こえると「T先生?来てるん?」と気づいてくれましたが「〇〇さん課題頑張ってるな~先生もう外いかなあかんしお話出来んねん。ごめんな~」と返すと「そっか~またお話しましょう」と言ってそのまま課題に戻りました。一度話し出すと止まらなかったのがすぐに切り替えて課題に向かっていることに驚きました。
他にも卒業する子ども達がいるのですがタイミングが悪くその姿を見ることは出来なかったのが残念でした。しかしすてっぷの職員から話を聞くとそれぞれ成長した姿を見せてくれているようです。その子ども達からも職員一同たくさん学ぶことがありました。卒業したみんなはまたそれぞれの道に向かって歩みます。そこで一層活躍してくれるでしょう。お元気で!また会いましょう!
言葉のシャワー
「発達障害と自己肯定感」についての記事があったので少し気になりました。元記事について興味のある方は上記のリンクから飛べるので読んでみてください。
教員時代、筆者が2年目の時に支援の必要な子どもが教室の中に何人かいたのですがその中でも多動傾向があり、悪目立ちのする子がいました。その学校は生徒数が少なく、単級だったので学年主任もおらず、正直どのようにすればわからない状態でした。その時教務主任と教頭先生に教えてもらったことが「とにかく普段はずっと褒めてあげて」でした。
「他の子よりも怒られることが多いし、担任じゃない先生からも怒られることもあるから普段はたくさん褒めて、よしよしするだけでもいいから」
お二人共、筆者が持ったクラスを低学年の時に担任していた先生方だったので子どもたちのことをよくわかってくださっていたようで、どうすればよいかわからなかった筆者にそのように教えてくださりました。学校現場を離れた後、すてっぷ、じゃんぷでも普段はとにかく子どもの話を聞き、褒めまくることを意識しています。
学校の中で出来ない、わからないことが多い子ども達はそれだけで自己肯定感が低くなっていきます。ただそういった子ども達は褒めにくい部分もあります。実際に「どこを褒めたらいいかわからない」という声も聞きます。どの子ども達にも良いところが必ずあります。それを見つけ、褒めて関係性を作っていくことが授業でも療育でも必要だと考えています。もちろん技術や知識があることが一番大事ですが、大切なのはそういったことなのではないでしょうか。
オタマトーン
オタマトーンという電子楽器をご存じでしょうか?見た目がオタマジャクシや音符のような電子楽器で、長年アート作品を発表しているアーティスト「明和電機」が生み出した、ヒット商品です。指を押すだけで音が出て、見た目の可愛らしさも相まっておもちゃとして大流行したようですね。
ただこのオタマトーンはリコーダーのように「ここを押さえたら『ド』が出る」等決まった音の出し方はありません。なので曲を弾こうと思ったら絶対音感を持っていないとかなり難しいです。最近筆者は初めてオタマトーンを触ったのですが音を出す場所の感覚が掴めず、心が折れそうです。
じゃんぷに通う子ども達の中にもオタマトーンで遊んだことのある子どもが何人かいます。「難しいよな~」と話してみると「え、おもしろいやん!」と返してきました。「いやいや、あれリコーダーとかピアノみたいにどこがどの音かわからんやん。」と返すと…
「え、わかるやん」
その子は絶対音感を持っているようで、知っている曲はじゃんぷに置いているおもちゃのピアノでもパパパッと弾いています。学習に苦手感があり、明るいけれども「私出来ないから~」というのが口癖でしたが、そういった出来ることもあるのです。それを見つけ、子どもが自信を持つと苦手なことにも挑戦しようとします。長所を見つけることは大事ですね。
「読むだけなら」
(活躍できる場 2022/12/15)で少し紹介した子どもですが、今は「宿題決め」→「タイピング練習」→「お話作り」→「お話読み練習」の学習の流れが定着しています。
かなり学習障害が重い子どもなので、何度も書いていますが文章を読むなんてことは本来相当エネルギーを使い、しんどいはずなのです。こちらとしても最初は一日に一回、長くても5分程度集中して学習に取り組むことが出来ればそれで充分だと思っていました。それは今でも変わっていないです。
そんな子が30分以上、個別の時間をはみ出しても「今日作ったお話の読み練習は絶対今日中にする!遊びは後回しでいいから自由時間(本来は自立学習の時間)にしたい!」と言ってきます。それだけ彼にとって重要なことなのでしょう。また、「学習をした」という実感にも繋がっているようです。「読むだけなら」と言っていましたが、それがよかったのでしょう。
学習障害のある子にとって、さらにそれが重たい子にとって教科書の学習はしんどいことだらけです。だからまずは「その子の興味のあること(好きな事)を題材にする。」「無理なことはさせない。」「パターン化する。」とよく言われていますがそれがまさに効果的だったと言えるでしょう。学校でも活躍の場が出来、ノートも少しずつですが書くようになってきているみたいです。「書くこと」も苦手ですが自分が「出来るな」と思った範囲で書いているようですね。
支援が必要な子にはいろいろと支援をしたくなりますが、まずは出来ることを取り組み、その子の自信に繋がることが何よりも大事です。
↓学習障害の子どもへの支援がわかりやすくまとめられた動画です。興味があればぜひご覧ください。
侍ジャパン!
侍ジャパン世界一おめでとう!!
じゃんぷに通う子どもの中にもWBCの話題で持ち切りのZ君がいます。大人顔負けの知識で驚くことも多いです。
さて、ここで問題なのがZ君はプロ野球に興味があっても他の子が興味のない時です。Z君はとにかく熱がすごく、一方的な会話になってしまう傾向も多いため、令和ロマンのコントのように「ちょっと喋りすぎか~」と気づくことはありません。「僕の話を聞いてくれ!」と言わんばかりです。
みんながみんなZ君ほどWBCに興味があるわけではないので、「し~ん」となります。なのでZ君には「WBCの話がしたいのはわかるけど、まずは他の子に家で見てるかどうかを聞いてごらん。それで見てたら「あのシーン見た?」って聞いてOK。見てなかったら「〇〇って知ってる?僕好きやねん」で止めとき。その時は勉強終わってから先生がいくらでもWBCの話付き合うわ」と伝えました。Z君に「自分の話が出来る時間が作れる」ことを前提に、自分の好きなことを話す時、相手にそれが興味がない時どうすればよいのかを伝えました。先日はその興味のない子も「お家の人が見てるわ。お母さんもお父さんも必死になって見てるよ。」と面白い話をしてくれ、その子が話に乗ったことがZ君も嬉しかったようです。
自分の好きなことについて話したいという気持ちはよくわかります。誰もがそのような気持ちを持っているでしょう。それを尊重しつつ、円滑にコミュニケーションが出来るような支援がこういう場合必要なのでしょう。
学習障害のサポート
~以下一部抜粋~
学習障害のサポート
ゆうきさん本人も、学習障害があって支援が必要だ。3年生の段階でカタカナが書けず、日常で使う簡単な単語もうろ覚えだった。机の前に、座ることはできる。一回も宿題を提出したことがないのに、学校では「いい子」という評価だった。同じクラスに、かなり暴力的な子がいて、先生は、その子にかかりきりだったそうだ。
鈴木さんが学校に相談しても、「困っていないので、支援は必要ない」と言われた。行政の施設は、学校経由でないと利用できない。鈴木さんは、独自に福祉施設に依頼し、保護者の了解を得て検査を受け、学校に「こういう傾向がある」と知らせた。みんなと同じ量の宿題はできないので、減らしてもらうためだ。
ついに学校は動き、学習障害の専門員を頼み、ゆうきさんの授業の様子を観察した。それから宿題を減らしてもらえたものの、一時だけでまた通常の量に戻った。
居場所では、スタッフがマンツーマンでゆうきさんに付き、一緒に学校の宿題に取り組む。ゆうきさん本人も変わり始め、「やらなきゃいけない」という気持ちになった。2時間かかっても、宿題をやり遂げようとする、その気持ちを優先しているという。
鈴木さんは、保護者と学校に「支援学級に入るのも、ゆうきさんにとっていいのではないか」と伝えた。本人は「今の友達との関係がいいから、入りたくない」と答えた。子ども自身が決めることが一番重要だが、それまでに周りの大人がその子のためにどんな話し合いをして、どんな選択肢を用意できたかという過程も大切にしている。
居場所が利用できるのは、小学6年生まで。これから、居場所を卒業後の「アフターケア」事業が、行政の予算に盛り込まれる予定だ。ゆうきさんが中学校に行っても、ときどきは居場所に来たいと話している。鈴木さんは、ゆうきさんが進む中学校と、入学前に個別に相談する約束も取り付けている。
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本文中にあるように、実は学習に困っていても本人が真面目で授業にも熱心に取り組んでいるが故に見逃されてしまうケースは少なくありません。さすがに「困っていないので支援は必要ない」とまではいかないでしょうが、なぜかテストの点数が取れず、担任もどのようにしたらよいかわからないままになっている、というのは今でもあるのではないでしょうか。なんとなく「学習に困難があるのだろうな」とは感じつつも具体的な支援にまで手が回らず、放課後に少し教える時間を作ったりモジュールの時間を使ってわからないところを教える、といったことで精いっぱいだと思います。
最近は学校でもコグトレをクラス全体で取り組んだり等、医療のノウハウが学校現場でも使わられることが増えてきました。しかし担任、もしくは学年団で出来る支援は限られているのかもしれません。通級は週に一回です。学習障害の専門知識を持った学習支援員を設置したり、SSWとの密な連携などがまだまだ必要なのかもしれません。「どこにそんな予算が!」と言われそうですが。